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31.彼女の覚悟
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キースと関係を解消しようという意思を、本人に伝えればまず拒まれるに違いない。
だが、誰にも知らせないと言う訳にもいかない。
キースの事が気に入らなくて別れようというのではないのだから・・・。
せめて仲を取り持ってくれたアルバートだけには、こうなった経緯を話しておくのが誠意ある対応だろう。
シャーロットは、アルバートと話をする事にした。
◇
互いの屋敷では、いつキースと鉢合わせするか分からないという理由で、アルバートとは街中にある店で待ち合わせる事にした。
誤解を避けるため、彼の妻であるアドリアーナにも同席してほしいと伝えた。
◇
約束の時間よりも少し早く着いたシャーロットは窓際の席に座っていた。
少しして、そこにアルバートが妻と一緒にやってきた。
「待たせたか?」
「いえ」
「何だって関係を解消しようという事になったんだ?上手く行っているように見えたのだが・・・キースの事が気に入らなかったのか?」
「キースの事は誰よりも大切に思っています」
「ならどうして?」
「私と一緒にいると、彼が自分を生かしきれないから・・・」
「そんな事、キースは気にしていない。それに、あいつがここまでになれたのは、シャーロットのお陰なんだ。憧れの女性に相応しくなりたいという、それだけの為に、あいつは苦手な事からも逃げずに努力してきた」
「・・・」
「あいつはずっと君に知られたくないと言っていたが、もうこの際だから隠す必要も無いだろう。君の縁談が長く決まらなかった理由は、あいつが原因だ。誰にも君を取られたくなくて、片端から縁談を潰して回っていた・・・」
「そんなことが・・・」
「婚期が遅れたのは君に魅力がないからではなくて、キースのせいなんだ。知っていて黙っていた俺も悪かったと思う・・・。それにこんな事を知って、不愉快に思ったかもしれないが、あいつはそこまでしてでも君の気持ちを手に入れたいと思っていた事を、どうか分かってやってほしい」
「・・・はい」
「あいつの為に、このまま続けるという選択肢は君の中には無いのか?」
「今日、あなたから今まで知らなかった彼の事を教えてもらって、そこまで自分の事を思っていてくれたなんて・・・と思うと、寧ろ嬉しく思いました。けれど、だからこそ余計に彼を手放す気持ちが固まりました」
「シャーロット・・・」
「ずっと可愛らしい雛鳥だと思っていた彼は、いつの間にか立派な鷹になっていました。折角、大空を飛べる翼を持っているのに、私が隣にいるせいで、彼がその翼を使う機会を奪ってしまっているのではないかと思うと、心苦しいのです・・・」
「君は頑固だから・・・仕方が無いな。また気が変わったら教えてくれ」
諦めるように微笑んだアルバートは、横でずっと静かに話を聴いていた妻と席を立った。
シャーロットは、今日の事はキースには黙っていてほしいと言い、二人はそれを了承した。
◇
公爵家への帰り道、アドリアーナが口を開いた。
「シャーロット様のお気持ちも解らなくはないけれど・・・お二人とも思い合っているのに、なかなか上手くいかないものですね・・・」
「そうだな・・・」
アルバートは複雑な顔で頷いた。
だが、誰にも知らせないと言う訳にもいかない。
キースの事が気に入らなくて別れようというのではないのだから・・・。
せめて仲を取り持ってくれたアルバートだけには、こうなった経緯を話しておくのが誠意ある対応だろう。
シャーロットは、アルバートと話をする事にした。
◇
互いの屋敷では、いつキースと鉢合わせするか分からないという理由で、アルバートとは街中にある店で待ち合わせる事にした。
誤解を避けるため、彼の妻であるアドリアーナにも同席してほしいと伝えた。
◇
約束の時間よりも少し早く着いたシャーロットは窓際の席に座っていた。
少しして、そこにアルバートが妻と一緒にやってきた。
「待たせたか?」
「いえ」
「何だって関係を解消しようという事になったんだ?上手く行っているように見えたのだが・・・キースの事が気に入らなかったのか?」
「キースの事は誰よりも大切に思っています」
「ならどうして?」
「私と一緒にいると、彼が自分を生かしきれないから・・・」
「そんな事、キースは気にしていない。それに、あいつがここまでになれたのは、シャーロットのお陰なんだ。憧れの女性に相応しくなりたいという、それだけの為に、あいつは苦手な事からも逃げずに努力してきた」
「・・・」
「あいつはずっと君に知られたくないと言っていたが、もうこの際だから隠す必要も無いだろう。君の縁談が長く決まらなかった理由は、あいつが原因だ。誰にも君を取られたくなくて、片端から縁談を潰して回っていた・・・」
「そんなことが・・・」
「婚期が遅れたのは君に魅力がないからではなくて、キースのせいなんだ。知っていて黙っていた俺も悪かったと思う・・・。それにこんな事を知って、不愉快に思ったかもしれないが、あいつはそこまでしてでも君の気持ちを手に入れたいと思っていた事を、どうか分かってやってほしい」
「・・・はい」
「あいつの為に、このまま続けるという選択肢は君の中には無いのか?」
「今日、あなたから今まで知らなかった彼の事を教えてもらって、そこまで自分の事を思っていてくれたなんて・・・と思うと、寧ろ嬉しく思いました。けれど、だからこそ余計に彼を手放す気持ちが固まりました」
「シャーロット・・・」
「ずっと可愛らしい雛鳥だと思っていた彼は、いつの間にか立派な鷹になっていました。折角、大空を飛べる翼を持っているのに、私が隣にいるせいで、彼がその翼を使う機会を奪ってしまっているのではないかと思うと、心苦しいのです・・・」
「君は頑固だから・・・仕方が無いな。また気が変わったら教えてくれ」
諦めるように微笑んだアルバートは、横でずっと静かに話を聴いていた妻と席を立った。
シャーロットは、今日の事はキースには黙っていてほしいと言い、二人はそれを了承した。
◇
公爵家への帰り道、アドリアーナが口を開いた。
「シャーロット様のお気持ちも解らなくはないけれど・・・お二人とも思い合っているのに、なかなか上手くいかないものですね・・・」
「そうだな・・・」
アルバートは複雑な顔で頷いた。
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