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ほれ薬かもしれない
エピローグ(あとがきあり)
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その後由梨花は学校で「イケメン、成績優秀、運動部レギュラー」という同級生男子から告白された。
由梨花にとって、男子からの告白自体は初めてのことではない。
今までは「そういうの、まだよくわかんなくて」または「付き合っている人がいるから」と断っていたが、今回は「ちょっとだけ考えさせて」と答えていた。
その男子は決していい気になっているタイプではなく、男子からも好かれていた。
それまで口を利いたことがある――程度の接触しかなかったし、嫌いとか生理的に無理などと思ったことは一度もない。
由梨花は啓のことを全く忘れたわけではないが、これも何かのきっかけかなと、少し前向きな気持ちになっていた。
◇◇◇
一方、啓と麻里奈の間には、まだ特に進展はない。
啓は思い切って告白しようと考えてはいるものの、同じ学校のせいか、逆に「ここぞ」のチャンスをつかみかねているところがあった。
学校祭や体育祭、修学旅行など、非日常的な行事がねらい目かもしれない。
修学旅行は3年の春なので、その前には何とかしたいなと漠然と考えるだけだった。
――そう考えている間にも、ふと、由梨花と行ったプラネタリウムとか、小遣いを貯めて買ってあげようと思っていたぬいぐるみのことなどをちらちらと思い出す。
◇◇◇
麻里奈は啓に対し、少なくとも悪い感じは持っていなかったが、好きとか付き合いたいという具体的な思いはない。
それでいて、「女子って大変なんだな」とぼそっと言った啓のことを、時々ニヤニヤと思い出しては、(私ってばまた…)などと戸惑っていた。
【『ほれ薬かもしれない』 了】
◆あとがき◆
『ほれ薬かもしれない』へのアクセス、まことにありがとうございます。
この話は結構実話に基づいています。
中2の夏から中3にかけて、遠距離――というか文通中心で付き合っていた同い年の男の子に、夏休み前に突然「君より好きな子ができたから、もう手紙は書けない」と言われ、振られてしまったのです。
そこに至る2通前の手紙で、「頭痛がひどいとき、クラスの女子にバファリンをもらった」という話題が書いてあったので、「バファリンの君《きみ》」などとからかっていたら、「バファリンの君と付き合うことになった」とか言い出しまして。
ただし、そこからわずか1カ月後に、「やっぱり君が忘れられない」と電話がかかってきまして。
一体何がしたいんじゃこいつはと思いましたが、もともとほぼ手紙だけで、長期休暇のときに少し会うだけの関係だったので、正直「黙ってりゃわかんないのにバカ正直に」って感じでした。謎の空白の1カ月で何があったか知りませんが、いっそ何だか面白くなって、それ以降はあまり気取らず、歯に衣着せずにやりとりができるようになった気がします。
「バファリンの君」は「美人で成績優秀で温厚篤実、運動部副部長」と、なかなか完成度の高い全部盛りラーメンのような少女だったようですが、これから振ろうとする女にそこまで言う(自慢する?)必要あるんでしょうか。そんなことを申し訳なさそうに語るあたりも、悪い意味でおもしれえ男、ネタの宝庫でした。
割と簡単に好きになったり嫌いになったり、その好き嫌いをLOVEと勘違いしたり、むしろLOVEの芽生えに気づかなかったり――と、中学生って面白い素材ですね。妄想が尽きません。
◇◇◇
作中出てくる商品は「バファリンルナJ」を中途半端に想定しました。
どう変名しようかと思い、とりあえずバファリンの語源を調べたら、「緩和するという意味の英単語Bufferと、Aspirinの末尾rinの合成」だと書いてありました(薬の名前の由来 - 健康豆知識|公益社団法人日本薬学会より)。
そこで、痛みを抑えるという意味も持つ「subdue」と「rin」を組み合わせ、「サブデュリン」という名前を勝手に作り出しました。調べた限りでは実在しない薬品名です。
で、思ったのですが…。この話の時代背景は現代なのですが、もとになったエピソードは1980年代で、「バファリンルナ」「バファリンルナJ」など存在しなかったのは当然として、そもそもバファリン自体が「15歳以上向け」の薬だったのではないかと。
当時から「小児用バファリン」というのもあったので、15歳未満はそれで補完されていたはずですが、「バファリンの君」が「何がしたいんだ君」に渡したバファリンって、成人用だったのか、小児用だったのか…?もう確認のしようもないのですが、少し気になります。
