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日本初イベント大会

通行手形クエスト

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 2日経てば後続たちも落ち着いてきた。
 各々でやりたいことを勝手に探して方々へ散っていく。
 厩舎の空き部屋? も全部埋まってしまったかと思えば、隣に新しく厩舎が出来上がっている。
 例の2人も同じ厩舎に入ったことで、毎日が騒がしい。

「出た! 天敵め!」
「そんなこと言わないで仲良くしようよ~」

 ぶち猫さんの猫撫で声はここに来て初めて聞いた。
 それも慣れてきたかな。

「私も釣竿作るからさー」
「うんうん。私もやるよ」

 ぶちサビコンビのこの言葉に悩ましげなケットシーたちだけど、結果は決まっている。

「むむむむ! 仕方ないにゃあ」

 相当な釣り好きで、朝一の釣りでいつも誰かが横にいる。
 最近は報酬で教えてもらった秘密スポットに通い詰めている。ケットシーたちが多い9時の広場から、ちょっと裏道行ったところなんだけど、ケットシー以外でここに来るのは俺だけだ。
 今日の釣り仲間は風足《かぜあし》さん。
 ケットシーの中でも年長者で落ち着いた雰囲気を醸し出している。

「ハッチ君や」
「はい」
「最近、停滞《ていたい》してないかい?」

 耳が痛くなることをおっしゃる。
 言われた通り、クエスト関連や調べ物なんかも全然進んでいない。
 釣竿だけ作って楽しく釣りしてれば満足なんだけど、その分釣り場も増えないんだよね。


「そんな君に、儂から一つ依頼を出そうか」

《納品クエスト:ケットシー族の風足に自作魔導ランプを1個納品》

 自作魔導ランプと来たか。
 これについては、すでにグスタフさんは作れるようになっているので、教えてもらっとことがある。
 光虫から取れる角と石英ガラスが必要だな。
 何が大変かって、これらは店売りしてないから取りに行かないといけないわけだ。

 YES

 そろそろ動かないと進まないと思っていたから、これも良いタイミングか。

「報酬は通行手形じゃ」
「は?」

 通行手形って何だ?
 もっとよく見せて。

「おっと。これは達成後じゃな」
「ちょっとくらい良いじゃ無い!」
「ほっほっほ。楽しみしておくと良い。だが何も言わないのも悪いか」

 風足さんが手の平サイズの銀板の背を撫でると紋章が映し出される。
 これは見たことあるぞ。

「これってオーク族の紋章?」
「うむ。ハッチ君にも友人がいるだろう」

 これってかなり大事なアイテムじゃないか?
 前にウーゴの村に行きたいと言ったことがあるんだけど、金以外に必要な物があるって言っていた。
 それが何か聞けなかったけど、これのことでしょ。

「アルフヘイムからここに行くまでは、本棚を調べると良い。2列、3段、5番じゃ」
「2列、3段、5番……風足さ」

 復唱している間にどこかへ行ってしまった。
 いないのなら仕方ない。
 とりあえず、素材集めするにも一人じゃ心許《こころもと》ないし、誰か誘うか。

 prrrrrr!

「あ、ウーゴ? 採集行かない? え? 人間界にいるの?」

 いつの間にか人間界とやらに行ってるし、そもそもどうやって行くのやら。
 次はグスタフさんどうかな。



 ダメだ。
 後続の鍛冶士と笑いながら何か作ってるわ。

 テッケンさんも忙しいの!?



 声かけて回ったけど、みんなやることあって今日や明日に行けそうな感じじゃないな。

「何してますの?」

 この言葉使い。

「モウカさん? お使い終わったんですか?」
「えぇ、だいぶ掛かってしまいましたわ。それで仰向けになって何してますの?」
「採集に行く仲間探してたんだけど、一人も見つからなくてですね」
「なるほど」

 そういえば、前に手伝ってくれるって言ってたような?

「モウカさん! 手伝ってくれません?」
「いや、後輩の狩りを手伝うことになってまして」

 ここで引き下がったら、何も進まなくなりそうだ。

「少しで良いので! それに狩りなら一緒にできるかもですよ?」
「でもハッチさんは……」
「いやいや、あれから多少は強くなってますよ。それに採取道具とか用意しときまっせ!」
「まぁ、そういうことなら」

 よし!
 強くなったと言っても、動きが良くなったわけじゃないんだけどね。
 サポート力なら、新しいアーツやらヤマトも成長したし何とかなるでしょ。

「では、北東のクモモ森ですわね」
「よろしくお願いします!」



 さて、明日のために道具やら準備しないといけないな。
 それと風足さんに教えてもらった本棚だけでも見ておくか。

『世界の階層と中継地点』

 さぞ大量の文字が書いてあるのかと思えば、中身はほとんど白紙で、最初の3ページ程度しか書かれていなかった。
 <アルフヘイム>
 1層にある世界で、光の妖精種が多く住んでいる。
 代表種族:エルフ
 <ミズガルズ>
 2層にある世界で、人間種が多く住んでいる。
 世界の中継地となっており、他の世界に行く時はこの世界を通ることが多い。(一部例外あり)
 代表種族:人間
 <スヴァルトアルヴヘイム>
 2層にある世界で、黒い妖精種が多く住んでいる。
 代表種族:ドワーフ

 ほほーん。
 ドワーフは黒い妖精種なのか。
 それならスヴァルト……からスタートでも良かったんじゃないか?

「ハッチ氏も手形クエですか?」
「グスタフさん? 『も』ってことは」
「私もクエスト中でして、魔力が一定量蓄えられる剣を作れと言われてます」
「あれ? こっちは魔導ランプでしたけど」
「持ってるスキルで変わるのでしょう。テッケン氏は落下耐性付きの靴でしたから」
「そうなんですか」

 持ってないスキルでやれと言われても困るから、それは助かるかな。

「もしかしたらですが、多めに素材を取っておいた方が良いかもしれませんよ」
「それまたどうして?」
「作り始めたんですけど、まだ続きがありそうなことを言われました」

 ということは3個分は必要になるのか?
 うーん。
 モウカさんに少しって言っちゃったのは失敗だったな。
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