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9.その愛は離れてこそ
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わたくしはあなたのことを愛しております。
けれども、それは離れていてこそなのです。
あなたは領地、わたくしは王都、それぞれの生活がある今の過ごし方を、わたくしは思いのほか気に入っているのです。
先日、今日からあなたがこの王都の屋敷にしばらく滞在するという手紙を受け取って、わたくしは眩暈がしたのです。
あなたのことが憎いわけではありません。
わたくしはあなたのことを愛してはおりますが、それ以上に、この屋敷で一人女主人として勝手気儘に振る舞える自由を何よりも愛しているのです。
あなたが屋敷に滞在される間、あなたに合わせて行きたくもない遠乗りに共に出掛けたり、晩餐や就寝の時間に気を使ったりするのは酷く疲れるだけなのです。
繊細なあなたの機嫌をいつ損ねはしないか、ということも気になります。
一度機嫌を損ねると面倒なので、そうならない為にわたくしは常にあなたの希望を慮り、一日中先回りして動かねばなりませんから・・・。
あなたがいらっしゃる間は、僅かでも自分のために時間を割くことなど決して許されません。
あなたは強制なさる訳ではないけれど、わたくしが自分に従うのは当然だと、何の悪意もなく考えていらっしゃる。
それが続くということは、わたくしにとって想像以上に耐えがたい苦痛なのです。
あなたと共に過ごす時間は、婚約者の頃こそ楽しく感じましたが、今となっては一人で静かに紅茶をいただきながら時間を気にせず読書をしたり、好きな時に友人と観劇に出かけたりする時間の方が、わたくしにとっては有意義で大切なのです。
そんなわたくしが愛している生活はあなたが王都へやってくると、途端に成り立たなくなるような脆弱なものです。
あなたがいらっしゃらないからこその幸せなのです。
けれど、わたくしがこの屋敷の女主人でいることができるのはあなたのおかげです。
わたくしは、あなたに感謝をしております。
けれど、あなたと居ると息が詰まるようで、ただ逃げ出したくなるのです。
わたくしはあなたの夫人としては失格かもしれません。
さて、そろそろあなたがここへ到着される時間になりますから、用意をしなくてはなりません。
わたくしは、この滞在ができるだけ短いものになるように祈ると致しましょう・・・。
fin.
けれども、それは離れていてこそなのです。
あなたは領地、わたくしは王都、それぞれの生活がある今の過ごし方を、わたくしは思いのほか気に入っているのです。
先日、今日からあなたがこの王都の屋敷にしばらく滞在するという手紙を受け取って、わたくしは眩暈がしたのです。
あなたのことが憎いわけではありません。
わたくしはあなたのことを愛してはおりますが、それ以上に、この屋敷で一人女主人として勝手気儘に振る舞える自由を何よりも愛しているのです。
あなたが屋敷に滞在される間、あなたに合わせて行きたくもない遠乗りに共に出掛けたり、晩餐や就寝の時間に気を使ったりするのは酷く疲れるだけなのです。
繊細なあなたの機嫌をいつ損ねはしないか、ということも気になります。
一度機嫌を損ねると面倒なので、そうならない為にわたくしは常にあなたの希望を慮り、一日中先回りして動かねばなりませんから・・・。
あなたがいらっしゃる間は、僅かでも自分のために時間を割くことなど決して許されません。
あなたは強制なさる訳ではないけれど、わたくしが自分に従うのは当然だと、何の悪意もなく考えていらっしゃる。
それが続くということは、わたくしにとって想像以上に耐えがたい苦痛なのです。
あなたと共に過ごす時間は、婚約者の頃こそ楽しく感じましたが、今となっては一人で静かに紅茶をいただきながら時間を気にせず読書をしたり、好きな時に友人と観劇に出かけたりする時間の方が、わたくしにとっては有意義で大切なのです。
そんなわたくしが愛している生活はあなたが王都へやってくると、途端に成り立たなくなるような脆弱なものです。
あなたがいらっしゃらないからこその幸せなのです。
けれど、わたくしがこの屋敷の女主人でいることができるのはあなたのおかげです。
わたくしは、あなたに感謝をしております。
けれど、あなたと居ると息が詰まるようで、ただ逃げ出したくなるのです。
わたくしはあなたの夫人としては失格かもしれません。
さて、そろそろあなたがここへ到着される時間になりますから、用意をしなくてはなりません。
わたくしは、この滞在ができるだけ短いものになるように祈ると致しましょう・・・。
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