わたしは美味しいご飯が食べたいだけなのだっ!~調味料のない世界でサバイバル!無いなら私が作ります!聖女?勇者?ナニソレオイシイノ?~

野田 藤

文字の大きさ
53 / 67
第一章 討伐騎士団宿舎滞在編

48 飲んで食べて無礼講!

しおりを挟む

 さて、夜になりました。

 合同修練場には第一と第二の騎士が勢揃い、ガヤガヤとお祭り状態になっております。
 そんな中を揉みくちゃにされつつ様子を伺っておりますのが私です!

 一番人気はやっぱり目玉のバックボアの半身焼きだね。
 いつもならそのまま焼いたものを切って食べるって言うからちょっと工夫した、というか変化球的な食べ方教えたらそれがまた人気になってしまって……半身焼き担当のルーとミッシェルがアワアワしてる。

「うんめぇ!いつもなら塩だけなのに、この調味料……?ってやつ、すげえな!」
「パンに挟むのも、斬新だよな!?」
「てかこのパンも柔けえ!なんだこれ!」

 第二の騎士達がぎゃあぎゃあと感想を言いつつ、食べながら飲みながら大絶賛。
 そうだね、そっちには教えてないもんね……柔らかいパン……。

 遠い目をしつつ、褒めてくれるのは単純に嬉しいので笑顔になる。

 塩だけの半身焼きもそれはそれは美味しくて、皮はパリパリしてて蜂蜜を塗って焼いたのか甘しょっぱさが後を引く感じだ。
 子豚の丸焼きで食べる皮のようで、北京ダックみたいにして食べたいな、と思った。
 肉は言わずとも、直火で焼いているので煙で燻製効果なのかなんとも言えない香り付きで肉汁もたっぷり、1口かじれば旨み爆発!という……悪魔的なお味のお肉の仕上がりだ。

 これがあのバックボアだと言うのだから驚きだけど、やっぱりこの世界の食材のポテンシャル高くてめっちゃ美味しいー!魔物最高ー!

 バックボアの半身焼きは、削いでは焼いて、焼けたら削いで……を繰り返していたので何となくケバブを思い出した私は、作っておいた焼肉のタレとマヨネーズとトマトケチャップで作ったオーロラソース、そして野菜やらを調理場から持参して、パンに玉ねぎやキャベツを載せたあと、焼肉のタレをぶっ掛けたお肉にオーロラソースをかけて挟んだものを提供。
 なんちゃってケバブ風を作ってみた!

 そしたらその食べ方が人気になった、という訳です。ケバブ……鶏肉で作るんだけどね。

 そして忘れちゃならない、イノシシカツ!
 テーブルには沢山の木の枝で作った大きな串
、それに各種野菜と肉を好きなように指してもらったら、パン粉とバッター液を用意してるので串揚げ状態に。

 何個か焚き火台を作ってもらったからそこに油が入った鍋を置いて各々好きに揚げてもらう。
 ツボになんちゃってトンカツソースと焼肉のタレを用意したから、好きな味でどうぞ、の食べ放題ビュッフェスタイルにした。
 直前ツボに串揚げを入れるんだけど、二度漬け禁止と書いたから多分大丈夫でしょう。
 騎士達を信じます。

 もちろんそのまま焼いて食べてもいい、二重に美味しい串料理。

 とにかく自由に、美味しく楽しく食べてもらいたいのでこういう半調理を取り入れたものにしてみた。

 ちょっと不安だったけど、そこは野外実習などで慣れた第一がお手本となり第二に教えつつ各自勝手に盛り上がりをみせたのでこれは大成功といえるだろう。

「賑わっているな」

 私が会場の端で盛り上がりを見せる騎士達をベンチに座って見ていると、横にライオネルが座りながら声をかけてきた。

「そうですね、これもひとえに食材提供してくれたどこかの誰かさんのおかげですかねー」
「……よく言う」

 ニヤリ、と笑うライオネルは少し酔っているのか表情が豊かになっている気がする。

「奴はどうした?来てないようだが」
「……団長さんは、いつも通りですよ。自分が居ると騎士達が遠慮するからって」
「そうか……」

 第一宿舎の三階、灯りがついている部屋を指さすとライオネルもそれにつられて視線をあげて見ている。

「残念だ」
「そうですね……でも、頑固なので」

 事前に何度も誘ってはいたのだけど頑なに来ようとしなかった団長さんを思い出して苦笑い。仕方ないので、私が作った煮物と皮のきんぴらと日本酒をそっと置いて私は宴に来たのである。

「今頃、これ、食べてるんじゃないですかね?」
「なんだそれは」
「これは私の親父の味です。こっちが皮のきんぴらで、こっちは皮の煮物です」
「……皮ばかりだな」
「好きなんで。……味見します?食べさしで良ければ」

