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第13章 立て続けの12月
まつりの困惑
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何かと気ぜわしい12月の幼馴染とその仲間たち
***
「あの…ごめん。でも、場の勢いで言ったわけじゃないんだ」
「う、うん…」
「昔から…そう、昔から。幼稚園の頃からだから…」
思いがけず告白されて、私が答えに詰まっていると、レイがそう付け加えた。
『好きだ。付き合ってくれ』
『私も好き。よろしくお願いします』
レイのことを、そこまで見くびりたくはないんだけど、たぶん彼はこの展開しか想像していなかったのではないか。
自分に告白されて、なびかないとか、「考えさせて」って言うとか、固まるとか、そんな女がこの世にいることを、想像したことすらない気がする。
すべての中学生男子から「もげろ(何が?)」と言われそうな想像力の欠如。
告白された当事者の女子中学生である私としては、とにかく反応しなければならない。
「あの…レイ。1つ聞いていい?」
「なに?」
「レイって…女の子に告白されたことはある?」
「ああ…一応」
まあ、そうだろう。想像どおりだ。
「じゃ、悪いけどもう1つ。女の子に告白したこと、ある?」
「ないよ!これが初めてだよ。俺はまつりちゃん以外の女子に興味すら持ったことないから」
ああっ、あまりにもまぶしい一言。
「あのね、少し冷静に聞いてほしいんだけど」
「…なに?」
「私もレイのこと大好きだよ。小さい頃から好きだったし、レイに好きって言ってもらえて本当にうれしい」
「それじゃ…」
「でもね、『なんで私なの?』とも思うの」
「どういうこと?」
「レイって昔からみんなに好かれてたけど、いつでも私を優先してきたよね?」
「そうかな。そう見えるならそうだったのかも」
「それこそ幼稚園の頃、お砂場遊びのときとか『まつりちゃんと遊ぶから、ミキちゃん(仮名)とは遊ばない』みたいに断ってたことがあったじゃない?」
「そうだっけ?よく覚えてない」
「よくわかんないけど、レイはほかの人を排除するところがあったんだよね」
「うん…」
「それでもレイは人気者だったけど」
「うん、それで?」
レイの表情に、うっすらだけど苛立ちが見え始めた。
「そうやって退けてきた女の子たちの中に、実は自分にとって大事な人がいたかも――って思わない?」
レイはそう言われて、考える素振りすら見せず即答した。
「そう思ってたら告白なんかしない。オレは今も昔もまつりちゃんだけだ」
「あ…の…」
「それに異性っていうなら南原さんだって大切な友人だけど、まつりちゃんとは全然違うし」
話を分かりやすくしようと思って、余計にわかりにくくしてどうすんだよ、私。
◇◇◇
「ええと、じゃ、これから先の話しよう」
「これから先?」
「多分私はレイとは同じ高校には行けないと思う」
「え…あ、うん」
「レイは多分、片山中央に行くよね?」
「行きたいとは思ってるよ」
「はい、そこでとっても素敵な女の子に出会って、その子に恋をしたとしましょう」
「いや、しないけど」
勝手に話終わらすな!
「仮定の話だからまず聞いて」
「うん、ごめん」
「そんな気持ちになったとき、私と付き合っていたら、『この女邪魔だな』って思うでしょ」
「じゃ、オレは中央行かない。まつりちゃんと同じ学校に行って、ずっとそばにいる」
「ちょっと…私が女子高に行きたいって言ったらどうするつもり?」
「その学校には男いないってことでしょ。なら、むしろオレは安心だな」
根本的に話が通じない。
どうして自分の心は絶対に変わらないって、ここまで清々しく言い切れるの?
