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第2章 変てこハネムーン
新婚旅行
しおりを挟む新婚旅行は九州に行った。
九州を旅行することじたいは別にいいんだけど、高校の修学旅行は沖縄だったし、大学の卒業旅行はハワイだったので、それよりも近距離って思うと、ちょっとなあって感じ。
でも、「君1年しか働いてなくて、貯金もほとんどないじゃない?お金は全部僕の方でもつんだよ?文句を言えた義理かな?」という正論で、不満を封じられた。
あと「ハネムーンはどこに行くかじゃなくて、愛する人と2人だけっていうのが醍醐味なんだよ」とも言った
+++
1泊目だけは大きな町のビジネスホテルに泊まり、あとは彼の親戚の家3軒に1泊ずつした。
ビジホってのがまた微妙だけど、2人きりだし、抱きしめられて、
「君を手に入れるまで、本当に苦労したなあ」
ってしみじみ言われ、まんざらでもなかった。
その後の言葉がなければ、さらによかったんだけど…。
「邪魔なやつが多過ぎて、本当に苦労した」
「邪魔?」
「高校時代いたじゃない。脳筋バカとか、陰気なガリ勉とか、ヤンキーとか」
「え…」
「いろいろ工作して、そいつらが君に近づかないように頑張ったんだよね。
不登校と自主退学は大成功だったかな。
脳筋も君に絡んでこなくなったみたいだし、結果は上々だよね」
「冗談…だよね?」
探るように聞いたら、一瞬の間の後、
「もちろん冗談だよ。そんな卑怯なこと、するわけないじゃない?」
って言いながらキスしてくれたので、(そんな卑怯なこと?工作?)って少し気になったけど、彼を信じることにした。
「僕はね、一度手にしたものは絶対に手放さない主義なんだ」
こういう言葉も、新婚だし当たり前のことだろうと思っていた。
+++
親戚の家と家の移動や観光地へは、親戚の人たちが車を出してくれた。
それぞれの間が大した距離ではなかったかもしれないけど、県をまたぐところもあったし、最後の家のおばあさんには、
「人の家に泊まるときは、付け届けの1つも持ってくるもんだ。気の利かない嫁だね」
と私が叱られた。
気が利かないことは認めるが、もともと彼が独断で決めた、本意ではない民泊なんだけど…私が叱られるのは、「嫁」だからという理由?
「おばあちゃん、ごめん。こいつまだ若いから知恵が足りないんだ。そうやっていろいろ教えてあげて」
って彼が私をかばって?言った。
“おばあちゃん”は、
「あんたは優しいね。そんなんじゃ尻に敷かれるよ」
と笑って許してくれた。
「おばあちゃんは厳しいけど根は優しい人なんだ」
だそうなので、“許してくれた”ってことでいいんだと思う。
親戚の家にいる間は、さすがにエッチはできない。正直ちょっとがっかりだった。
車で移動している間は話すこともなくて気まずかった。
一つだけ確かなのは、どの家でも歓迎されていなかったことだけ。彼はともかく、私はただの面倒な来客だったんだろう。
そりゃそうだよね。「顔見せも兼ねて」って言われて納得するしかなかったけど、新婚旅行の夫婦を普通の家に泊めるなんてそうそうないことだろうし、気も使ったろう。
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