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にわかに物々しくなった船上で、メアリアは顔を真っ青にした。
話し合えば兄も分かってくれるはずだという考えは、あまりに浅はかだった。兄は今、愛する妹を奪われた怒りで頭に血が上っており、周りが見えていない。
兵力は明らかに帝国軍が勝っており、ここで戦火が上がれば母国が消えてなくなるのは自明の理だ。兄や父が、愛するエドワード様の手にかかって命を落とす凄惨な未来を想像し、メアリアは全身の血の気が引くのを感じた。
「やめて!!」
メアリアは咄嗟に、エドワードの胸を突き飛ばした。
思いも寄らない彼女からの拒絶に、エドワードは虚を突かれ、思わずその細い腰を離してしまう。メアリアは素早く二人の間に割って入り、両手を大きく広げた。
「お兄様もエドワード様も、剣を抜くならまずは私を貫いてください! 大好きな二人が争うなんて……そんなの、私、悲しくて耐えられません!」
メアリアの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。
「メアリア!」
「リア!」
泣きじゃくりながら自分たちを止めようとする彼女の姿に、二人は弾かれたように剣を捨て、同時に駆け寄った。
「すまなかった、メアリア。私はただ、お前が心配で……」
「リア、済まない。俺が悪かった、泣かないでくれ」
必死に謝る二人の男を、メアリアは涙を拭いながら毅然と見据えた。
「お兄様とエドワード様、今すぐここで仲直りの握手をしてください」
「しかし、メアリア、この男が……」
「リア、義兄上が……」
「お兄様もエドワード様も、私の意志を尊重してください!!」
メアリアがこれまでにないほど声を荒らげると、二人の英雄は言葉を失い、促されるままにぎこちなく右手を差し出し、握手を交わした。背後で構えていた兵たちも、主君たちの様子に戸惑いながらも、安堵したように剣を鞘に収めた。
メアリアは深く息を吐き、エドワードに向き直った。
「エドワード様。私、一旦、母国へ帰ります。お城の人たちにちゃんとお別れを告げ、自分の過去にけじめをつけてから、貴方の元へ戻ってきたいのです」
「リア……俺の側を離れないと言っただろう? そんなの……っ」
「一週間です。一週間経ったら、必ずエドワード様の元へ戻ります。そうしたら、もう二度と離れず、一生お側にいますから。……お願いです、母国に別れを告げさせてください」
メアリアの真っ直ぐな瞳に、エドワードはたじろいだ。ただ縛り付けておきたいわけではない。彼女の心からの願いを汲んでやりたいという愛しさが、彼の独占欲を辛うじて抑え込んだ。
「……分かった。リア、一週間だぞ。1日でも過ぎたら、俺が直々に迎えに行く。約束だ」
エドワードは彼女の額に、誓いの印のような深い口づけを落とした。彼は後ろ髪を引かれる思いで、一人、帝国の軍艦へと戻っていく。
メアリアは、それを見送ってから兄の手を取った。
「さあ、お兄様。帰りましょう」
優しく微笑みかける妹を、兄は無言で、けれど大切そうに抱きしめた。
「ね? エドワード様は優しいでしょう? 私の言うことを、ちゃんと聞いてくださる方なのよ」
「……そのようだな。少しだけ、認識を改めよう」
遠ざかる帝国の船を見つめながら、兄王もまた、妹を愛する男としてのエドワードを、わずかに認めざるを得なかった。
話し合えば兄も分かってくれるはずだという考えは、あまりに浅はかだった。兄は今、愛する妹を奪われた怒りで頭に血が上っており、周りが見えていない。
兵力は明らかに帝国軍が勝っており、ここで戦火が上がれば母国が消えてなくなるのは自明の理だ。兄や父が、愛するエドワード様の手にかかって命を落とす凄惨な未来を想像し、メアリアは全身の血の気が引くのを感じた。
「やめて!!」
メアリアは咄嗟に、エドワードの胸を突き飛ばした。
思いも寄らない彼女からの拒絶に、エドワードは虚を突かれ、思わずその細い腰を離してしまう。メアリアは素早く二人の間に割って入り、両手を大きく広げた。
「お兄様もエドワード様も、剣を抜くならまずは私を貫いてください! 大好きな二人が争うなんて……そんなの、私、悲しくて耐えられません!」
メアリアの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。
「メアリア!」
「リア!」
泣きじゃくりながら自分たちを止めようとする彼女の姿に、二人は弾かれたように剣を捨て、同時に駆け寄った。
「すまなかった、メアリア。私はただ、お前が心配で……」
「リア、済まない。俺が悪かった、泣かないでくれ」
必死に謝る二人の男を、メアリアは涙を拭いながら毅然と見据えた。
「お兄様とエドワード様、今すぐここで仲直りの握手をしてください」
「しかし、メアリア、この男が……」
「リア、義兄上が……」
「お兄様もエドワード様も、私の意志を尊重してください!!」
メアリアがこれまでにないほど声を荒らげると、二人の英雄は言葉を失い、促されるままにぎこちなく右手を差し出し、握手を交わした。背後で構えていた兵たちも、主君たちの様子に戸惑いながらも、安堵したように剣を鞘に収めた。
メアリアは深く息を吐き、エドワードに向き直った。
「エドワード様。私、一旦、母国へ帰ります。お城の人たちにちゃんとお別れを告げ、自分の過去にけじめをつけてから、貴方の元へ戻ってきたいのです」
「リア……俺の側を離れないと言っただろう? そんなの……っ」
「一週間です。一週間経ったら、必ずエドワード様の元へ戻ります。そうしたら、もう二度と離れず、一生お側にいますから。……お願いです、母国に別れを告げさせてください」
メアリアの真っ直ぐな瞳に、エドワードはたじろいだ。ただ縛り付けておきたいわけではない。彼女の心からの願いを汲んでやりたいという愛しさが、彼の独占欲を辛うじて抑え込んだ。
「……分かった。リア、一週間だぞ。1日でも過ぎたら、俺が直々に迎えに行く。約束だ」
エドワードは彼女の額に、誓いの印のような深い口づけを落とした。彼は後ろ髪を引かれる思いで、一人、帝国の軍艦へと戻っていく。
メアリアは、それを見送ってから兄の手を取った。
「さあ、お兄様。帰りましょう」
優しく微笑みかける妹を、兄は無言で、けれど大切そうに抱きしめた。
「ね? エドワード様は優しいでしょう? 私の言うことを、ちゃんと聞いてくださる方なのよ」
「……そのようだな。少しだけ、認識を改めよう」
遠ざかる帝国の船を見つめながら、兄王もまた、妹を愛する男としてのエドワードを、わずかに認めざるを得なかった。
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