生きずらさを感じる少女、異世界に転生する

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王城の客間に案内されてしばらくすると、彼女は現れた。
十五歳だという王女は、私とそう年齢は離れていないはずなのに、背筋を伸ばして歩く姿に気品があった。けれど、笑顔はとても柔らかく、近寄りがたさはまったくない。

「ようこそ。お名前は……葵さん、ね?」
「はい。……突然、お邪魔することになってしまって」
「気にしないで。父から聞いたわ。馬車に轢かれたとか」

彼女は明るく笑いながらも、私を気遣うように椅子を勧めてくれた。
話をしてみると、彼女は年齢以上に聡明で、この国の未来について真剣に考えているのがすぐにわかった。

「でも……どうすれば国の人たちをもっと豊かにできるのか、まだ答えが見つからないの」
そう言った彼女の瞳は、十五歳の少女のものではなく、一国を背負おうとする光を宿していた。

気づけば、私は口を開いていた。
「……税率を、下げてみてはどうでしょうか」

王女は目を瞬かせた。
「税を、下げる……?」

「はい。特に消費税を。物を買うときにかかる税が下がれば、商人たちはこの国に集まってきます。通行税も増えるし、物の値段が下がれば、人々は余裕を持てる。すると、生産量も上がり、給料も増える。そして、また商人から物を買う。……そうすれば、国全体が回っていくと思います」

口にしながら、自分でも少し驚いていた。まるで昔からこの世界の経済を知っていたかのように、言葉がすらすらと出てきた。けれど、それは地球で得た知識を応用したにすぎない。

王女は感心したように目を輝かせた。
「それ、すごくいいわ! ぜひ父に直接話して」

「えっ、国王陛下に……?」

私が慌てる間もなく、王女は立ち上がった。
「お父様はきっと喜ぶ。葵さんの意見なら、きっと聞いてくださるわ」

その夜、私は思いもよらず国王の前に座らされていた。
そして、王女が熱を込めて伝える。
「ねえお父様、葵さんの話を聞いて! この国の税を変えるヒントになるわ!」

国王は私に視線を向け、ゆっくりと頷いた。
「……なるほど。ならば実際にどう実行すべきか、君の助言を聞かせてもらおう」

まさか、こんな形で国の政策に関わることになるなんて。
私は深く息を吸い込み――この異世界での最初の「役割」を果たす覚悟を決めた。
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