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第3話 友人カップル【私】
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最低ヒロインのお節介
◇◇◇
一緒に旅行に行った友達が、帰りの電車の中で元気がなかった。
友達のカレシはターミナル駅から電車で二つのところに帰るし、私のカレシは駅の近くに住んでいたから、私たちは「寄り道してくね」って言って、そこで男子組と別れた。
「ハンバーガー屋さんでシェークでも飲もうか?」って言ったら、「人がいないところで話を聞いてほしい」と言われて、駅前のデパートの裏のポケットパークで話した。
「私――エッチできなかったんだ…」
「そうなの?」
「うん。彼はちゃんと避妊具用意してくれたし、私もそのつもりだったのに、土壇場で怖くなっちゃって…」
「2晩とも?」
「…うん」
「そっか…」
「どうしよう?私のこと嫌いになったりしないかな?呆れてないかな?」
眉を八の字にする勢いで困った顔をして、目は半泣きになってる。
何だかかわいそうになって、無責任なことを言った。
「そんなことで嫌いになる人には見えないけど」
「そう、かな」
「うん(根拠は全くないけど、まあいいか…)誠実そうだし」
「ありがと、話聞いてくれて」
大事な友達に元気を出してほしい、そのときは、ただそれだけ思った。
◇◇◇
私のカレシの方は、案の定、友達のカレシから悩みを打ち明けられたらしい。
「俺に経験がないから、カノジョをリラックスさせてやれなかった」って言ったんだって。いいカレシじゃん。
私はそこでお節介心とスケベ心が湧いて、「友達のカレシ」とこっそり会うことにした。
電話して、「カノジョから、あなたに嫌われたんじゃないかと相談を受けたんだけど」と言いつつ、「カノジョには内緒だよ」と何度も言った。
翌日は家に誰もいなくて、カノジョと会う約束もないというから、「じゃ、私、お邪魔してもいいかな?」ってのこのこ出向いていった。
多分だけど、友達のカレシ、その段階でかなり期待したと思う。
いや、電話の段階で、かな。「家族いない」「カノジョとの約束もない」なんて、言う必要ないじゃん。相談に乗るにしても、外で会えばいいんだから。
最寄り駅まで迎えに来てもらって、30分後には友達のカレの部屋で裸になっていた。
お兄ちゃんが「させて」くれないから、私には実はフェラチオの経験がないけど、調子に乗った友達のカレシは「ちんこ…なめて」とか言った。私がよほど経験豊富に見えたのだろう。
「ほら、そういうのを性急に頼むのは、嫌われる原因だよ!」
「そ、そうか?」
「うん、女の子をどれだけ喜ばせられるかだけ、とりあえず考えなよ」
全ての青少年は、本命カノジョとの初体験の前に年上の女性の手ほどきとか受けるべきだと、私は本気で思うわ。
兄のとんでもない元カテキョの例もあるし、需給のバランスは結構取れている気がするんだけど。
(セックスの場合、需要と供給の関係がよく分かんないけどね)
友達のカレシを受け入れるとき、私は念を押した。
「私のことは今日別れる予定のセックスフレンドぐらいに思って。好きになっちゃダメだよ」
「分かってる…よ…」
カレは目を閉じて、友達の名前を連呼しながら私を抱いたけど、そのうち私の名前に切り替えて、「好き…だ…」と言いやがった。
「アウト!私もう帰るわ!」
「え、そんな…」
「カノジョとセックスできるように練習台になってるのに、私の名前呼んじゃダメじゃん」
「だって…」
どちらかというと、いつも自信たっぷりなタイプなのに、えらく気弱な表情を見せるじゃない。
「私にもカレシいるし、そういうの困る。約束守ってくれないなら帰る」
「分かったよ…だから、続き…」
「もおっ」
私のカレシより大柄で、ベッドに組み敷かれたときはちょっとドキッとした。
セックス自体もカレシより筋がよさそう。
友達は本当に怖かっただけなんだろう。初めてじゃ仕方ないか。
