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第四章 分岐点
貸牛馬車
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寝起きの小さな騒ぎから暫くして、僕とソフィは運ばれてきた朝食を食べたら宿を出た。
「イツキさん達、居るかな?」
「どうかなぁ」
細かな時間は決めていなかったので不安だったけれど、街の北門に行ってみればそこにはフールさんとスーさんの姿があった。
「おはようございます。ロイさん、ソフィさん」
「おっはよう!」
僕達の姿を見たフールさんは丁寧にお辞儀をして、スーさんは右手をブンブンと振る。
僕達も頭を下げて挨拶をする。
「体の調子はどうですか?旅慣れてないと一日歩くだけでも辛いものですから、歩くのが辛いのであれば我慢せずに言ってください」
「僕は大丈夫です。一応農家をしてますから」
そう答えてからソフィを見ると、少し考え込んでいた。
「私もたぶん大丈夫だと思いますけど、またユンのお世話になるかも」
「1日2日で慣れるものでもないですから、旅を続けていたらその内慣れると思いますよ。イツキがそうだったみたいですし」
イツキさんが?と疑問に思うけれど、そういわれて見れば毎日タームの餌などの重い荷物を運んだりしてる自分より腕や足が細かったなと思い出す。
「イツキとメイさんは今この辺りの事を聞いてまわってるから、もう少ししたら来るよ」
と、僕達の疑問に先回りするように教えてくれる。
「それと今日の予定についてなんだけど、牛馬車に乗って行って次の街の手前の村で降りて、村と街の間の街道の脇でキャンプするからそのつもりでね」
「キャンプですか?」
街まで行けないから村でならともかく、わざわざ野宿をする理由がわからない。
「それは「依頼を受けたからだよ、そういうな」」
と、フールさんの声に被せるようにイツキさんの声が後ろから聞こえた。
「おはようございます」
「おうおはよ」
そう軽く挨拶を返すイツキさんの後ろには少しだけ機嫌良さそうに微笑んでいるメイさんが居たけれど、僕達の姿を見るとすぐに踵を返して街の中へ戻っていった。
「あれは気にすんな、たまにああなんだ」
イツキさんもメイさんを見てそういうと、一度深く溜息をついた。
「とりあえず今日はメイが貸牛馬車を借りに行ってるから、それを使って行くぞ」
「え、貸牛馬車ですか!?」
サラッとイツキさんはそういったけれど、一定の時間毎に人を乗せて街と街の間を行き来する乗り合い牛馬車より高くつくのだ。
「代金は俺ら持ちだから気にすんな。ほら俺以外……あー、こんなこと言いたかねぇけど純粋な人間じゃねぇだろ?だから目立つし好奇心で寄るか嫌な顔するかの二択でな、場合によっては亜人はお断りだってこともあるからよく借りんだよ」
それを聞いて、僕とソフィは何にも言えずに黙り込んでしまう。
隣で聞いていたフールさんとスーさんは気にせず笑っているからフォローみたいなのをするのは違うし、だからといって怒るとイツキさん達を困らせるだけだろう。
「この国は人国の奥地だけど、だからこそか?亜人に対する差別はそうねぇけど嫌な顔されるのは嫌だし、相手が嫌がることをわざわざして気分を害することもしたくはない。まあ俺らはこういったことは慣れっ子だから気にせんでいいさ」
そう言って笑うイツキさんの目に少し寂しさが見えた気がするけど、僕には何も言うことは出来なかった。
「ま、だからこそ暖かく迎えてくれたお礼の意味も込めてお前さんの親父さんからのロイに色々教えてやってくれって依頼を受けてるって訳だ。ああ依頼って言ってるのは俺らの勝手だから正しくはお願いな」
「そうだったんですか」
嬉しそうに笑うイツキさんに、僕も笑顔で返す。
「まあそれはそれとして、野宿すんのは王都に着くまでに野宿するのに適した場所だとか、焚き火の仕方だ何だと習ってるとは思うが聞くのとやるのとでは全然勝手が違うからな。何がいって何が要らんのかとか、やらんとわからんからやるんだ」
言われて、昔学校で習った事が幾らか朧げになっていた事に気が付いた。