 すいっとテーブルの上に乗っている皿を流すと、食べさしでも気にしないのか躊躇なく味見をするライオネル。

 きんぴらから食べたみたいでコリコリと咀嚼音が聞こえる。

「美味い。少し固いがそれがまたいいな。噛めば噛むほど脂の旨みが口に拡がって……甘辛さも相まって後を引くな」

 おお、ライオネル意外と食レポ上手い。
 普段は必要なこと以外喋ったりしないのに、お酒効果なのか饒舌だな。

「こっちの、プルプルとしているのも皮なのだな?柔らかくて噛む前に消えていったぞ?同じ皮なのに、信じられん」
「気に入ったのならもっと出しましょうか?」
「ああ、頼む」

 こんなこともあろうかとバックパック持参してきたのです。ルー達に食べさせたかったからね。
 鞄から食べ物を出す私を驚きの目で見られたが特に言及されなかったのでスルー。
 ついでにライスリキュールも出してみる。

「日本酒……ライスリキュールってこっちでは言うらしいんですが、抵抗なければ是非」
「ケイが言うんだ、美味いんだろう?」
「はい、目の前の料理に合いますよ」

 ライスリキュールは消毒液。こっちの感覚ではそうなのだけど、私が飲んでるのを見たライオネルはこれも躊躇なく飲む。
 そして煮物をぱくり、と食べると酒とアテのマリアージュを楽しんでいる。

 ……飲みなれてるな……コイツ……。

「これは……最高に美味いな。ライスリキュールがこれほどに美味いなどと……」
「私がいた世界ではないと困るお酒です。神に捧げたり、料理につかったり、御仏……お墓にかけて清めたり……ここで使うように消毒で使う時もありましたね」
「ほう……興味深い」

 ライオネルは私の故郷のことを静かに飲みながら相槌をうちつつ聞いてくれた。
 私もお酒が入っていたのと、懐かしい親父の味で饒舌になっていたのをみとめます。

 そして、話も途切れ、静かに二人で飲んでいると、ライオネルが私を見つめた。

「どうしました?」
「……ありがとう。改めて言いたかった」
「私は何もしてません」
「きっかけを作ってくれただろう」
「勝手に改心したのはライオネルです。それに私も現実というものが分かったので……ウィン・ウィンです」
「う、うぃん……?」
「お互い様ってことです」

 きょとん、としているライオネルにニヤッと笑いかけると目を瞬く仕草を見せる。

「今、楽しく飲んで食べて盛り上がってる騎士達がいる……それでもうなんか、良いかなぁ……って思います」

 宴の中心を指さして言うと、私の言いたいことがわかったのか、ライオネルも笑って頷いた。
 多分、お互い思うところなど沢山あるだろうけども。それはもう水に流して。
 団長さんとの固執も、私への偏見も、何もかも解決した訳では無いけれど。
 なんとかなるだろう……という気になるので、きっとなんとかなるし何とかする。

「お前が来てから、騎士団も変わった」
「そうですか?」
「ああ、良い方へ、な。……聖女と言っていいぞ」
「よして下さいよ……嫌な思い出しかないんですから」
「まあ、そう言うな。俺はお前をそう思う。この世界にケイが来てくれた事に感謝しよう」

 時に、なんとなしに言われた言葉が抉るように、痛いくらい嬉しいと感じることがあるだろう。

 まさか私を嫌っていた相手からそう言われるとは思わなかったので、つい涙腺が緩む。
 ライオネルは見て見ぬふりをしてくれる。
 それがまた悔しくて、肩肘でライオネルを小突いた。

「……ライオネルのくせに、うっせーです」
「言ってろ小娘が」

 今はもう、この軽口も心地よく、最高の友が出来た……そう感じた夜だった。


 

 

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしたいけど、なかなか難しいです。

kakuyuki
ファンタジー
交通事故で死んでしまった、三日月 桜(みかづき さくら)は、何故か異世界に行くことになる。 桜は、目立たず生きることを決意したが・・・ 初めての投稿なのでよろしくお願いします。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜

夜夢
ファンタジー
主人公【相田理人(そうた りひと)】は帰宅後、自宅の扉を開いた瞬間視界が白く染まるほど眩い光に包まれた。 次に目を開いた時には全く見知らぬ場所で、目の前にはまるで映画のセットのような王の間が。 これは異世界召喚かと期待したのも束の間、理人にはジョブの表示がなく、他にも何人かいた召喚者達に笑われながら用無しと城から追放された。 しかし理人にだけは職業が見えていた。理人は自分の職業を秘匿したまま追放を受け入れ野に下った。 これより理人ののんびり異世界冒険活劇が始まる。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...