(完結)魔王と従者

甘塩ます☆

文字の大きさ
30 / 59

30話

しおりを挟む
「裏柳、大丈夫か?」
 漆黒は心配そうに裏柳の羽根を撫でていた。
 無事に城まで戻って来た裏柳と漆黒。疲れてしまってベッドに入った。
 寝ている内に漆黒は元の姿に戻れたが、裏柳はまだフラミンゴのままである。
 少し熱っぽくダルい様子で息も荒くなっていた。
 漆黒は心配になり、直ぐに鹿を連れてくると、裏柳を見せる。
 鹿は熱を計ったり、聴診器を当てたり色々検査した結果、どうやら薬がなかなか抜けていない様で、元に戻れるのは明日の朝頃になってしまうだろう事と、裏柳は発情してしまった様だと言う事である。
 取り敢えず、様子を見ると言う事で、鹿は部屋を出ていった。
 漆黒は心配で裏柳に着いている。
 発情した裏柳の香りが漂いはじめ、漆黒もクラクラするが、何とか誤魔化して様子を伺っていた。
「漆黒……」
「気がついたか? ごめんな」
 まさかフラミンゴにしてしまったせいで発情し、苦しませてしまうとは思いも付かなかった。漆黒は申し訳無い。
 だが肉食魔物を選んでしまうと、本能に負け、鳥の長や他の草食魔物に襲いかかってしまう恐れも万が一だが有った為、草食魔物にするしか無かったのである。
「あ、俺…… 発情してる?」
 目を開けた裏柳は涙を目に浮かべながら漆黒を見つめる。
「ああ、発情しやすい鳥の影響が出たのかも知れない」
「今、セックスしたらどうなるんだろうな」
「うむ、解らないが…… 多分、他の生物間と人間では構造が違いすぎて子供は成せないはずだ。何も出来ないと思うぞ」
 まぁ、哺乳類だった場合は万が一も有るかも知れないが、流石に哺乳類と鳥類や爬虫類では流石に何も出来ないだろう。
「そうなんだ……」
 ふーんと、何かを考える様子の裏柳。
 なんでこんな話をするのだろうか、漆黒には意味が解らないが、ただでさえ発情中の裏柳の香りに耐えていると言うのに『セックスしたら』等と明け透けなセリフを聞いてしまうとどうも下半身がその気になってしまう。
「ヤッてみない?」
「何をだ?」
「セックス」
「え?」
 裏柳の申し出に固まってしまう漆黒。 
「鳥だから嫌なのか?」
「いや、良いよ! 鳥の裏柳も可愛いよ!」
 そう言う問題じゃない。
 裏柳が鳥だからとか、どうでも良い事である。
「ねぇ、お願い。体が熱くて……」
「だけど……」
「俺達、夫婦だろ? 夫婦って夜の営みするもんだろ? なんで何もしないんだよ!!」
 裏柳はイライラした様子で布団を投げ飛ばすと、起き上がり、漆黒を睨みつけた。
 愛し合う夫婦が一つのベッドで寝るのだから、そう言う展開になる事もある筈である。だが漆黒は裏柳が発情してしまったあの日以降、抱いてくれない。
 一緒に寝るだけである。
 自分はそんなに魅力が無いのかと、流石の裏柳も悲しくなった。
 番にもしてくれないし、結局、何も教えてくれないし、やっぱり俺の事なんて嫌いなんだーー!
 負の感情が押し寄せる裏柳は寂しくて泣き出してしまった。
「泣かないでくれ裏柳」
 ヨシヨシと頭を撫でて、優しく瞼にキスする漆黒。
「キスは唇が良い」
 そう、拗ねた様に言う裏柳。
 正直可愛い。
 漆黒は困った様に微笑み、裏柳の唇にキスをする。
 口付けをしてしまうともう止まらない。
 気づけばベッドに押し倒してしまっていた。
 以前手を出してしまったのも裏柳が発情した時であった。
 だから次は平常時に、優しいゆっくりした甘いセックスをしたいと思っていたのだ。
 激しくなるとうなじに噛み付いてしまいそうになるのも怖い。
 だが、はじまってしまえば止められない。
 困った事に漆黒はヘタレであるので、平常時に上手くセックスにお誘い出来ないでいたのである。
 漆黒がモタモタしていたら、こんな事になってしまった。
 あーあ。
 俺はどうしてこんなにもヘタレのだろうと嘆くが、どうしようもない。
 もう、止まれなくなってしまった。 
 もう、ただただ裏柳が可愛くて、エッチで堪らない。
 今すぐ孕ませたい。
 番にしてしまいたい。
 そんな衝動に駆られる。
 理性と本能に揺さぶられつつも、何とか理性を繋ぎ止め。
 出来るだけ優しいセックスを心がけ、噛まない様に注意するのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

回帰したシリルの見る夢は

riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。 しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。 嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。 執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語! 執着アルファ×回帰オメガ 本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけます。 物語お楽しみいただけたら幸いです。 *** 2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました! 応援してくれた皆様のお陰です。 ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!! ☆☆☆ 2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!! 応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。

処理中です...