「わかりました、よろしくお願いします」
「おうよ、任せときな」
「イツキさん達、居るかな?」
「どうかなぁ」
細かな時間は決めていなかったので不安だったけれど、街の北門に行ってみればそこにはフールさんとスーさんの姿があった。
「おはようございます。ロイさん、ソフィさん」
「おっはよう!」
僕達の姿を見たフールさんは丁寧にお辞儀をして、スーさんは右手をブンブンと振る。
僕達も頭を下げて挨拶をする。
「体の調子はどうですか?旅慣れてないと一日歩くだけでも辛いものですから、歩くのが辛いのであれば我慢せずに言ってください」
「僕は大丈夫です。一応農家をしてますから」
そう答えてからソフィを見ると、少し考え込んでいた。
「私もたぶん大丈夫だと思いますけど、またユンのお世話になるかも」
「1日2日で慣れるものでもないですから、旅を続けていたらその内慣れると思いますよ。イツキがそうだったみたいですし」
イツキさんが?と疑問に思うけれど、そういわれて見れば毎日タームの餌などの重い荷物を運んだりしてる自分より腕や足が細かったなと思い出す。
「イツキとメイさんは今この辺りの事を聞いてまわってるから、もう少ししたら来るよ」
と、僕達の疑問に先回りするように教えてくれる。
「それと今日の予定についてなんだけど、牛馬車に乗って行って次の街の手前の村で降りて、村と街の間の街道の脇でキャンプするからそのつもりでね」
「キャンプですか?」
街まで行けないから村でならともかく、わざわざ野宿をする理由がわからない。
「それは「依頼を受けたからだよ、そういうな」」
と、フールさんの声に被せるようにイツキさんの声が後ろから聞こえた。
「おはようございます」
「おうおはよ」
そう軽く挨拶を返すイツキさんの後ろには少しだけ機嫌良さそうに微笑んでいるメイさんが居たけれど、僕達の姿を見るとすぐに踵を返して街の中へ戻っていった。
「あれは気にすんな、たまにああなんだ」
イツキさんもメイさんを見てそういうと、一度深く溜息をついた。
「とりあえず今日はメイが貸牛馬車を借りに行ってるから、それを使って行くぞ」
「え、貸牛馬車ですか!?」
サラッとイツキさんはそういったけれど、一定の時間毎に人を乗せて街と街の間を行き来する乗り合い牛馬車より高くつくのだ。
「代金は俺ら持ちだから気にすんな。ほら俺以外……あー、こんなこと言いたかねぇけど純粋な人間じゃねぇだろ?だから目立つし好奇心で寄るか嫌な顔するかの二択でな、場合によっては亜人はお断りだってこともあるからよく借りんだよ」
それを聞いて、僕とソフィは何にも言えずに黙り込んでしまう。
隣で聞いていたフールさんとスーさんは気にせず笑っているからフォローみたいなのをするのは違うし、だからといって怒るとイツキさん達を困らせるだけだろう。
「この国は人国の奥地だけど、だからこそか?亜人に対する差別はそうねぇけど嫌な顔されるのは嫌だし、相手が嫌がることをわざわざして気分を害することもしたくはない。まあ俺らはこういったことは慣れっ子だから気にせんでいいさ」
そう言って笑うイツキさんの目に少し寂しさが見えた気がするけど、僕には何も言うことは出来なかった。
「ま、だからこそ暖かく迎えてくれたお礼の意味も込めてお前さんの親父さんからのロイに色々教えてやってくれって依頼を受けてるって訳だ。ああ依頼って言ってるのは俺らの勝手だから正しくはお願いな」
「そうだったんですか」
嬉しそうに笑うイツキさんに、僕も笑顔で返す。
「まあそれはそれとして、野宿すんのは王都に着くまでに野宿するのに適した場所だとか、焚き火の仕方だ何だと習ってるとは思うが聞くのとやるのとでは全然勝手が違うからな。何がいって何が要らんのかとか、やらんとわからんからやるんだ」
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「わかりました、よろしくお願いします」
「おうよ、任せときな」
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