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【後日談】何を見ても何かを思い出す
永遠のライバル?
しおりを挟む「お茶でいいよな?」
「あ、ありがと」
日高君は私に座って待っているように言うと、近くの自販機で飲み物を買って渡してきた。
自分の飲み物をひと口飲んでから、前を向いたまま、「お前って考えてることがすぐ顔に出るんだよな…」と言った。
「あ…ん…ごめん」
「何に対する謝罪だよ」
「だって…」
「じゃ、こう聞けばいいか?『斉木の小さい頃の話、聞かせてよ』」
「え…?」
なるほど、私の考えていたことが全部読まれていたことはそれで分かった。
でも、どうしてそういう言い方をするのか分からず、私は返事に詰まった。
「あの完璧超人だって、小さい頃は少しは間抜けエピソードとかあるだろ?」
「ん~…そりゃ、なくはないけど…そんなこと聞いてどうするの?」
「俺、お前と知り合ってからまだ1年も経ってないから、お前が小さい頃の話とか聞きたいんだよ」
「あ。だから――おもちゃ売り場か」
「そりゃ斉木の話なんて、本音を言えば愉快じゃないけどさ。まつりが俺に遠慮して何も話せないみたいなのはもっと嫌なんだよ」
そう言って、私の方をいつになく真剣な顔で見た。
「ごめん…ね…」
私はこんな気遣いをしてくれる人の申し込みを、「断るのが面倒くさい」という理由で受け入れてしまったのか。
さすがに胸が痛むけれど、これからだって誠実に向き合うことはできるはずだ。
私にも、日高君のことをもっと教えて。前住んでいた町のこととか。
話して辛くなるようなことなら聞かないけど、何でも話してほしい。
――私も正直に素直に、思いのたけを言ってみた。
「やっぱ――お前っていいな。付き合えてラッキーだよ」
日高君は照れくさそうにそう言って、少しずついろいろ話してくれた。
思ったとおり、やんちゃそうなエピソードが多い。
「俺がもしお前の幼馴染だったら、意識し過ぎてついついいじめちゃったろうなあ。斉木みたいにはいかないよ」
と笑って言った。
◇◇◇
さて、初売りのデートの結果だけど、正直目移りしちゃって、「見るだけ」で終わっちゃった気がする。
変わった雑貨がたくさん売られているバラエティショップで1,000円の福袋を一つずつと、おもちゃ屋さんであるものを買ったくらい。
でも、見ているだけでも楽しかったし、何よりいつもよりもいろいろな話ができたのはよかった。
「何か懐があったかいと、かえって金使うの惜しくなるよなあ」
「それわかるー。あんまりないときの方がぱぱっと出しちゃうよね」
買い物の後、たまたまフードコートで空いている席が見つかったので、アイスクリームを食べた。
私は気分でチョコミント、日高君はストロベリー&バナナを選んだ。
そういえば、うちのママがつくったバナナマフィンもおいしそうに食べていたっけ。
「日高君ってバナナが好きなの?」と聞いたら、「特にバナナがっていうより、こういうときってフルーツの味のをなーんか選んじゃうんだよ」と言っていた。
そこで、喜多川君のお店で季節限定で出ているフルーツタルトがオススメだという話になって、話題が広がったり、思わぬ方向に転がったり。
“会話”って面白い。
付き合いが浅いと初耳情報が多いというのもあるけど、掘り下げ方次第でいくらでもおしゃべりできる。
長い付き合いだと、同じ話題を何度も出してしまうこともあって、それを楽しむこともある。
日高君とも、ずっとそんなふうにお付き合いし続けていけるかな。
◇◇◇
おもちゃ屋さんでは、「シルバニアンかぞく ネズミのカップル」というセットがあったので、それを折半でお金を出して買って、1体ずつ持ち帰った。
それぞれとてもオシャレで凝った服を着ていて、花束やバッグ、プレゼントみたいな小物もついている。
手をつなぐこともできるので、私たちの「おうちデート」のときは、この子たちもデートさせようねと約束した。
そもそもこれは日高君の提案で買うことになったんだけど、「これぐらいのことができなきゃ、斉木とは張り合えないからな」って挑戦的な笑顔を見せられた。
【『何を見ても何かを思い出す』 了】
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