農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト

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第三章 農民が動かす物語

練習

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 揚げパンに関する報告と杖の為に王都に行ってから1週間が経った。
 あの日から4日後に杖の受け取りに行き、その時驚くほど手に馴染む事を確認した後はずっとコンの闇魔法でしまってもらっていた。

 そして今は村の西、コルク川に魔法の練習をするために来ていた。
 コンは元の大きな体に戻っている。
「それじゃあコン、お願い」
「取り扱いには気を付けるのだぞ?」
「うん」
 下手に扱うと大惨事を起しかねないという事でしまっていた杖を受け取る。

 その杖は全長50センチで手元側には6種に輝く10センチの魔石が取り付けられている。
 上から見ると木が真ん中に向けてバツ印を描くようになっているがその先はくっついていない。
 杖の先には溝が作られていて、魔力を杖の先の溝の中に描かれている魔法陣に流すと長さ20センチの両刃の刃が飛び出す仕組みになっている。

 3日ぶりで手に持つのは2回目の杖を軽く振って感触を確かめる。
「ではロイよ、そろそろ始めるぞ」
「うん!」
「まずはその魔石の中にある魔力を使う事に馴れる為の練習をするぞ」
「わかった。どういう練習をするの?」
 今回ここに来たのはコンが都合がいい場所だからと言ったからで、どういう練習をするのかはまだ聞いていないのだ。



「それなのだがその魔石は少々強力なのでな、馴れない内に魔法を使えば想像以上の威力を出しかねないのだ。下手をすれば地形を変えかねない程の惨事になると同時に強力過ぎる魔法はロイ自身にも過度な負担がかかる。なのでまずは必要量の魔力のみを取り出す練習をするぞ」



「え、この杖って地形を変えちゃう程の力を持ってたの?」
 そんなの聞いてなかったんだけど……
「杖、と言うより魔石だな。杖はあくまでも魔法を効率的に使う為の道具に過ぎん」
「それはわかってるけど……まあ、練習したらそうはならないんだよね?」
「そうだ」
 コンはそう言って何かの魔法を使った。
 ちなみに魔法を使った事がわかるのは本来魔力の探知を練習しておく必要があるけど、コンが使った事がわかるのは従魔契約の繋がりのおかげである。

「では練習の内容だが魔法を使うと危険なのでな、まずは魔石から魔力を杖を通して体に取り込み左手を通して空気中に放出することから始めよう」

「……それだけ?」
「うむ、それだけだ」
 それだけならこの場所に来る必要があったのかなと疑問に思いつつも魔石から魔力を取り出すイメージを頭の中に描く。

 まず魔石から魔力が杖を通って自分の体に流れ込むイメージを……

「うわ!?」

 体の中に魔力が物凄い勢いで流れ込んで来て、そのあまりの勢いでイメージが揺らいでしまい制御が出来なくなる。
 そして体内に溜まり過ぎないように左手からすごい量の魔力を放出したけど放出量よりも取り込む量の方が圧倒的に多い。



「あ……」

 そして、突然の激しい頭痛と目眩に吐き気が起き、そのまま意識を失ってしまう。



 それから暫くして、僕はコンにもたれ掛かる形で座っていた。
「落ち着いたか?」
「まだ頭が痛いけど、大丈夫」
「やはりこうなったか。魔力強制放出の魔法を掛けておいて正解だったな」
 あれから1時間程気を失って居た僕が起きた時、コンが何故ああなったのか教えてくれた。

 あれは『魔力酔い』と言う物で、自身の魔力量を遥かに超える魔力を浴びたり取り込んだ時に起きる症状で、頭痛、吐き気、目眩等が発生するのだ。
 今回は魔石から取り込む魔力量が異常に多かったためにすぐに気を失ってしまったけど、その時コンが僕の魔力操作のイメージに魔法で割り込んで魔力を強制的に空気中に放出してくれた事でこの程度で済んでいる。
 もし魔力をあのまま取り込み続けた場合、最悪数日から数年もの間魔法を使えなくなる可能性すらあったらしい。

「確かにあの状態で魔法を使ったら制御出来ないかも」
 あまりにも強力な魔石に振り回される結果となった事に落ち込んでしまう。
「ロイよ、これから毎日制御出来るようになるまでこれを繰り返すぞ。確かに今回は失敗したが、これで改善点は見つけただろう?」
「うん。取り出す量をちゃんと考えないといけないんだよね」
 今回1番の失敗は取り出す量をイメージしていなかったことだ。
 ただ魔力を取り出せば良いとだけ考えてしまっていたので自分が扱える魔力量を遥かに超える魔力が流れて来てしまったのだ。

「そうだ。それにロイ自身の保有魔力量もかなり少ないのでな、毎日この練習を繰り返すと保有魔力量の上限も増えるので扱える魔力量も徐々に増えていく筈だ」

 確かに保有魔力量、自分の体内で保持しておける魔力量の最大量は魔力を使えば使う程上昇する。
 小さい頃から毎日使っていれば今の年で魔法を杖無しでもある程度扱えるのだけど、魔力を消費すると非常に疲れるのだ。
 なので疲れて寝ていても問題ない、もしくは魔力を回復するための魔石を入手出来る貴族か冒険者の子供辺で無ければ小さい頃から毎日練習は出来無いのだ。

「だいぶ落ち着いて来たからそろそろ続きを……」
 そう言って立ち上がろうとしたのだが、立ちくらみがしてすぐに尻餅をついてしまった。
「無理をする必要はない。また明日の作業の後にここで練習すればいい」
 コンはそう言って隣に置かれていた杖を片付ける。



「そういえば何でここで練習するの?」
 コンに言われてコルク川まで来たけど、片道1時間も歩く必要があるので村から少し離れた所でも問題ない筈なのだ。
「それはだな、この辺りに生命草が生えているのは知っているだろう?」
「うん」
 そのおかげで昔ユンを助ける事が出来たのだから勿論知っている。
「生命草は空気中に含まれる魔力を取り込んで成長し、また回復に使われる成分も空気中の魔力量でどれだけ生成出来るかが変わるのでな、魔力を空中に放出する練習と同時に生命草の成長を助ける事が出来るのだ」
「そうなんだ」
「帰る前に少し摘んで行っても明日の同じ時間には元通りになるだろう」
「それじゃあ帰る時に少し摘んで行こうか」
「うむ」



 それからコンに寄り掛かったまま、少し暑く感じる日差しの中欠伸をする。
「このまま少し寝ていい?」
「うむ、日が昇りきる頃に起こせば良いか?」
「うん、お願い。それじゃあおやすみ」
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