生きずらさを感じる少女、異世界に転生する

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会議の間、重苦しい空気が城の大広間を覆っていた。
地図の上に並べられた駒は、隣国と聖国の境を示している。聖国は「自分たちこそが選ばれた人種」だと掲げ、周囲を侵略し始めているという。

「時間はまだある。しかし、このままでは我が国も遅かれ早かれ戦に巻き込まれる」
国王の言葉に、場の空気が凍り付く。

私は深呼吸をして、手を挙げた。
「……城壁の造りを変えてはどうでしょうか」

重臣たちの視線が、一斉に私に向けられる。
「従来の円形の城壁では、死角が多く、守りきれません。稜堡――つまり角を張り出すように城壁を設計すれば、互いに死角を補い合える。鉄砲があれば、なおさら強固に防衛できます」

「鉄砲?」
国王が目を細める。

私は頷いた。
「火縄銃という武器です。火薬と弾を用いて、遠距離から敵を撃つことができます。時間はかかりますが、私が知る限りの仕組みなら、この国でも作れるはずです」

広間にざわめきが広がる。信じられないという顔もあれば、期待に満ちた瞳もあった。
国王はしばらく沈黙し、それから力強く言った。
「葵の提案を検討しろ。時が我らを待たぬ。すぐに準備を始めるのだ」

会議はそのまま終わり、私は深い疲労感を抱えて自室に戻った。
ドアを閉め、背中を預けて大きく息を吐く。

――コン、コン。

ノックの音。返事をする前に扉が開き、王女が入ってきた。
「葵……」

彼女は真剣な顔をしていた。
「どうして、黒髪と黒い瞳を隠しているの?」

胸が跳ね上がる。もうごまかすことはできない。
私はベッドの端に腰を下ろし、視線を落とした。
「……本当は、生まれつきなの。黒髪も黒目も」

「でも、それって――」

「ええ。この国では王族の証だって知ってる。だから、隠してた。私は王族なんかじゃない。ただ……普通に、人と関わって生きたいだけ」

王女は私をじっと見つめた。
怒るでもなく、責めるでもなく、ただ静かに受け止めるように。

「正直に話してくれてありがとう。……私だけが知っていればいいわよね?」

その言葉に、喉の奥が熱くなる。
「……うん」

王女は微笑んで、そっと私の手を握った。
「なら、私が秘密を守る。だって、葵は大切な友達だから」

その一言で、心の奥に積もっていた氷が溶けていくような気がした。
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