初恋ガチ勢

あおみなみ

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第20章 好きってそういうことじゃないですか?【メグと大輔】

メグの母親

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頭のいい人には恋ができない。恋は盲目である。
寺田寅彦『科学者とあたま』

◇◇◇

終始、大倉大輔視点のお話です。

◇◇◇

 俺は部活の休養日、朝早くに家を出た。
 下手したら、いつもの朝練よりも早かったかもしれない――と思ってしまうほど、気はいていた。
 目的地が自宅から近いとはいえない距離ということもあるが、だからだ。

 電車を乗り換え、英明大の最寄り駅を降り、ナビを頼りに歩き出した。
 英明の生徒や学生の大半が通学に使う、「英明通り」と呼ばれるメインの通りではなく、途中で狭い生活道路のようなところに入っていく。
 店の大きさも看板も控えめなので、気を付けて見なければ見落としていたかもしれない。

 カフェ「さくら」。メグの母親がやっている……らしい小さな店だ。
 小ぢんまりとした白い壁と薄い緑色の屋根が特徴的な建物は2階建て。
 ということは、ひょっとしてあの2階にメグが……などと思いつつ窓をじっと見つめたが、開く様子はない。
 
 仕方なくというか、最初からそうするつもりではあったのだが、とりあえず店のドアを開けた。

「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」

 出迎えてくれたのは、確かにあのインタビュー記事の写真の女性だった。
 声は少し低めだが、メグの声に似ている気がした。

「あの、メグは…」
「え?」

 女性は薄い笑顔は崩さなかったものの、それでも怪訝けげんな表情も隠しきれていない感じでそう言った。
 さすがにぶしつけ過ぎたか。

「あ、と、すみません。芽久美さんはいますか?」
「ええと――あなたは?」

 やはり警戒されている。無理もないか。

「俺この間、新宿のリブル森林堂で彼女に会って…」
「ああ。手を貸してくださったんですってね。聞いてますよ」

 店長さんの表情が途端に柔らかくなり、改めて軽く頭を下げられ、礼を言われた。
 メグは母親に、ちゃんと話してくれていたのか。
 手を貸して、ということは、ナンパ云々には触れていないのかもしれないが。

 メグのことを聞こうとしたタイミングで、もう1人来客があった。

「大倉…来たのか」
「檜さん…おはようございます」
「あ、ああ、おはよう」

 檜さんがこの店の常連って本当だったようだな。まさか会うとは思わなかった。
 檜さんはもともと表情が乏しいというか、顔に出にくい人ではあるのだが、そもそも俺がいつかここに来るだろうと、きっと予想していたのだろう。

「あら、ともお知り合い?」
「あ、俺は玉成のテニス部なので…」
「彼は我がライバル校の次期部長なんです」

 檜さんはこの間、この店長を「チヅルさん」と呼んでいた。
 それはいいが、なんで店長まで檜さんを下の名前で呼ぶんだ?

 いや、もちろん店長の方が年上だろうから、年下を名前で呼ぶのはおかしくないのか…?
 訳が分からない。
 この人たちは一体どんな関係なんだ?
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