小手先の作業

あおみなみ

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世界一気まずい「かぶり」

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 私が住む街は、80年代に人口が30万人に達しました。
 小さいわけではないものの、大都市というわけでもありませんし、学校の数も限られます。
 すると、ひょんなところでひょんな人とご縁があったりもします。

 例えば、私の兄(公立男子校)の元担任教師の娘さんは、私(公立女子校)と1・2年で同じクラスでした。
 それとは関係なく、その娘さんとはなぜか「授業中のペンフレンド」みたいなことをやっていたのですが、これは後に小説のネタにするかもしれないので、ここでは詳記しません。

 また、元担任は異動先(隣の市の女子校)でバレーボール部の顧問になりました。
 そのとき部に所属していた生徒の1人が、卒業後に私の母の職場に来たそうで、話をすり合わせているうちに「あ、ひょっとしてT先生のこと?」と気付いたとか。

 母にとっては「少し訛りのある厳格な理科教師」程度の認識で、とはいえ、少なくとも悪い印象は皆無でした。
 しかし、くだんの職場の若い子いわく「部活中に体をベタベタ触るエロじじい。大嫌い!」だったとか。

 高校卒業と同時に家を出た私は、それらの話を全部、筆まめだった母からの手紙で知りました。
 「若い子はすぐ大げさに言うから、話半分で聞いている」とのこと。
 母、世が世ならフェミニスト界隈の人々に「名誉男子」認定されそうな物言いだな。

 ほかにも、高校でこれまた理科担当の先生が、中学校の先輩のお父様だった、とか。
 その先輩は創作系の必修クラブ(**)でご一緒させてもらっていたので、作文やエッセイで「うちの父はほら吹き」と、何だかうれし気に書いたものを何本か読んでいたため、私の頭の中では「ほら吹き先生」という固定イメージができてしまいました。
 おかげで授業が頭に入ってきませんでした。私の理科の成績が振るわなかったのはそのせいです(と、責任転嫁に使わせていただきましょう)。


**
現代の小中高校にはないらしい、単位の一部として認められる「クラブ活動」。
1校時分の時間(45分~50分)という短時間の活動でした。
これを読んでいて、必修クラブの経験が全くないという年代の方はあまりいないかもしれませんが、「課外クラブ(いわゆる部活)が運動系の人は文化系クラブに入ること」とか、謎ルールありませんでしたか?
**


 少し間を置いて。
 5歳下の弟は、隣市の共学高校に入学しました。
 私は同じ年に就職し、母との「文通」は続けていました。
 そして「M先生が弟の担任だった」との一文が。Mは私の高校3年時の担任でした。

 私たちの姓がありふれたものだったら、しらばくれていることもできたでしょう。
 正直言って熱心な先生ではなかったので、家族構成やらなんやらを読み込み、記憶していることはなかったでしょうから。
 しかし、市内に数軒という比較的珍しい姓が災いし、向こうから「ひょっとして…」と話を振られ、否定するわけにもいかず、以来「姉ちゃんはああだった、こうだった」とウザ絡みをされたようです。

 弟よ、(私のせいではないけど)済まねえな。

 担任ですから、三者面談というのも時々あったりします。
 一番最初の面談のとき、母は仕事の都合で行けず、父が対応したそうな。
 まだ1年生で、進路がどうのという具体的な話より、学校や家庭での様子を話す程度だったし、父はそういうことが「嫌いじゃない」方だったので、割と張り切っていたと思います。

 「どうぞ」と促されて父が教室に入ると、そこにはピンク×グレーのレジメンタルタイを着けたMがいました。
 …などと書くと、ちょっとオシャレなおじさんを想像するのですが、父はそれが「量販店の紳士服売り場で特価(値段は伏せます)」だったことを一目で見破りました。

 何のことはない、父も全く同じものを着けていたからです。
 
 お互いがお互いのネクタイから目を逸らし、無難な話題でさくっと短時間で終了した…とか何とか。
 見せてもらったら、ピンクといってもスモーキーな落ち着いた色だし、そう悪いものにも思えなかったけど、あまり売れてなかったんでしょうか。
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