9 / 21
【後日談】自転車に乗って【エンディングα】
絶賛移動中!
しおりを挟む約束の土曜日は、気持ちよく晴れ上がってくれた。
3月だから風は少し冷たいけれど、手袋が要るほどでもない感じ。
寒いのよりは涼しいの、暑いのよりは暖かいのが気持ちいいという、よくいる人間にとっては、すごく過ごしやすい日だと思う。
「おはよう、レイ。今日はどこに行くの?」
「おはよう。着いてのお楽しみだよ。オレの後ろについてきて」
「うん」
「あ、でも疲れたらすぐに言ってね。すぐ止まるから」
「…うん?」
レイはまず、国道n号のパイパスの側道に出た。
そこは私たちの家があるあたりから何百メートルか東に行ったところだ。
「ちょっと遠回りになるけど、自転車で走りやすい道を通りたいから」ということなので、目指す場所は東ではなく西ということなのかな?
側道を南に300メートルくらい行った後、通称“高速インター線”と呼ばれる道路と交差したところで西に折れた。ここから1.5キロくらい行ったところに、春休みになったらみんなで行こうと言っているカルランがあって、さらに1キロ弱で高速の片山南インターチェンジだ――とレイが説明してくれたけど、どちらも素通りした。
カルランはともかく、そもそも自転車だから、それで高速に乗るわけにも行かないんだけどね。
「まつりちゃん、疲れてない?大丈夫?」
「うん、まだそんなに走っていないでしょ?平気だよ」
遠回りとはいえ、自歩道がたっぷりとってあって、走りやすい道を選んでくれているし、極端な坂道もないので、快適に走れている。
「ならよかったけど…この先、ちょっときつくなるかも。疲れたらいつでも言ってね」
「うん、ありがとう」
カレカノ関係になっても――というか、「なったからこそ」なのかもしれないけれど、レイは本当に私の顔色ばかりうかがっている。っていうと言い方悪いけれど、何をするにしても、私の快不快を細かく確認するのだ。
優しくて、気が利いて――というよりも、「わがまま一つ言ってくれない」なんて愚痴りたくなるほど、私のことばかり考えている。
そのレイが「一緒に遊びにいこう」と選んでくれたところなんだから、付き合いましょうとも!
◇◇◇
「この先きつくなる」の意味が少しわかったのは、広い通りから離れ、細い生活道路に差し掛かったときだ。
住宅街といっていいところなんだと思うけれど、家と家の間隔が、レイや私の家がある街区とは違ってやたら広いし、畑や田んぼも目立つ。家の敷地内に蔵のある家も多い。
そして、道路に意外なほどアップダウンがあるのだ。
細い木の板を何段も少しずつ斜めに傾けて組んで、一番上から車やボールを滑り落とさせるおもちゃがあるでしょ?アレに上りも加わった感じ。
そのせいでさすがに少し疲れたけど、黙々とレイについていったら、橋を渡った。
「あれ?この下って高速道路?」
「そう。いわゆる跨線橋ってやつだね」
「へえ…こんなところまで来ちゃったんだ」
土曜日で学校が休みなので、お友達同士らしい男の子たちが連れ立って歩いている。
小学校低学年か中学年って感じ。私とレイが一時的にあまり遊ばなくなった年頃だ。
コンビニや駄菓子屋が近くにあるわけでもなく、かといって、のびのび遊べる大自然の中ってわけでもない。こういうところの子たちって、どこで遊ぶんだろう?
「誰かの家に集まってゲームとかかな?」
レイが私の心を読んだみたいにそう言った。
「オレもあれくらいの年頃ってそんな感じだったよ。それか学校のグラウンドでサッカーしたり」
「ああ…なるほどね」
走っている間、車に一度も出くわさなかった。
もちろんというか、信号も一つもない。ついでにいうと、目印になりそうな施設もお店もない。
目的地が分からないけれど、よく道を覚えてるなあ――と思ったら、公民館らしき場所の前でレイが携帯を開いた。
携帯といっても、私が持っているようなガラケーではなく、いわゆるスマートフォンだ。
去年の夏、レイのお母さんがレイから携帯を取り上げたことがあったけど、あれを機にお父さんが「いっそのことスマホにするか?」と言って買ってくれたらしい。
慣れた様子でディスプレーに目を落として地図を確認し、「うん、間違いない。もう少し…あと4、500メートルで着く、かな」と言った。
その後、またちょっと入り組んだところに入り込んだので、私はちょっとだけ不安になったけれど、「あ、ここここ」と、車が数台停められる小さな駐車場に入り、その片隅の駐輪場に自転車を停めた。
「はーい、おつかれさま。到着だよ」
「え、ここって…」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる