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27.モヤモヤ
しおりを挟むシーン・・・・・・。俺、今絶賛落ち込み中です。
店長にぎゅっとしがみついて離れる気配のなかったコンは、結局店長が風呂に入れることになった。俺はというと、先に一人で風呂に入ることになり、石けんを泡立てながらさっきのことを考えている。
手も繋いだし、頭も撫でさせてくれて可愛い反応を見せてくれたコンにめちゃくちゃ拒絶されたことが精神的に来ている。マジでショックだ。
髪を洗いながら、頭の中ではコンの自分を睨む顔が何度も繰り返される。拒絶、『嫌』という色が、目の奥にはっきりと見えた。
こんな感じなんだな・・・・・・。今、普通や整った顔の人に嫌悪感を抱かれるみんなの気持ちがわかった気がした。表面上は繕える。が、傷は自分が思っているよりも深くて、ズブズブと時差を経て心を侵食してくるようだ。ふと、前にいた世界での自分の地位を思い出した。地味顔で、特徴が目が細いこととノッポであることしかなく、特に人に認知してもらえないという悲しい過去だ。でも、嫌われてはいなかった気がする。
確かに俺は地味で、印象に残らない顔をしている。が、両親には愛情をかけて育ててもらったし、少ないなりにも友達はいた。キャストのシノは、両親に捨てられこの店の先代に拾われたという。きっと見た目が気持ち悪かったからじゃないかな、と笑って言っていたけど、俺にとっては信じられないことだった。
地味な顔である俺だが、幸いなことにこの世界では整った方に入っており、そのため周りからも優しくされている自覚はある。だから、ぽやぽやと生活できていたのだ。
顔のせいで嫌われ嫌な思いをしてきた人たちに共感していると思っていた。だが、それは自分の勝手な思い込みだったのだ。勝手に相手の気持ちを想像して、勝手に悲しくなって、で、そんな顔をしたらみんな『ありがとう』と感謝してくれた。
今初めて、自分の客への関わり方に嫌悪感を抱いた。最低だ、俺・・・・・・
気がつくと、頭は泡でいっぱいになっていた。手を止めることなく思考をしていたため、髪が泡立ちまくっていたのである。泡のアフロになっていた。
「何やってんだ・・・・・・」
溜息を吐きながら湯で泡を洗い流す。勢いよく頭に湯が当たり泡の塊を流していったが、心の中のもやもやは洗い流すことができなかった。
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