私に深いキスをして(これも許可した覚えはないのに勝手にされた)、また体中を愛撫して、コンドームをつけ直して、ぐっと入ってきた。
これは好感触。今までシた中では、兄の次に気持ちいいかも。
回復が早いから、短いスパンで3回やった。
服を着ながら、「すごくよかったから自信持ちなよ。カノジョもいつか受け入れてくれると思うよ」と言って、駅までの見送りは辞退して帰宅した。
◇◇◇
それからしばらくして、2人は別れた。
私と友達の間にも、私のカレシと友達のカレシの間にも、特に変化はなかったので、私とは無関係に別れたと思いたいんだけど、「ほかに好きな人ができたんだって。私も会うたびアレばっかりでちょっと嫌になってたし、まあいいかなって」と言っていたのが気がかりだ。
「カレシは具体的に誰が好きって言わなかったんだね?」
「うん。聞いたけど、君の知らない子だからって」
「そうか。縁もいろいろだしね。きっとまたいい人見つかるよ」
「そう、だよね。あんなスケベはもう嫌だなあ~」
私は多分悪くない。別れるべくして別れる2人だったんだ…と、自分に都合のいい材料だけ取り上げて、無理やり思い込んだ。
実際、具体的にアプローチされたわけでもないから、寝取ったとか言われたら心外だよ。
もし2人が別れた原因が私だったとしても、私なんかを好きになった「友達の元カレ」が悪い。それだけだ。
体と心は一致することがあるってだけで、バラバラに動くことも多いと思う。
私は優しいカレシが好きで、セックスが相変わらず下手なのにも「やれやれ」って感じて慣れてきた。一方で、兄との関係にはそこそこのめり込んでいる。
心は(一応)カレシの、体は兄を初めとする「セックスする可能性」のある男性のもの。
テニスとか柔道とか、個人で取り組むスポーツで、「強そうな相手とやってみたい」って思うのと同じような気持ちだ。普通、対戦相手に心までは捧げないでしょ?知らないけど。
3回セックスしたぐらいで、軽々しく好きにならないでほしい。
――気持ちよかったのは認めるけど。
こういうことがあるから、兄以外の人との関係もやめられないのよ。
◇◇◇
一緒に旅行に行った友達が、帰りの電車の中で元気がなかった。
友達のカレシはターミナル駅から電車で二つのところに帰るし、私のカレシは駅の近くに住んでいたから、私たちは「寄り道してくね」って言って、そこで男子組と別れた。
「ハンバーガー屋さんでシェークでも飲もうか?」って言ったら、「人がいないところで話を聞いてほしい」と言われて、駅前のデパートの裏のポケットパークで話した。
「私――エッチできなかったんだ…」
「そうなの?」
「うん。彼はちゃんと避妊具用意してくれたし、私もそのつもりだったのに、土壇場で怖くなっちゃって…」
「2晩とも?」
「…うん」
「そっか…」
「どうしよう?私のこと嫌いになったりしないかな?呆れてないかな?」
眉を八の字にする勢いで困った顔をして、目は半泣きになってる。
何だかかわいそうになって、無責任なことを言った。
「そんなことで嫌いになる人には見えないけど」
「そう、かな」
「うん(根拠は全くないけど、まあいいか…)誠実そうだし」
「ありがと、話聞いてくれて」
大事な友達に元気を出してほしい、そのときは、ただそれだけ思った。
◇◇◇
私のカレシの方は、案の定、友達のカレシから悩みを打ち明けられたらしい。
「俺に経験がないから、カノジョをリラックスさせてやれなかった」って言ったんだって。いいカレシじゃん。
私はそこでお節介心とスケベ心が湧いて、「友達のカレシ」とこっそり会うことにした。
電話して、「カノジョから、あなたに嫌われたんじゃないかと相談を受けたんだけど」と言いつつ、「カノジョには内緒だよ」と何度も言った。
翌日は家に誰もいなくて、カノジョと会う約束もないというから、「じゃ、私、お邪魔してもいいかな?」ってのこのこ出向いていった。
多分だけど、友達のカレシ、その段階でかなり期待したと思う。
