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第四十七話 「仲町」

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 「飛談語とびだんご」宇津人菖蒲房作 安永二(1773)年刊


 「仲町なかちょう」より


  深川仲町なかちょうの馴染みの女郎の所に遊びに行くと、

 「おいでなんしたか」

 ・・・と言う挨拶。

 「なんと、おいでなんしたか・・・とは、それはくるわ言葉だ、おめぇ、吉原から出て来たものから聞いて猿真似をしているんだろうが、深川の女郎がそんな言葉を使うのは似合わねぇ、やっぱり今までどおり、来なはった・・・にしときなよ!」

 「おがみんす・・・」(くるわ言葉で「すみません」の意)

 「おいおい、まだそんな言葉を使うかい・・・・、おめぇ、ミットモナイからもうよしなって言うに」

 「そんなら何と言いやしょ?」

 「教えてやるよ、深川なら深川で、相応の言葉遣いがいい・・・・ばかばかばかばかばかばかばかばかばからしゅうありんす・・・と、こう言いな!」

 

 ・・・・ラストの台詞の勢いが好きです(笑)

 まるで落語を聴いているよう。

 言うまでもなく江戸時代、官許の遊所と言えば「吉原」。
 吉原には、独特の「くるわ言葉(廓詞)」というものがあります、その俗にいう「ありんす言葉」は様々な地方から売られてきた女性達の、そのお国訛りを隠し優雅に見せる為とも言われています。

 反対に深川仲町辺りは、幕府非公認の遊び場、そこにいる遊女達も吉原より「格下」でした、良く言えば庶民的。

 そんな深川の女郎が、どこから聞き覚えたのか、吉原の花魁の真似をして「くるわ言葉」を使い出す。
 馴染みの客が、「みっともないからよせ」とたしなめる話でした。

 まあ実際、流行語なんかもそうですが、使い慣れなかったり場違いだったりすると「さむい」ものです(汗)

 オッサンが無理して若者言葉を使うのと似た感覚かも(笑)
 


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