農民の少年は混沌竜と契約しました

アルセクト

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第三章 農民が動かす物語

収穫

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「ふぁぁ……よし」
 朝の4時半、かなり暑くなってきた8月の早朝。
 今日も朝の作業のために目を覚ます。
「おはようロイ」
「おはようコン。今日も早起きだね」
「ロイが早起きなのだ、我はロイの時間に合わせるだけだ」
「もっとゆっくり寝たいなら寝ててもいいんだよ?ユンみたいにミリィの部屋で寝てもいいんだよ」
「我の好きでロイと同じ時間に起きるのだ、気にする必要はないぞ」
「そっか」
 朝起きてからたまにするこのやりとりも不思議と長い事やっていた気がするくらいにはコンが居る生活に馴染んできたと言う事だろう。

 そして作業着に着替えてから部屋を出る前に、壁に掛けてある一着の薄茶色のローブが目に入る。
 それは誕生日にソフィがくれた大切なローブ。
 最近寝る時に使っている枕はコールとブロウのプレゼントで、部屋で寛ぐ時には両親がくれた揺り椅子を使っている。
 そうそう、あの数日後にはミリィとミリアが自分達だけ安上がりみたいで悔しかったと言って小さな腰に巻くポーチを作ってくれた。
 別に人と競うようなことではないと思ったけど、それを口にしたら何故か機嫌を悪くしたみたいなので受け取り、今は中に動物用の櫛とソフィの髪を梳くための櫛を入れてある。
 誕生日の翌日に髪を梳いたのが凄く嬉しかったみたいなので櫛を持ち歩く事にしたのだ。



「ふぅ、こんな所かな?」

 そう呟く僕の前には収穫したトマやキューなどが山積みになっていた。
 今は野菜達が収穫期となりたくさんの熟れた実をつけているので1つ1つ丁寧にとる。
 なるべく綺麗なものは都市に売りだしたり他の村との交易に使い、多少傷が付いた物を自分達の村で消費する。
 ただし、9月の始めに行われる収穫祭で使う分には綺麗な実を使うので、その分は既に、村に1つだけある野菜の長期保存専用の蔵に入れてある。
 これは村で都市から購入した冷蔵の魔道具を使用しているため中の温度が低く抑えられており、この中に入れておいた食べ物は中々腐らないのだ。

「うむ、今日取るべき実は無さそうだぞ」
「ワフ!」
 それを目視で確認していたコンと、恐らく匂いで熟しているか否か判断していたユンが教えてくれる。
 ユンは収穫作業の途中にやって来て最後の確認を手伝ってくれている。
 最初は熟れているか否か大雑把な違いしかわからなかったみたいだけど、今では僕が気づいていなかった物を教えてくれたりもするので凄く助かっている。

「二人ともありがとう」
 そう言って撫でてやるとコンもユンも嬉しそうに笑う。
「それじゃあ運ばないとね」
 僕はそう言って収穫した実を詰めた布を敷いた木箱を持ち上げて人力で引く荷馬車に乗せて歩き出す。
 まずは綺麗な実を詰めた箱を2、3回に分けて村の蔵へと運ぶのだ。
 それとは別に分けておいた十分食べられるけど売り物には好ましくない実は、タームの世話を終えた父さんが家へと運び入れるから放置する。

「よいしょ、よいしょ……」
 そこそこ蒸し暑い中僕は村の中心近くにある蔵まで来ると、そこには同じように収穫した作物を持った村人が何人か並んでいた。
 蔵はどの家からも近いよう村の広場の近くに設置されており、また入れる際には村全体の収穫量を正確に記録するために村長一家が色々と確認するのだ。

「ロイ、お前自力で押して来たのかよ」
 やっと一息つけると思った所に声を掛けて来たのは目の前に並んでいたブロウだった。
「そうだよ」
「お前さぁ、コンに大きくなって貰って運んでもらった方が明らか楽だろ。というか闇魔法でしまって貰って来いよ、俺はコイツに引いてもらってるんだぜ?」
 そう言ってブロウがポンと軽く叩くのは従魔であるカウホースだった。
「う~ん、でもそれをしたら何だかサボってる気がしちゃって」
 そう言って苦笑いをするとブロウは呆れた顔をする。
「そういうのはサボったんじゃ無くて楽をするって言うんだよ。楽をする事がサボることなら台車使って運ぶのもサボる事になるぞ」
「そ、それは確かにそうだけど……」
「まあ人のやる事に一々口出しする必要もねぇかっと、やっと俺の番か」
 そこでブロウの前にいた人が蔵の中に入って行ったので会話を中断する。



 それから僕も台車に乗せた野菜を3往復で全て蔵に入れてから帰る。
 この時点で朝の5時から畑の水やりと収穫、後は納品で7時半が過ぎていたので既に3時間半も経過している。

「ああそうじゃロイ、今日は行商人が来る日じゃから家族と、あとブォンの所にも言っておいてくれ」

 押して帰る直前に村長がそう教えてくれる。
「わかりました、伝えておきます」
「頼むぞ」
 商人は月始めの日曜日に来ると決まっている。
 これを逃すと次来るのが1月後となるためこうして会うことがあれば今日がその日だと教え合うのが普通だ。
 そうそう、ブォンとはソフィのお父さんの名前だ。



「確か今塩と砂糖、後は何か足りないものあったかな……」
「行商人か、どのような物なのか楽しみだ」
「そういえばコンはこれが初めてだっけ?」
「うむ、ロイが行くことが無かったのでな」
「自分で行けばいいのに」
「ロイが居なければつまらん」 
「そっか」
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