うちの親は大雑把だったので、どちらかといえば小柄だった私が中学生時代(12~15歳)は、「バファリンを1錠だけ飲みなさい」と言っていた気がします。その辺が落としどころですかね。
由梨花にとって、男子からの告白自体は初めてのことではない。
今までは「そういうの、まだよくわかんなくて」または「付き合っている人がいるから」と断っていたが、今回は「ちょっとだけ考えさせて」と答えていた。
その男子は決していい気になっているタイプではなく、男子からも好かれていた。
それまで口を利いたことがある――程度の接触しかなかったし、嫌いとか生理的に無理などと思ったことは一度もない。
由梨花は啓のことを全く忘れたわけではないが、これも何かのきっかけかなと、少し前向きな気持ちになっていた。
◇◇◇
一方、啓と麻里奈の間には、まだ特に進展はない。
啓は思い切って告白しようと考えてはいるものの、同じ学校のせいか、逆に「ここぞ」のチャンスをつかみかねているところがあった。
学校祭や体育祭、修学旅行など、非日常的な行事がねらい目かもしれない。
修学旅行は3年の春なので、その前には何とかしたいなと漠然と考えるだけだった。
――そう考えている間にも、ふと、由梨花と行ったプラネタリウムとか、小遣いを貯めて買ってあげようと思っていたぬいぐるみのことなどをちらちらと思い出す。
◇◇◇
麻里奈は啓に対し、少なくとも悪い感じは持っていなかったが、好きとか付き合いたいという具体的な思いはない。
それでいて、「女子って大変なんだな」とぼそっと言った啓のことを、時々ニヤニヤと思い出しては、(私ってばまた…)などと戸惑っていた。
【『ほれ薬かもしれない』 了】
◆あとがき◆
『ほれ薬かもしれない』へのアクセス、まことにありがとうございます。
この話は結構実話に基づいています。
中2の夏から中3にかけて、遠距離――というか文通中心で付き合っていた同い年の男の子に、夏休み前に突然「君より好きな子ができたから、もう手紙は書けない」と言われ、振られてしまったのです。
そこに至る2通前の手紙で、「頭痛がひどいとき、クラスの女子にバファリンをもらった」という話題が書いてあったので、「バファリンの君《きみ》」などとからかっていたら、「バファリンの君と付き合うことになった」とか言い出しまして。
ただし、そこからわずか1カ月後に、「やっぱり君が忘れられない」と電話がかかってきまして。
一体何がしたいんじゃこいつはと思いましたが、もともとほぼ手紙だけで、長期休暇のときに少し会うだけの関係だったので、正直「黙ってりゃわかんないのにバカ正直に」って感じでした。謎の空白の1カ月で何があったか知りませんが、いっそ何だか面白くなって、それ以降はあまり気取らず、歯に衣着せずにやりとりができるようになった気がします。
「バファリンの君」は「美人で成績優秀で温厚篤実、運動部副部長」と、なかなか完成度の高い全部盛りラーメンのような少女だったようですが、これから振ろうとする女にそこまで言う(自慢する?)必要あるんでしょうか。そんなことを申し訳なさそうに語るあたりも、悪い意味でおもしれえ男、ネタの宝庫でした。
割と簡単に好きになったり嫌いになったり、その好き嫌いをLOVEと勘違いしたり、むしろLOVEの芽生えに気づかなかったり――と、中学生って面白い素材ですね。妄想が尽きません。
◇◇◇
作中出てくる商品は「バファリンルナJ」を中途半端に想定しました。
どう変名しようかと思い、とりあえずバファリンの語源を調べたら、「緩和するという意味の英単語Bufferと、Aspirinの末尾rinの合成」だと書いてありました(薬の名前の由来 - 健康豆知識|公益社団法人日本薬学会より)。
そこで、痛みを抑えるという意味も持つ「subdue」と「rin」を組み合わせ、「サブデュリン」という名前を勝手に作り出しました。調べた限りでは実在しない薬品名です。
で、思ったのですが…。この話の時代背景は現代なのですが、もとになったエピソードは1980年代で、「バファリンルナ」「バファリンルナJ」など存在しなかったのは当然として、そもそもバファリン自体が「15歳以上向け」の薬だったのではないかと。
当時から「小児用バファリン」というのもあったので、15歳未満はそれで補完されていたはずですが、「バファリンの君」が「何がしたいんだ君」に渡したバファリンって、成人用だったのか、小児用だったのか…?もう確認のしようもないのですが、少し気になります。
うちの親は大雑把だったので、どちらかといえば小柄だった私が中学生時代(12~15歳)は、「バファリンを1錠だけ飲みなさい」と言っていた気がします。その辺が落としどころですかね。
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