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第三章 農民が動かす物語
幸せの証
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生まれて初めての拒否。
それも、初めての怒りを押さえ込みながら必死に慣れない敬語に直しながらの言葉。
本当は今すぐにでも強制的に追い出したいと思いながらも発した拒絶の意思は、口にした途端に心の中で湧き上がる怒りが少しばかり落ち着くのを感じた。
「な、このような生活が良いだと?」
だがしかし、そんな僕の精一杯の意思表示は彼らからすれば納得出来無いもののようで。
「……ゼン、お前か。この村を出ないように脅しをかけたりしているのではないだろうな?それとも……ああ、ルミとやらか?それかその子供か?ここに縛り付けようとする者は」
この人は、一体何を言っているんだろう。
「このような小さき村のどこに価値がある」
何故、この目の前の人物はこの村をバカにするのだろうか。
「何を言われていようが気にすることはない。儂らと共に来ることこそが幸せなのだ。元々君は私達と居るのが当たり前で、このような場所に居るのがおかしいんだ」
どうして、こいつはこんなにも僕達家族を傷付けるのだろうか。
「混沌竜様がいらっしゃるのだから何も怯えることはなかろう?」
こいつは何故、従魔をまるで物のように言えるのだろうか。
イライラがますます強くなるのを感じる。
なぜ、こんなにもイライラするのだろうか。
笑顔でいれば、こんな嫌な感情を覚えなくて済むのに。
そこで僕はようやく気がついた。
今、僕が笑っていない事に。
いつも浮かべているはずの笑みが消えている事に。
「……笑うことは、幸せの証……」
頭の中に浮かんだフレーズを小さく呟く。
これは一体誰から聞いたことだっただろう?
そうだ、これはレン兄から聞いたことだ。
というよりも、何か疑問があるときに質問するのは昔からレン兄であった。
「幸せって、なに?」
これは僕が確か4歳の頃、誰かから聞いた言葉の意味がわからなくて質問した時のことだ。
「幸せ?……そうだなぁ、笑顔でいることじゃないか?」
この頃のレン兄のことを、僕は色んなことを教えてくれるとっても頼りになる人だと思っていた。
だからこの日も聞けば教えてもらえると思って聞いたんだ。
「笑顔?」
「そう、笑顔だ!楽しい時とか嬉しい時は笑うだろ?だから幸せは笑顔でいることだろ」
そう自信満々に答えてエッヘンとふんぞり返るレン兄を僕は見つめて、新しく浮かんだ疑問をぶつけたんだっけ。
「そっか!それじゃあ、みんなが幸せにいられるにはどうしたらいいのかな?」
「う、ううん?うーん、そうだなぁ……笑顔でいたらいいんじゃないか?」
「笑顔でいる?」
「そ。ほら、誰かが笑ってたら自分も自然と笑顔になるだろ?」
「うん、なる!」
「だから、自分が笑ってたらみんな幸せになるんじゃないか?」
その答えに、僕は凄く感動したんだっけ。
それで僕は決めたんだ、皆をずっとずっと幸せにしたいと願って。
「そっかあ!じゃあ、僕笑う!笑ってみんなを幸せにする!」
そう、誓ったんだった。
別に特定の何かに誓ったわけではない。
ただ何かにそう誓いたかったから誓ったんだ。
「……だから、笑わないと……」
笑っていれば、誰もが幸せになれるから。
だから笑う、いつものように。
両頬の口角を上げて笑みを作る。
(あれ、おかしいな?)
しかしその笑みは違和感しか感じなかった。
(もっと上げているのかな?)
そう思いもっと口角を上げてみるものの、頬が引きつって若干の痛みが襲う。
(もっと力を抜かなきゃ)
そう思うと今度は抜き過ぎて笑顔が消える。
(違う、笑わなきゃ)
また口角を上げるもののまた上がり過ぎているのを感じる。
(おかしいな、何でだろう。笑うってこんなに難しい物だったかな?)
僕はあれからずっと笑っていた。
笑みを絶やす事の無いよう最初は意識していたけれど、今ではどんなときでも決して絶える事が無かったはずなんだけど。
誰もが僕がずっと笑顔だと言っていたから、確かに笑っていたはずなのに。
(どうやって笑うんだっけ?そもそも、僕はこれまで本当に笑っていたのかな?)
わけがわからなくなった。
僕がこれまでしていた表情が本当に笑顔だったのかすら疑い始める。
いつも笑顔でいれば皆笑顔になったはずなのに、笑顔でいれば何があっても辛い事も悲しい事も笑って済ますことが出来ていたはずなのに。
(笑顔って、本当に幸せの証だったのかな?)
僕がいつの間にか信じていた事そのものが、嘘だったかのように感じた。
いつの間にか忘れてしまっていた僕の指針が、全て否定されているようだった。
これから何を信じて『幸せ』とするべきなのかもわからなくなる。
バシン!
