幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん

文字の大きさ
4 / 7
第1章

事情を知った主人公

しおりを挟む
「魅了のスキルで操られていた!?そんなわけありません!だってアイツらはそんなこと一言も――」

「事実です。彼女らは勇者のスキルで操られていました。勇者が命を落とすまでの間、ずっと」

 男が何を言っているのか理解できない。だってそれがもし事実なら、アイツらは俺の事を……なのに、俺は……!

「今アイツらは何処に!?」

 俺は身を乗り出して質問する。

「彼女達は今、東のドラゴンの討伐編向かいました。別に今じゃなくてもいずれ時が来れば進軍すると何度も説得はしたのですが、僕達は人類の脅威をぶっ潰すさなきゃ行けないんだ!と言って聞かず、小規模間の軍隊と共にドラゴンの討伐に向かわれました」

 俺のせいだ。俺があんなことを言わなければ……

「お願いがあります。彼女らが帰ってき次第、俺を彼女らに合わせてください。お願いします」

 俺は男に頭を下げた。洗脳されていたいたと言うのなら、彼女達のあの言葉が本心からでは無いのなら。もしかしたらやり直せるかもしれない。
 彼女達はあんなことを言ってしまった俺を許してくれるだろうか?
 でも、あの日々を取り戻すためなら、俺はなんだってする。

「……!わかりました。彼女らが帰ってきたらすぐにお知らせしに参ります」

 男はそう言うと、俺の家を出ていった。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 あれから3ヶ月程が過ぎた頃、あの男が再び俺の前に現れた。

 そう。彼女達が帰って来たのだ。

 俺はその男に運んでもらい、王宮に運んでもらった。

 久しぶりにみたグレイアとシスタはボロボロだった。

 グレイアは片腕がなくなっており、シスタは俺と同じように片目に眼帯をつけている。おそらくは目が……。

 何をしているのだろうか。

「次の標的は西のバンパイアです。すぐに準備に取り掛かりましょう」

 シスタの声が聞こえてきた。

 その体でまだ戦うつもりなのか?
 あの時軽はずみにあんなことを言わなければ良かったな。

「グレイア!シスタ!」

 俺は二人の名前を叫ぶ。
 車椅子で出せる全速力で彼女達に近ずいて行く。

「……アルフ……さん?」

「嘘よ……なんで……」

 二人は信じられないと言うような顔を作り、驚きの表情を見せる。

「どうして……。どうしてのスキルのことを真っ先に言ってくれなかったんだよ!それがわかってれば……俺は……」

 俺は我慢出来ずに涙を流す。

「ごめん……。お前らのことを何も知らずに、あんなこと言って……」

「謝らないで!!全部……全部アタシ達が悪かったの。アルフは何もわるくない!」

「そうです!貴方が謝る必要なんて全くないんです!!」

 グレイアとシスタも涙ながらに俺に謝ってくる。
 やめろよ。お前らの方こそ、謝ることなんて何もないじゃないか。

 三人で散々泣きあったあと、少し落ち着いた俺はもう一人の謝りたい幼なじみのことを二人に聞こうとした。

「ミリスにも、謝らないとな……。なあ、今ミリスは何処にいるんだ?ここで待ってたら来るかな?」

 もしかしたら、また四人で楽しく暮らせる日々が戻るかもしれない。
 そう思うと、俺はとても幸せな気分になった。こんな感情、長らく感じなかったな。

「……いえ、待っていても来ません。……ついては来て貰ってもいいですか?」

 シスタにそう言われて俺は頷く。
 幸せな気分に溺れていた俺はその時のシスタの表情は見えていなかった。

「……アルフ、本当にあなたは何も悪くなのよ」

 グレイアも俺にそう言ってくれる。
 あんなことを言った俺を許すだけではなく、気づかってくれるなんて、俺は本当にいい幼馴染に恵まれた。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 ミリスに早く会いたい!
 会って謝りたい!
 その一心で俺は二人について行く。

 周囲の様子はもう俺の目には入っていない。それどころではないのだ。なんて言って謝ればいい?ほんとうに許してくれるのか?
 その考えが頭の中をグルグルと回って気持ち悪くなる。
 でも伝えなくては、逃げちゃダメだ。

「着きましたよ」

 シスタにそう言われ、俺はハッとする。

「わ、悪い。……えーと、ここは?ミリスはどこに……」

 辺りをキョロキョロと見回すがミリスらしき人物は見当たらない。

 ここで待ち合わせということだろうか?

「ミリス、アルフが来てくれたわよ」

 グレイアの話し声を聞いて、急いでそちらを見るが、彼女は誰もいない場所に話しかけている。

 そっか、ミリスは魔法の才能に恵まれて勇者の元へ行ったのだった。
 透明化の魔法をかけて、ずっと俺達のそばにいたのか。
 良かった、これでやっと伝えられる。
 許して貰えるかどうかは別問題だ。
 まずは謝らないと何も始まらない。

 ……そういえばここはどこなんだ?
 黒くて大きい箱が辺りを一面に置いてある。
 人が一人入りそうな大きさだ。
 俺達の目の前にもある。
 なんだかまるで――


























 ――棺桶みたいな
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...