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プロローグ(後編)

決意

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美しいブルーの瞳に大粒の涙を浮かべてぎゅっと抱きついてきたのは、そう。レイラだった。

レイラの紺碧の瞳、、いつも綺麗な瞳が。
暗い部屋の中で数少ない光を涙が反射して⸺

『え、、かわよ・・・』
自分の頬が紅くなるのが分かる。

油断した!!!!!
心の中で思ったことが思わず口に出てしまった。。

彼女は、きょとん、とした直後。
「ティア、、?何言ってるのよぉぉぉ…」
「心配したのに、私は真剣なのに!冗談とか言う空気じゃないでしょ!」
「わーーーん!!!」

レイラは、私の胸の上に顔を伏せて、さらに泣き出してしまった。

『違うの、冗談とかじゃなくて!つい!ついなの!!』
私は慌てて弁解した。
(我ながらって何よ。。弁解になってないか…)

『だからね、ごめん、ごめんね‥』
私も変な夢から目覚めてしばらく経って、だいぶ落ち着いてきたみたい。
頭が回りだした。

確かにさっきまでと村の空気が違う。
(何だろうこのピリピリした感覚。魔力?いやもっと禍々しい感じ…)

『おねがい、泣き止んでレイラ。私に説明してくれる?』
まだ私の胸の上にいる彼女の頭を撫で、さらさらしたブロンドの髪に指を通しながら優しくそう言った。

レイラが泣き止むまで、そう時間はかからなかった。
彼女が伏せた顔を上げたタイミングで、私は身を起こしてベッドに腰かけ、スタンドの明かりを強くした。

レイラの服装は、いわゆるナイト装備だった。

この時間にこの装備を身に着けているってことは、普通の状況じゃないことを物語っている。

何を身に着けているかによって、個々のパラメータが補強される。
私が今着ているこのパジャマも、おばあちゃんが魔力を込めたシルクの糸で作ってくれたもので、私自身の魔力をそれなりに増強してくれるし、実はその辺のアーマーよりも強い魔法防御力を有している。

レイラが身に着けているナイト装備は、高い物理防御性能を有しているのに加え、腕力STR体力VITといったパラメータを飛躍的に向上させるものだ。
もとより、彼女本人に資質があるため、この装備で技力適性をさらに伸ばしているのだろう。

私がレイラの身に着けているナイト装備を着たところで彼女と同じにはなれない。
お察しのとおり、装備品にはやはり個々の相性というものがあるのである。

「あのね…」
レイラが状況を説明してくれた。
・村のあちこちで被害がでていること
・原因は魔物であること
・魔物の中には、者がいること
・生きている人は学園に避難したこと
また彼女の瞳にうっすら涙が浮かぶ。状況はかなり深刻なのだろう。

私はしばらく思いを巡らせ…
さっきまで寝ていたとは思えないくらいハッキリした声で言った。

『わかったわ!教えてくれてありがとう。私もすぐ準備するね!!』
「えっ?!」
レイラは驚き、目を見開いている。

『みんなは学園にいるのよね?そこならおばあちゃんがいるはずだし、ひとまず安心ね。』
『それと、一番被害が大きいところってどこかわかる?』
「え、えっと…学園から北に進んだところ、、ノクテンヴァルト夜の森に面する辺りかな。」


(森の中か…幸いなことに今日は月夜。私は夜目が利くほうだし、足りない光量は魔法でカバーすればいっか。)
(あそこなら、途中で学園の様子も見ながら行けるし、大丈夫だとは思うけどおばあちゃんに一声かけて行くか。)
『オッケー』

「あ、あのさ、ティア?」
「何がOKなの?準備するって…何を?」

『ん?元凶となっている魔物を叩きに行くのよ。』
『私たちが理解できる言語を話すのがいたってことは、恐らくそいつが親玉。』
『魔物たちを統率、、ってそんなこと考えたくないけど、そいつさえ倒せばきっと。』

私は早口でそうレイラに話したのはちゃんとした理由があった。
おばあちゃんとの会話を思い出したのである。

(おばあちゃんが昔教えてくれた。魔物は主に動物が瘴気や妖気にあてられて変異しているものだけど、言葉を話すのは知性がある証拠。だって。)
(魔族にも色んなのがいるけど、人里に下りてくることはほぼないから安心していいって。そんな時代はもう30年も前の話だって。)

(確かにおばあちゃんの言うとおり、魔族なんてずっと見たことないし、出てきたなんて話も聞かなかった。そもそも魔族なんて言葉自体聞くことがなかった。旅人を襲ったり、悪さをするのはたいてい魔物で、討伐依頼が張り出されているのを見たことはあるけど。)

(でも今回のはそうじゃない、喋るんだ。なんだ。)
(そうだろうとなんだろうと、私たちの村をめちゃくちゃにしたの、絶対に許せない!!)

⸺大丈夫、ならきっと⸺

私はレイラの言葉も待たずにベッドから立ち上がり、薄ピンク色のパジャマを脱ぎ、下着だけになった。
胸元に、ずっと身に着けている一粒のクリスタルのネックレスがきらり。


レイラがナイト装備に適性があるなら、私はウィザード装備に適性がある。

左腕から順番に袖を通していく。
順番はルールがあるわけではないが、私はいつも左腕からだ。身体を洗うときもそう。
いわゆるルーティンというものである。

少しひんやりする生地のせいか、素肌に触れるたびに神経が研ぎ澄まされる気がする。
同時に、魔力が高まっていくのを感じる。
なお、魔力のベースとなっているパラメータは知力INTである。
もう一つ付け加えておくと、ファイター系は【技力】、ソーサラー系は【魔力】の高さがモノを言う。

最後に、私がブーツを履きかけたところで彼女が口を開いた。
「待って!!!」

そして、私の目をしっかり見てこう言った。
「私も一緒に行く。」

デジャヴ?そんな冗談とか言えるような感じではなく。
『えっ?!!』
今度は私が目を見開いて聞き返した。
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