いや、電話の段階で、かな。「家族いない」「カノジョとの約束もない」なんて、言う必要ないじゃん。相談に乗るにしても、外で会えばいいんだから。
最寄り駅まで迎えに来てもらって、30分後には友達のカレの部屋で裸になっていた。
お兄ちゃんが「させて」くれないから、私には実はフェラチオの経験がないけど、調子に乗った友達のカレシは「ちんこ…なめて」とか言った。私がよほど経験豊富に見えたのだろう。
「ほら、そういうのを性急に頼むのは、嫌われる原因だよ!」
「そ、そうか?」
「うん、女の子をどれだけ喜ばせられるかだけ、とりあえず考えなよ」
全ての青少年は、本命カノジョとの初体験の前に年上の女性の手ほどきとか受けるべきだと、私は本気で思うわ。
兄のとんでもない元カテキョの例もあるし、需給のバランスは結構取れている気がするんだけど。
(セックスの場合、需要と供給の関係がよく分かんないけどね)
友達のカレシを受け入れるとき、私は念を押した。
「私のことは今日別れる予定のセックスフレンドぐらいに思って。好きになっちゃダメだよ」
「分かってる…よ…」
カレは目を閉じて、友達の名前を連呼しながら私を抱いたけど、そのうち私の名前に切り替えて、「好き…だ…」と言いやがった。
「アウト!私もう帰るわ!」
「え、そんな…」
「カノジョとセックスできるように練習台になってるのに、私の名前呼んじゃダメじゃん」
「だって…」
どちらかというと、いつも自信たっぷりなタイプなのに、えらく気弱な表情を見せるじゃない。
「私にもカレシいるし、そういうの困る。約束守ってくれないなら帰る」
「分かったよ…だから、続き…」
「もおっ」
私のカレシより大柄で、ベッドに組み敷かれたときはちょっとドキッとした。
セックス自体もカレシより筋がよさそう。
友達は本当に怖かっただけなんだろう。初めてじゃ仕方ないか。
私に深いキスをして(これも許可した覚えはないのに勝手にされた)、また体中を愛撫して、コンドームをつけ直して、ぐっと入ってきた。
これは好感触。今までシた中では、兄の次に気持ちいいかも。
回復が早いから、短いスパンで3回やった。
服を着ながら、「すごくよかったから自信持ちなよ。カノジョもいつか受け入れてくれると思うよ」と言って、駅までの見送りは辞退して帰宅した。
◇◇◇
それからしばらくして、2人は別れた。
私と友達の間にも、私のカレシと友達のカレシの間にも、特に変化はなかったので、私とは無関係に別れたと思いたいんだけど、「ほかに好きな人ができたんだって。私も会うたびアレばっかりでちょっと嫌になってたし、まあいいかなって」と言っていたのが気がかりだ。
「カレシは具体的に誰が好きって言わなかったんだね?」
「うん。聞いたけど、君の知らない子だからって」
「そうか。縁もいろいろだしね。きっとまたいい人見つかるよ」
「そう、だよね。あんなスケベはもう嫌だなあ~」
私は多分悪くない。別れるべくして別れる2人だったんだ…と、自分に都合のいい材料だけ取り上げて、無理やり思い込んだ。
実際、具体的にアプローチされたわけでもないから、寝取ったとか言われたら心外だよ。
もし2人が別れた原因が私だったとしても、私なんかを好きになった「友達の元カレ」が悪い。それだけだ。
体と心は一致することがあるってだけで、バラバラに動くことも多いと思う。
私は優しいカレシが好きで、セックスが相変わらず下手なのにも「やれやれ」って感じて慣れてきた。一方で、兄との関係にはそこそこのめり込んでいる。
心は(一応)カレシの、体は兄を初めとする「セックスする可能性」のある男性のもの。
テニスとか柔道とか、個人で取り組むスポーツで、「強そうな相手とやってみたい」って思うのと同じような気持ちだ。普通、対戦相手に心までは捧げないでしょ?知らないけど。
3回セックスしたぐらいで、軽々しく好きにならないでほしい。
――気持ちよかったのは認めるけど。
こういうことがあるから、兄以外の人との関係もやめられないのよ。
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