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第三章 農民が動かす物語
安息
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「コン、ありがとう」
彼らがこの家を去ってから少しばかり沈黙が支配していた中、僕はコンの頭を撫でてる。
「ふむ?我はただ我が望む要求をしただけなのだが」
「なんでコンはたまに強情になるの?」
「む、そのような事はないぞ」
たぶんコンなりの照れ隠しなのだろう、ムッとした表情をしているものの尻尾が微かにゆっくりと左右に揺れていた。
これはここ最近気付いたことなんだけど、コンは表情豊かなので隠し事をあまりしていないように見えてたけど、実際は表情じゃなくて尻尾の動きが本音を表しているみたいだった。
今わかっているのは左右にゆっくりと振るのが喜び、若干くねらせるように動いているのが退屈、ピンと伸びる時は注意や警戒といった感じ。
いつも抱き上げると「うむ、どうした?」なんて冷静に聞いてくるけれど、いつも尻尾が揺れていて喜びを隠しきれていないのがとても可愛らしいと思う。
「ロイよ、ニコニコしてないで何か言いたい事があるなら直接言えばどうだ?」
そう若干目を細めて怪訝そうな顔をするけれど、揺れる尻尾が気分を害してはいないと教えてくれる。
「コンはいつ撫でても気持ちいいなーって」
「ふむ、そうか」
そうして暫くコンを撫でていると、後ろからソフィがおずおずと声を掛けてきた。
「えっと、ロイ君、大丈夫なの?」
「え、何が?」
「その、さっきロイ君凄く……ううん、何でもない」
何か言いかけて、でもすぐに言葉を濁す。
「それじゃあ私は今日はもう帰るね!」
そして何故だか少々慌てた様子で立ち上がる。
「うん、またね」
僕はそう言って軽く手を振って見送った。
そしてソフィが家を出てすぐに、お父さんが立ち上がった。
「ロイ、俺はお前みたいな息子が居て、本当に誇らしいと思うぞ」
そう言ってお父さんは台所から火酒を2本取って仕事場へと向かう。
しかしその足取りが少しフラフラとして危なっかしかった。
お父さんはあまりお酒に強くないから、いつもアルコール分の低いお酒1本をチビチビと飲んでいるのでこれはかなり珍しいことであった。
ここ最近ロクに寝ていなかったからたぶんあの様子だと火酒を飲んでから、もしくは飲みながら寝てしまいそうだ。
「ロイ、お母さんはお父さんの様子を見てくるから」
やはりお母さんも心配だったのか、お父さんの仕事場に向かう。
「お昼ご飯は2人で作って食べてね。お母さんとお父さんの分は要らないから」
「うん、わかった」
頷くと、すぐに仕事場に入っていった。
たぶんお父さんとお酒を飲むのだろう。
お母さんはあまり味が好きではないからと飲む事は少ないものの、お酒にはかなり強い方らしくて酔いたい時には普通のお酒じゃ酔えないからと、お父さんが普段飲むのを遠慮する火酒を買い置いていたりする。
そうして居間に残ったのは僕と僕の左腕に抱きついたままのミリィとずっと撫でているコン、そしていつの間にか静かな寝息を立てて眠るユンだけであった。
そのまま暫くジッとしていると、左腕に抱きつく力が強くなった。
「お兄ちゃん、本当に行かないの?」
「僕はどこにも行かないよ。この村が好きだし、それにミリィを置いて行くなんて僕には出来ないかなぁ」
思った事をそのまま言って笑うと、ミリィは更にギュウと強くしがみつく。
ついこの前まで力一杯抱きつかれてもちっとも痛いと思わなかったのに、少し痛みを感じてミリィが成長している事を実感して何だか不思議と嬉しくなる。
若干左腕が痺れてきたけど、それもミリィが成長した証拠と思えば笑顔しか浮かばない。
「大丈夫、僕はずっとここに居るからね」
「ぁ……」
そう言ってコンを撫でていた右手をミリィの頭に持っていって撫でる。
そうするとミリィはしがみついたまま見上げていた顔を僕の腕に押し付けてきた。
そのまま撫でているとミリィの顔が若干赤くなる。
きっと不安で仕方なかったのが安心して緊張の糸の切れたのか、暫く撫でていたら不意に左腕を抱く力が抜けてズルズルと床に滑り落ちそうになった。
「あっ、と」
僕はミリィを撫でる手を止めて、床に頭を打たないようにソッと寝かせてやると正座したままになっていた足も伸ばしてやり、僕の膝に仰向けに頭を乗せる。
そうしてミリィの顔を見ると、若干泣いていたのか目が赤くなっていた。
でも表情は安心しきったのか、笑顔で眠っていた。
それから耳を澄ますと仕事場から微かにお父さんのイビキが聞こえてきた。
基本的にイビキなんてかかない人だから、余程疲れていたのだろう事が伺えた。
「皆寝ちゃったね」
「うむ、そうらしいな」
僕がそう苦笑いすると、机の上で僕とミリィを見て微笑んでいたコンが頷いてくれる。
「皆、限界だったのかな」
「そうかもしれぬな」
それから何か話した方がいいかと話題を探していると、何だか僕も眠くなって来た。
ああ、疲れていたのは僕もだったんだなとここに来てようやく理解した所で、段々と意識が薄れて来て。