「痛い!?」
唐突に後頭部に痛み走る。
僕はすぐに上を見上げる。
「コン、痛いよ」
「ロイよ、そう悩むことはないぞ」
痛みの原因はいつの間にか僕の頭の上に乗っていた、コンの尻尾の一撃であった。
そのためコンに何をするのかと軽く文句を言うものの、なんだか噛み合わない答えが返ってくるだけだった。
コンは僕の頭の上から降りて机の上に乗るとこう宣言した。
「我が主は今問答出来る状態にないようだ。であるので代わりに我が問答しよう」
それも、初めての怒りを押さえ込みながら必死に慣れない敬語に直しながらの言葉。
本当は今すぐにでも強制的に追い出したいと思いながらも発した拒絶の意思は、口にした途端に心の中で湧き上がる怒りが少しばかり落ち着くのを感じた。
「な、このような生活が良いだと?」
だがしかし、そんな僕の精一杯の意思表示は彼らからすれば納得出来無いもののようで。
「……ゼン、お前か。この村を出ないように脅しをかけたりしているのではないだろうな?それとも……ああ、ルミとやらか?それかその子供か?ここに縛り付けようとする者は」
この人は、一体何を言っているんだろう。
「このような小さき村のどこに価値がある」
何故、この目の前の人物はこの村をバカにするのだろうか。
「何を言われていようが気にすることはない。儂らと共に来ることこそが幸せなのだ。元々君は私達と居るのが当たり前で、このような場所に居るのがおかしいんだ」
どうして、こいつはこんなにも僕達家族を傷付けるのだろうか。
「混沌竜様がいらっしゃるのだから何も怯えることはなかろう?」
こいつは何故、従魔をまるで物のように言えるのだろうか。
イライラがますます強くなるのを感じる。
なぜ、こんなにもイライラするのだろうか。
笑顔でいれば、こんな嫌な感情を覚えなくて済むのに。
そこで僕はようやく気がついた。
今、僕が笑っていない事に。
いつも浮かべているはずの笑みが消えている事に。
「……笑うことは、幸せの証……」
頭の中に浮かんだフレーズを小さく呟く。
これは一体誰から聞いたことだっただろう?
そうだ、これはレン兄から聞いたことだ。
というよりも、何か疑問があるときに質問するのは昔からレン兄であった。
「幸せって、なに?」
これは僕が確か4歳の頃、誰かから聞いた言葉の意味がわからなくて質問した時のことだ。
「幸せ?……そうだなぁ、笑顔でいることじゃないか?」
この頃のレン兄のことを、僕は色んなことを教えてくれるとっても頼りになる人だと思っていた。
だからこの日も聞けば教えてもらえると思って聞いたんだ。
「笑顔?」
「そう、笑顔だ!楽しい時とか嬉しい時は笑うだろ?だから幸せは笑顔でいることだろ」
そう自信満々に答えてエッヘンとふんぞり返るレン兄を僕は見つめて、新しく浮かんだ疑問をぶつけたんだっけ。
「そっか!それじゃあ、みんなが幸せにいられるにはどうしたらいいのかな?」
「う、ううん?うーん、そうだなぁ……笑顔でいたらいいんじゃないか?」
「笑顔でいる?」
「そ。ほら、誰かが笑ってたら自分も自然と笑顔になるだろ?」
「うん、なる!」
「だから、自分が笑ってたらみんな幸せになるんじゃないか?」
その答えに、僕は凄く感動したんだっけ。
それで僕は決めたんだ、皆をずっとずっと幸せにしたいと願って。
「そっかあ!じゃあ、僕笑う!笑ってみんなを幸せにする!」
そう、誓ったんだった。
別に特定の何かに誓ったわけではない。
ただ何かにそう誓いたかったから誓ったんだ。
「……だから、笑わないと……」
笑っていれば、誰もが幸せになれるから。
だから笑う、いつものように。
両頬の口角を上げて笑みを作る。
(あれ、おかしいな?)
しかしその笑みは違和感しか感じなかった。
(もっと上げているのかな?)
そう思いもっと口角を上げてみるものの、頬が引きつって若干の痛みが襲う。
(もっと力を抜かなきゃ)
そう思うと今度は抜き過ぎて笑顔が消える。
(違う、笑わなきゃ)
また口角を上げるもののまた上がり過ぎているのを感じる。
(おかしいな、何でだろう。笑うってこんなに難しい物だったかな?)
僕はあれからずっと笑っていた。
笑みを絶やす事の無いよう最初は意識していたけれど、今ではどんなときでも決して絶える事が無かったはずなんだけど。
誰もが僕がずっと笑顔だと言っていたから、確かに笑っていたはずなのに。
(どうやって笑うんだっけ?そもそも、僕はこれまで本当に笑っていたのかな?)
わけがわからなくなった。
僕がこれまでしていた表情が本当に笑顔だったのかすら疑い始める。
いつも笑顔でいれば皆笑顔になったはずなのに、笑顔でいれば何があっても辛い事も悲しい事も笑って済ますことが出来ていたはずなのに。
(笑顔って、本当に幸せの証だったのかな?)
僕がいつの間にか信じていた事そのものが、嘘だったかのように感じた。
いつの間にか忘れてしまっていた僕の指針が、全て否定されているようだった。
これから何を信じて『幸せ』とするべきなのかもわからなくなる。
バシン!
「痛い!?」
唐突に後頭部に痛み走る。
僕はすぐに上を見上げる。
「コン、痛いよ」
「ロイよ、そう悩むことはないぞ」
痛みの原因はいつの間にか僕の頭の上に乗っていた、コンの尻尾の一撃であった。
そのためコンに何をするのかと軽く文句を言うものの、なんだか噛み合わない答えが返ってくるだけだった。
コンは僕の頭の上から降りて机の上に乗るとこう宣言した。
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