『女騎士アルトリアの受難〜主君の初夜に立ち会わされた夜、宿敵の騎士に処女を捧ぐことになりました〜』

甘塩ます☆

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6話

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 寝室の扉が勢いよく開き、アルトリアの夫――エドワード侯爵が姿を現した。
 豪奢な毛皮を羽織り、香水の匂いを漂わせるその顔は、不機嫌そうに歪んでいる。

「アルトリア、何をしている。帳簿の整理が滞っているぞ。俺の朝食や身支度も山積みだというのに、手間を取らせるな」

 エドワードはベッドの上の異様な光景――裸のまま絡み合う四人を見ても、驚くどころか、不潔なゴミを見るような視線を向けた。彼にとってアルトリアは、便利な「家令」か「動く道具」に過ぎないのだ。

「申し訳ありません、すぐに……」

 アルトリアがシーツで身体を隠しながら起き上がろうとした時、その肩を力強くジークフリートが引き寄せた。

「おっと、閣下。俺の女をそう安安と使い走りにしないでいただきたい」

「……何だと? 貴様、どこの馬の骨だ。アルトリア、その男は何だ。不貞は重罪だぞ。目を瞑ってやろうかと思ったが、不敬罪として国王陛下に申し出ることにするか? お前の実家への仕送りも、今日限りで終わりだな」

 脅すように言い放たれた言葉に、アルトリアの顔が屈辱で青ざめる。
 だが、ジークフリートの瞳には静かな、それでいて苛烈な殺意が宿った。

「馬の骨、ですか。俺は隣国の第一騎士ジークフリート。……この女は昨夜、俺が抱いた。いや、俺が『買い取った』と言えば、貴方の汚い耳にも理解できますか?」

「買っただと?」

「そうだ。アルトリア殿の実家の借財。そのすべてを我がルイス殿下が肩代わりし、彼女を『戦利品』として隣国へ連れ帰る。……そういう話が今、ここでまとまったところだ」

 ジークフリートの嘘に、アルトリアは息を呑んだ。そんな話、今初めて聞いた。
 しかし、ルイス王子がニヤリと不敵に笑って話を合わせる。

「ああ、エドワード侯爵。君もアルトリア殿の扱いに困っていたんだろう? 彼女は我が国で『騎士』として、あるいはジークフリートの『妻』として重用することにした。安心したまえ、君には十分な額の『慰謝料』を支払おう」

 エドワードの目が、金という響きに卑しく輝いた。

「ほう……。まあ、愛嬌もない、骨ばった身体の女だ。金になるなら文句はない。アルトリア、お前もせいぜい隣国で役に立つんだな。帳簿付けの代わりは、新しい愛人にでもやらせるから構わんよ」

「……待ってください! 閣下、民はどうなるのですか! あなた一人では、次の冬を越せません!」

 必死に叫ぶアルトリアの声を、エドワードは鼻で笑って一蹴した。

「知ったことか。そんなことより、早く金を振り込んでもらおうか」

 エドワードは未練もなく背を向け、部屋を出て行った。
 後に残されたのは、あまりの虚脱感に震えるアルトリアと、彼女を離さないジークフリートだけだった。

「……見たでしょう、アルトリア。あんな男に、貴女の人生を捧げる価値はない」

「……ジークフリート。貴様、なんて出鱈目を……」

「出鱈目ではありません。ルイス殿下には既に根回し済みです。……貴女が守りたかった民のことも含めてね」

 ジークフリートはアルトリアの額に、慈しむような口づけを落とした。

「もう、あんな男のために泣くのはやめて、俺のために生きてください」

「……本気なのか?」

「俺はこう見えて、誠実な男ですよ」

「昨夜は殆ど強姦(ごうかん)だったがな」

「許してください。……何が何でも貴女と既成事実を作らないと、あの男から引き離せなかった」

 ジークフリートはアルトリアの手を握りしめ、真っ直ぐに見つめ合う。その瞳に宿る確かな熱量に、アルトリアの肩からふっと力が抜けた。
 長年、一人で背負い込んできた重圧。否定され続けてきた自尊心。
 それが、目の前の強引な男によって粉々に打ち砕かれ、同時に救い出された気がした。

(信じて、みようか……)

 冷え切っていた彼女の心に、小さな火が灯った瞬間だった。
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