「おやすみだ、ロイ」
そんなコンの優しい声が聞こえた所でプツリと眠りに落ちた。
彼らがこの家を去ってから少しばかり沈黙が支配していた中、僕はコンの頭を撫でてる。
「ふむ?我はただ我が望む要求をしただけなのだが」
「なんでコンはたまに強情になるの?」
「む、そのような事はないぞ」
たぶんコンなりの照れ隠しなのだろう、ムッとした表情をしているものの尻尾が微かにゆっくりと左右に揺れていた。
これはここ最近気付いたことなんだけど、コンは表情豊かなので隠し事をあまりしていないように見えてたけど、実際は表情じゃなくて尻尾の動きが本音を表しているみたいだった。
今わかっているのは左右にゆっくりと振るのが喜び、若干くねらせるように動いているのが退屈、ピンと伸びる時は注意や警戒といった感じ。
いつも抱き上げると「うむ、どうした?」なんて冷静に聞いてくるけれど、いつも尻尾が揺れていて喜びを隠しきれていないのがとても可愛らしいと思う。
「ロイよ、ニコニコしてないで何か言いたい事があるなら直接言えばどうだ?」
そう若干目を細めて怪訝そうな顔をするけれど、揺れる尻尾が気分を害してはいないと教えてくれる。
「コンはいつ撫でても気持ちいいなーって」
「ふむ、そうか」
そうして暫くコンを撫でていると、後ろからソフィがおずおずと声を掛けてきた。
「えっと、ロイ君、大丈夫なの?」
「え、何が?」
「その、さっきロイ君凄く……ううん、何でもない」
何か言いかけて、でもすぐに言葉を濁す。
「それじゃあ私は今日はもう帰るね!」
そして何故だか少々慌てた様子で立ち上がる。
「うん、またね」
僕はそう言って軽く手を振って見送った。
そしてソフィが家を出てすぐに、お父さんが立ち上がった。
「ロイ、俺はお前みたいな息子が居て、本当に誇らしいと思うぞ」
そう言ってお父さんは台所から火酒を2本取って仕事場へと向かう。
しかしその足取りが少しフラフラとして危なっかしかった。
お父さんはあまりお酒に強くないから、いつもアルコール分の低いお酒1本をチビチビと飲んでいるのでこれはかなり珍しいことであった。
ここ最近ロクに寝ていなかったからたぶんあの様子だと火酒を飲んでから、もしくは飲みながら寝てしまいそうだ。
「ロイ、お母さんはお父さんの様子を見てくるから」
やはりお母さんも心配だったのか、お父さんの仕事場に向かう。
「お昼ご飯は2人で作って食べてね。お母さんとお父さんの分は要らないから」
「うん、わかった」
頷くと、すぐに仕事場に入っていった。
たぶんお父さんとお酒を飲むのだろう。
お母さんはあまり味が好きではないからと飲む事は少ないものの、お酒にはかなり強い方らしくて酔いたい時には普通のお酒じゃ酔えないからと、お父さんが普段飲むのを遠慮する火酒を買い置いていたりする。
そうして居間に残ったのは僕と僕の左腕に抱きついたままのミリィとずっと撫でているコン、そしていつの間にか静かな寝息を立てて眠るユンだけであった。
そのまま暫くジッとしていると、左腕に抱きつく力が強くなった。
「お兄ちゃん、本当に行かないの?」
「僕はどこにも行かないよ。この村が好きだし、それにミリィを置いて行くなんて僕には出来ないかなぁ」
思った事をそのまま言って笑うと、ミリィは更にギュウと強くしがみつく。
ついこの前まで力一杯抱きつかれてもちっとも痛いと思わなかったのに、少し痛みを感じてミリィが成長している事を実感して何だか不思議と嬉しくなる。
若干左腕が痺れてきたけど、それもミリィが成長した証拠と思えば笑顔しか浮かばない。
「大丈夫、僕はずっとここに居るからね」
「ぁ……」
そう言ってコンを撫でていた右手をミリィの頭に持っていって撫でる。
そうするとミリィはしがみついたまま見上げていた顔を僕の腕に押し付けてきた。
そのまま撫でているとミリィの顔が若干赤くなる。
きっと不安で仕方なかったのが安心して緊張の糸の切れたのか、暫く撫でていたら不意に左腕を抱く力が抜けてズルズルと床に滑り落ちそうになった。
「あっ、と」
僕はミリィを撫でる手を止めて、床に頭を打たないようにソッと寝かせてやると正座したままになっていた足も伸ばしてやり、僕の膝に仰向けに頭を乗せる。
そうしてミリィの顔を見ると、若干泣いていたのか目が赤くなっていた。
でも表情は安心しきったのか、笑顔で眠っていた。
それから耳を澄ますと仕事場から微かにお父さんのイビキが聞こえてきた。
基本的にイビキなんてかかない人だから、余程疲れていたのだろう事が伺えた。
「皆寝ちゃったね」
「うむ、そうらしいな」
僕がそう苦笑いすると、机の上で僕とミリィを見て微笑んでいたコンが頷いてくれる。
「皆、限界だったのかな」
「そうかもしれぬな」
それから何か話した方がいいかと話題を探していると、何だか僕も眠くなって来た。
ああ、疲れていたのは僕もだったんだなとここに来てようやく理解した所で、段々と意識が薄れて来て。
「おやすみだ、ロイ」
そんなコンの優しい声が聞こえた所でプツリと眠りに落ちた。
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