農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト

文字の大きさ
15 / 125
第一章 僕は普通の農民です

宿

しおりを挟む
「誠に申し訳ございません」
「い、いえいえ、予定外なら仕方ないですから」
「ですが御客人を呼んでおいて宿に泊まらせるなど……」
「僕もコンも大丈夫ですから、ね?」

 今現在僕達は早く着き過ぎてしまったためまだお城の方で迎える準備が出来ていないと言われ、また明日に来るよう言われたのだそう。
 そもそも呼んだ本人である国王様は他国との会談で出掛けていた所に連絡が入ったため、今もまだ王都に到着していないそう。
 お城も客間が現在使用出来ない状況らしく、王都で宿を探すことになったのだ。

 あと混沌竜のコンは大変目立つため、従魔には一応元の住処に戻って貰う事も出来たのだが現在はコン自身の魔法で透明化している。

「ですが、貴族用の宿がこんな日に限って埋まっているだなんて……」
「そんな貴族用だなんて、僕には勿体無いですから普通の宿でいいですよ」
「我はロイと居られれば野宿でも構わないのだが?」
「そ、そそそ、そんなとんでもない!」
「コン、あんまり困らせることを言わないの」
「なぜ今ので困るのだ?人の世はなかなか難しいものだな」
 と、あちこち周りながら話していた。

「あの、宿をお探しでしょうか?」

 と、突然後から声を掛けられた。
「えっと……君は?」
 僕が振り返ってみると、そこには10歳ぐらいの大きな袋を提げた女の子が居た。
「私、メルって言います。あのその、家は宿屋をやってるんですけど、もしよければお泊りになりますか?」
 そうおずおずと話しかけてきた少女に対し、僕は笑顔で答える。
「うん、じゃあ案内してくれないかな?」
 僕はその子、メルが持っている袋に様々な食材が入っているのを見て買物の帰りだと思い案内をお願いすると笑顔になった。
「はい!」
 そして元気なメルの返事を聞いた僕は、メイドさんに何も確認をしていないことを思い出した。
「あの、勝手に決めてすみません」
 すぐに頭を下げる僕にメイドさんはちょっと驚き、そして慌てて答える。
「いえいえ、私達がお呼び致しましたので、お客様であるロイ様とコン様が良ければ何も問題ありません」

 と、そう言うことらしいのでメルに案内してもらう。
 その時メルは大丈夫とは言っていたのだが、メルが持っていた袋の3つの内2つを案内してもらう分と言って運んだ。

「着きました」
 それから少しメルを先頭に歩いた僕達は王都の繁華街の中にある一軒の宿屋に到着する。
「へぇ、立派な宿屋だね」
 そう感心して見上げる建物は木製2階建てでそこそこ大き目な建物だった。

「お、おかえりメル」
「ただいまお父さん」
 丁度入り口の掃き掃除をしていたメルのお父さんがメルに気付いて掃き掃除の手を止める。
「あ、この人達宿を探してたみたいだから案内してきたよ」
「おお、そうか!ではここで立ち話も何ですから、中へどうぞ」
 そうして、運んできた袋をメルに返してから中に入る。

「うちは一階が食堂にもなっておりまして、宿代に食事付きですとそれように作ったものをお部屋にお運びするのですが、大半の人は宿泊費だけにして食べていく方が多いです」
 入ってすぐにメルのお父さんが説明してくれる。
「お二人様であればツインか別室となりますが……」
「ああいえ、泊まるのは僕だけですので」
 僕は慌てて答える。
「ああ、もしかして国王様からのお呼び出しかい?」
「え、そのとおりですけど……なんでわかったんですか?」
 普通そんなのわからないと思うんだけど……
「ああいや、あんたの見た目と服装がいかにも田舎から来ましたーって感じなのにメイドを連れてるとか疑問だからな。だから理由としては一番ありえそうなんでな」
「ああ、なるほど……」
「はい。ですので今回は国王様がお支払いになりますので、ロイ様とコン様がよろしければここでも……」
 そうメイドさんが言った時、メルのお父さんは首を傾げる。

「コン?そいつは遅れて来るのか?」

 あ、そういえば従魔のコンのことを言ってなかった。
「あ、コンは僕の従魔です」
「ああ、そうか従魔か。まあ従魔はここで出していてもいいが、あんま大きい奴とか重い奴とか危険な奴ではないよな?」
 そう不安そうに聞くので、コンには事前に話した魔法を掛けてもらった上で透明化を解除してもらう。



 すると、真っ白い姿のコンが現れた。



「お、おお!?もしかしてりゅ……いや、ちょっと待てそんなのここで出したらパニックになるから呼び出すのはちょっと……いえ、お部屋でなら構いませんが、絶対に騒ぎになりますので……」
「あ、すすす、すみません!」
 そうだ混沌竜とバレなければと先程考えて『白竜』の姿に変えてもらったのだが、そもそも竜種が特別だった……村では普通に受け入れられていたため、そこまで気が回らなかった。



 それから暫くしてシングルで1部屋を食事代を抜きで泊まることになった。
 その際、絶対にコンを部屋以外で出さないことと強く念を押された。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...