誰にも言えないあなたへ

天海月

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それは良く晴れた日だった。

マリオンは、自分と縁を切ってオリバーのところへ行くようにとクリスティーナに話をする為に、彼女を遠乗りへと誘った。

「今日は少し出掛けないか?クリスティーナ・・・」





マリオンは屋敷から少し離れた、湖が見渡せる丘の上まで馬を走らせ、まず自分が先に降りてから、クリスティーナに手を差し出した。

そして、二人は歩き出した。


しばらくして、クリスティーナは先日オリバーに頼まれた件について切り出すには今しかないと思い立った。

『誰かクラーク家の中で、このボタンに心当たりがある人が居ないか、訊いてみてくれないか?』

クリスティーナは彼から受け取った、クラーク家の紋章が刻まれたボタンを手にとって言った。

「マリオン様、突然ですけれども、このボタンに見覚えはございませんか?」

そのボタンを目にしたマリオンは目を見開いて、息を飲んだのだった。

「・・・!」

どんな時でも落ち着き払っているマリオンの尋常では無いような様子に、自分から問いかけたはずのクリスティーナの方が気押された。

「これをどこで?!」

流石にかつての思い人から預かったとは言えず、

「・・・ある人から託されたのです。もしこのボタンに見覚えのある方がいらっしゃったのならば、その方にお会いしたい、と」

マリオンは矢継ぎ早に、緊迫感のある表情で訊き返した。

「その人はどこに居るんだ?今から直ぐにでも、私から会いに行こう!どうか案内しておくれ、クリスティーナ」

彼女は急な展開に驚いた。

そして、オリバーがマリオンから何か罵られたりしないかと心配になった。





クリスティーナからボタンを見せられたマリオンは驚いていた。

それは、かつて弟が水難事故に遭った時、彼を助けようとしたマリオンが着ていた服のボタンだったからだ。

弟は目一杯の力でマリオンの腕を掴んだが、結局、彼を助けることはかなわなかった。

彼はあっという間に、マリオンの袖口のボタンと共に激流の中に吸い込まれていってしまったのだ。

あのボタンが見つかったという事は、弟は生きているのだろうか・・・それとも、ただ弟の最期が明らかになるだけなのだろうか・・・。

ぬか喜びはしたくないと思いつつも、マリオンは弟が生きているかもしれないと思うと、心に小さな灯りが点ったような気がしたのだった。


オリビエ・・・もし生きているのなら、早くお前に会いたい・・・。

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