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【一】
しおりを挟む根岸鎮衛著「耳嚢」
巻之一「大陰の人因果の事」より
「ああっ、おまえさんっ・・・もっと・・・」
「はあっ、どうだ、お豊っ・・・いいのか?・・・気を遣りそうか!」
お豊のムッチリと白い太腿が乱れた夜具を跳ね除けて露わになる。
「ああ、いきますっ、死にますぅ・・・ううっ、おまえさんっ~」
「お、お豊っ・・・」
惣右衛門が、お豊の尻をグッと押さえつけて精を放つ。
・・・・ああ、私、本当はまだなのに・・・。
お豊の房事の際の声は大きい、しかしそれは半分は演技であった。
房事の際によがり声を出すことで夫も悦ぶし、自分も声を出すことで満足した気分に浸れる・・・お豊は、意識して声を出すように努めているのだった。
惣右衛門三十六歳、妻のお豊三十歳。
裕福な農家の惣領で、使用人も数十人使っているという恵まれた身の上の惣右衛門夫婦。
九年前に嫁入りしてから子宝に恵まれない事以外は、まずは幸せな夫婦生活であるが、実はお豊には密かに不満に思っている点が一つだけあった・・・。
惣右衛門の逸物が人並み外れて小さいのである。
勃起時でも二寸(約6センチ)余りと、世の男性に比べてもそれは見劣りするものだ。
お豊は、惣右衛門には内緒にしているが、実は娘時代に淫奔事を経験して、村の若者数人と関係したことがある。
性に目覚めるのが早い片田舎の娘には、とりわけ珍しい事ではない・・・。
その時経験した彼らの逸物と比べても、夫の惣右衛門のそれはお豊にとって心から満足を与えてくれるものではなかった。
無論、惣右衛門も己の逸物が立派なものではないことに自覚はあるらしく、たまに酒を飲むとやや自虐的に、
「男は道具の大きさだけが能じゃないぞ・・・」
という事がある。
そんな時は、お豊も笑ってやり過ごしていた。
惣右衛門は、真面目な男で容姿もまず人並みである、また「妻一筋」で女遊びなどにも縁が無い。
夫としては誠に結構人と言える。
お豊もそんな惣右衛門を愛しているし、房事の際の「物足りなさ」以外は今の生活に満足しているのである・・・。
ある夏の日、惣右衛門は近郷に用事があり、二里ほど本道から逸れた普段は通らない小道を歩いていた。
その時、雨がポツ・・ポツ・・・と地面を濡らしたかと思うと、天水桶をひっくり返したような夕立となった。
「・・・こりゃヒドい夕立だ・・・」
惣右衛門は慌てて手拭で頭を覆って走ったが、林の外れに一軒の家があるのを見つけ、これ幸いと家の戸を叩いた。
「突然恐れ入ります、夕立が止むまで軒下を貸して頂くわけには参りませんでしょうか・・・」
家の中から一人の男が出てきて言った。
「おお、これは酷い夕立ですな、この分だと雷も鳴るかもしれない、軒下と言わず、どうぞ中にお入りなさい」
家の主の二十五、六の男は快く迎えてくれ、惣右衛門を家へと上げて煙草盆を出してくれた。
家の中は殺風景だったが小綺麗で、悪くない生活の人らしかった。
家には男の他には誰も居ないようであった。
家の続きとなっている馬小屋には、一頭の馬が繋がれて大人しく秣を食んでいた。
「・・・いや、急な夕立で難儀いたしました、有り難うございます」
「この頃の夕立です、ザッと降ってすぐに晴れましょう・・・まあ、ゆっくりしていってください」
男は自分も煙草を呑みながらそう言った。
男は、色の小白い、なかなかの男前だった。
身なりも悪くないうえに男ぶりも良い、また家も裕福そうなこの男が、なぜ使用人も雇わずにこんな辺鄙な場所に一人で住んでいるのだろう・・・・惣右衛門はちょっと不思議に思った。
世間話をしながら男が足を崩したその時である・・・はだけた着物の裾から何か太い物が見えた。
それは惣右衛門が見たこともないような巨大な男根であった。
一尺(30センチ)以上はありそうな物凄い逸物である・・・・惣右衛門は目を丸くした。
男は、惣右衛門の視線が自分の股間に釘付けになっているのを悟り、甚だ困った表情を浮かべた。
その場の空気が落ち着かないものとなった・・・。
惣右衛門は、なまじ黙っているよりもあからさまに話した方がいいだろうと思い口を開いた。
「さてさて、お前様の逸物は優れて立派なものですなぁ、驚きました・・・羨ましい限りです」
惣右衛門は、努めて明るく言った。
「・・・見苦しいものをお見せしてしまいまして大変恐縮でございます」
男は嘆息してこんな話をはじめた。
「私はこの尋常ならざる逸物ゆえに、このような身の上となっているのでございます・・・」
男が、着物の裾を上げると、まるで大蛇のような逸物が踊り出た。
通常の状態でも膝下くらいまであるそれは、1尺三寸(約40センチ)はあるだろうか、長さだけではない、太さも子供の腕ほどもある・・・・。
惣右衛門は、改めてその巨大な逸物に目を見張った。
「元々、わたくしはこの一、二町先の裕福な酒屋の倅なのでございます。身上も相応に暮らしておりまして、妻帯して家の跡を継ぐ筈でございましたが・・・なんの因果か、この逸物が尋常でない大きさの為に、嫁に来ようという者が見つからないのでございます」
男は悲しそうに言った。
「金銀を費やし、遠方まで妻となる者を探し求めましたが、この逸物を見せますと女は皆、逃げ出してしまうか、断りを入れてくるか・・・それ故、もう妻帯は諦めまして、このような寂しい場所に隠遁し空しく日々を送っております・・・」
「・・・そうでございましたか・・・それはお気の毒な事です・・・」
惣右衛門は、そう言って男を慰めるしかなかったが、好奇心を押さえきれない。
「・・・失礼ながら人事(性交)は・・・・」
「煩悩が発した時は、そこに繋いである牝馬を我が妻と心得て、淫心が起きる度にその馬と交わって思いを晴らしております・・・生きながらに畜生道に墜した我が身をどうか憐れんでくださいまし・・・」
・・・そうか、あの牝馬と・・・。
惣右衛門は、男の話を聞き気の毒に思った。
恵まれた身の上に生まれながら、その逸物が尋常でない大きさの為に、このような寂しい場所で牝馬を妻として暮らしている男・・・。
重苦しい空気を避けるように惣右衛門が窓の方に目を遣ると、いつの間にか夕立は止み、空は真っ青に晴れ渡っていた。
惣右衛門は男に厚く礼を言って帰った・・・。
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