お母さんの件で「心だけは自分ではどうにもできない」と言ったその口で。
「あのね、私は辛いんだ。レイは今は私が好きでも、そのうち違う人を好きになるかもしれない。そしてレイに好かれた人は、きっとレイを好きになる」
「そんなこと…」
「そしたら私1人要らない子じゃん。それ考えただけで辛いんだ。それはレイに告白されたから…」
「…じゃ、日高に告白されてたら、辛くなかった?」
「え?」
「あいつもまつりちゃんのことが好きだよ。見てれば分かるでしょ?」
「ええと…」
「日高だって、今日まつりちゃんに告白して、明日には別な子を好きになっているかもしれないよ」
「私は…私が日高君をそんなふうに見ていないもの」
「仮定の話だよ。もしまつりちゃんも日高のことが好きで、告白されたらどんな気持ちになると思う?普通にうれしいって受け入れるんじゃない?」
「えーと…」
「『明日には心変わりするかもしれないから嫌』なんて断る?」
「それは…」
「即答できないの?オレがこれだけ真剣に言っても、まつりちゃんはそんな程度にしか受け止めてくれないんだね」
レイは「お邪魔しました」と言いながら、私の部屋から出ていった。
どうしよう。傷心のレイをさらに傷つけてしまった――みたいだ。
でも、どうわびたらいいのかのすら分からない。
***
「あの…ごめん。でも、場の勢いで言ったわけじゃないんだ」
「う、うん…」
「昔から…そう、昔から。幼稚園の頃からだから…」
思いがけず告白されて、私が答えに詰まっていると、レイがそう付け加えた。
『好きだ。付き合ってくれ』
『私も好き。よろしくお願いします』
レイのことを、そこまで見くびりたくはないんだけど、たぶん彼はこの展開しか想像していなかったのではないか。
自分に告白されて、なびかないとか、「考えさせて」って言うとか、固まるとか、そんな女がこの世にいることを、想像したことすらない気がする。
すべての中学生男子から「もげろ(何が?)」と言われそうな想像力の欠如。
告白された当事者の女子中学生である私としては、とにかく反応しなければならない。
「あの…レイ。1つ聞いていい?」
「なに?」
「レイって…女の子に告白されたことはある?」
「ああ…一応」
まあ、そうだろう。想像どおりだ。
「じゃ、悪いけどもう1つ。女の子に告白したこと、ある?」
「ないよ!これが初めてだよ。俺はまつりちゃん以外の女子に興味すら持ったことないから」
ああっ、あまりにもまぶしい一言。
「あのね、少し冷静に聞いてほしいんだけど」
「…なに?」
「私もレイのこと大好きだよ。小さい頃から好きだったし、レイに好きって言ってもらえて本当にうれしい」
「それじゃ…」
「でもね、『なんで私なの?』とも思うの」
「どういうこと?」
「レイって昔からみんなに好かれてたけど、いつでも私を優先してきたよね?」
「そうかな。そう見えるならそうだったのかも」
「それこそ幼稚園の頃、お砂場遊びのときとか『まつりちゃんと遊ぶから、ミキちゃん(仮名)とは遊ばない』みたいに断ってたことがあったじゃない?」
「そうだっけ?よく覚えてない」
「よくわかんないけど、レイはほかの人を排除するところがあったんだよね」
「うん…」
「それでもレイは人気者だったけど」
「うん、それで?」
レイの表情に、うっすらだけど苛立ちが見え始めた。
「そうやって退けてきた女の子たちの中に、実は自分にとって大事な人がいたかも――って思わない?」
レイはそう言われて、考える素振りすら見せず即答した。
「そう思ってたら告白なんかしない。オレは今も昔もまつりちゃんだけだ」
「あ…の…」
「それに異性っていうなら南原さんだって大切な友人だけど、まつりちゃんとは全然違うし」
話を分かりやすくしようと思って、余計にわかりにくくしてどうすんだよ、私。
◇◇◇
「ええと、じゃ、これから先の話しよう」
「これから先?」
「多分私はレイとは同じ高校には行けないと思う」
「え…あ、うん」
「レイは多分、片山中央に行くよね?」
「行きたいとは思ってるよ」
「はい、そこでとっても素敵な女の子に出会って、その子に恋をしたとしましょう」
「いや、しないけど」
勝手に話終わらすな!
「仮定の話だからまず聞いて」
「うん、ごめん」
「そんな気持ちになったとき、私と付き合っていたら、『この女邪魔だな』って思うでしょ」
「じゃ、オレは中央行かない。まつりちゃんと同じ学校に行って、ずっとそばにいる」
「ちょっと…私が女子高に行きたいって言ったらどうするつもり?」
「その学校には男いないってことでしょ。なら、むしろオレは安心だな」
根本的に話が通じない。
どうして自分の心は絶対に変わらないって、ここまで清々しく言い切れるの?
お母さんの件で「心だけは自分ではどうにもできない」と言ったその口で。
「あのね、私は辛いんだ。レイは今は私が好きでも、そのうち違う人を好きになるかもしれない。そしてレイに好かれた人は、きっとレイを好きになる」
「そんなこと…」
「そしたら私1人要らない子じゃん。それ考えただけで辛いんだ。それはレイに告白されたから…」
「…じゃ、日高に告白されてたら、辛くなかった?」
「え?」
「あいつもまつりちゃんのことが好きだよ。見てれば分かるでしょ?」
「ええと…」
「日高だって、今日まつりちゃんに告白して、明日には別な子を好きになっているかもしれないよ」
「私は…私が日高君をそんなふうに見ていないもの」
「仮定の話だよ。もしまつりちゃんも日高のことが好きで、告白されたらどんな気持ちになると思う?普通にうれしいって受け入れるんじゃない?」
「えーと…」
「『明日には心変わりするかもしれないから嫌』なんて断る?」
「それは…」
「即答できないの?オレがこれだけ真剣に言っても、まつりちゃんはそんな程度にしか受け止めてくれないんだね」
レイは「お邪魔しました」と言いながら、私の部屋から出ていった。
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