その愛は毒だから~或る令嬢の日記~

天海月

文字の大きさ
9 / 16

9.その愛は離れてこそ

しおりを挟む
わたくしはあなたのことを愛しております。

けれども、それは離れていてこそなのです。

あなたは領地、わたくしは王都、それぞれの生活がある今の過ごし方を、わたくしは思いのほか気に入っているのです。


先日、今日からあなたがこの王都の屋敷にしばらく滞在するという手紙を受け取って、わたくしは眩暈がしたのです。

あなたのことが憎いわけではありません。

わたくしはあなたのことを愛してはおりますが、それ以上に、この屋敷で一人女主人として勝手気儘に振る舞える自由を何よりも愛しているのです。

あなたが屋敷に滞在される間、あなたに合わせて行きたくもない遠乗りに共に出掛けたり、晩餐や就寝の時間に気を使ったりするのは酷く疲れるだけなのです。

繊細なあなたの機嫌をいつ損ねはしないか、ということも気になります。

一度機嫌を損ねると面倒なので、そうならない為にわたくしは常にあなたの希望を慮り、一日中先回りして動かねばなりませんから・・・。

あなたがいらっしゃる間は、僅かでも自分のために時間を割くことなど決して許されません。

あなたは強制なさる訳ではないけれど、わたくしが自分に従うのは当然だと、何の悪意もなく考えていらっしゃる。

それが続くということは、わたくしにとって想像以上に耐えがたい苦痛なのです。



あなたと共に過ごす時間は、婚約者の頃こそ楽しく感じましたが、今となっては一人で静かに紅茶をいただきながら時間を気にせず読書をしたり、好きな時に友人と観劇に出かけたりする時間の方が、わたくしにとっては有意義で大切なのです。

そんなわたくしが愛している生活はあなたが王都へやってくると、途端に成り立たなくなるような脆弱なものです。

あなたがいらっしゃらないからこその幸せなのです。

けれど、わたくしがこの屋敷の女主人でいることができるのはあなたのおかげです。

わたくしは、あなたに感謝をしております。

けれど、あなたと居ると息が詰まるようで、ただ逃げ出したくなるのです。

わたくしはあなたの夫人としては失格かもしれません。


さて、そろそろあなたがここへ到着される時間になりますから、用意をしなくてはなりません。

わたくしは、この滞在ができるだけ短いものになるように祈ると致しましょう・・・。


fin.

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交錯

山田森湖
恋愛
同じマンションの隣の部屋の同い年の夫婦。思いの交錯、運命かそれとも・・・・。 少しアダルトなラブコメ

お義父さん、好き。

うみ
恋愛
お義父さんの子を孕みたい……。義理の父を好きになって、愛してしまった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...