異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

ユグドラシルとグランディア

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 クロトはセーラに尋ねられ、世界樹の元へ来た理由を答えていた。


「世界樹と地底樹に繋がりを・・・?」

「そうだよ。地底樹に世界樹のことを伝えたら、会いたいらしいから、さ。」

「それで・・・世界樹が兄弟と呼んだのね・・・。」

「うん?どういうこと?」


 セーラはクロトに、地底樹復活の日のことを話した。


「へぇ・・・?繋がりが無くとも、感じるものがあったのかな・・・?」

「えっと・・・・・・うん、間違いないわ。世界樹もそう言っているし。」

「そっか・・・。なら、早速地底樹の一部を、ここに置くね?」


 クロトは地底樹の地下茎の内、一つを収納に入れて、持って来ていたのだ。


 そして、両者の一部が直接触れ合うことで、意思疎通が可能になった。


(・・・・・・?)

(・・・!・・・!)

(・・・!!)


 何やら話しているのが、セーラとクロトに伝わった。

 クロトへは地底樹から、セーラへは世界樹から、話の内容が伝わったらしい。

 出会えたことを喜んで居るのが理解できた。

 また、創世神への想いも、共有しているようだ。


「クロト君が、地底樹の巫女って・・・?それにもう一人・・・。」

「もう一人は、リオンのことだね。」


 お互いが知らない情報も、世界樹と地底樹を通して伝わった。

 当然、クロトも知らなかったことを知った訳で・・・。


「セーラ、そんなに僕に会いたかったんだね・・・。」

「っ!?ちょっ、クロト君!そんなことまで伝わったの!?」

「まあね。僕も会いたかったよ、セーラ?」

「ちょっ、待っ・・・!揶揄わないでよ、もうっ・・・!」


 クロトがニコニコしていたので、途中で揶揄われていると気づいたようだ。

 恥ずかしながら、照れ隠しのつもりで、わたわたと手を動かす。


 とっても可愛らしい。


「・・・うん、どこをどう見ても、年寄りには見えないよね。」

「クロト君っ!!」


 クロトは怒られてしまった。

 やはり気にしていたらしい。


 そんな時、世界樹と地底樹から、同時に意志が伝えられた。


「これは・・・祝福?」

「っ、祝福が物質化・・・?」


 何と、世界樹と地底樹から同時に祝福されることで、アイテムが創造された。

 クロトが解析してみると、アイテム名が表示される。


 名称は・・・世界の祝福。

 世界を支える二本の樹による、最大限の祝福を受けた者たちへ贈られるもの。


 クロトはピンと閃いて、アイテムボックスから、ある物を取り出した。

 天の祝福、魔の祝福、主の祝福、竜の祝福。

 これら五つを一つにまとめて・・・。


「創世の祝福、か・・・。これでまた一歩、計画が進む・・・。」

「えっ?計画って・・・?」

「ああ、セーラにはまだ話していなかったね。」


 クロトはクラリスを幸せにするプロジェクトについて簡単に話した。




「そんな計画を立てていたのね・・・。上手くいくといいんだけどね・・・。」

「最悪の場合は、世界を盾にして・・・。」

「ちょっ!?それは出来ればやらないでね!?」

(・・・・・・!)

(・・・・・・!)


 世界樹と地底樹が間に割って入って、クロトの行動を推奨した。


「何言ってるのあなたたちっ!?」


 セーラは二本の木に諭すように言い聞かせ始めたのだった。





「いい?それは最終手段なんだから、それに期待するようではだめよ!」



 ・・・微妙にピントがずれている気もするが。





 かくして、最後の詳細不明材料が、クロトの手に収まったのだった。


 残すは、三位一体の福音と、橙結晶だけだ。












 翌日の朝。


「マリア馬に蹴られたかったの?」

「何の話ですのっ!?」

「だって、昨日の夜中、影から覗こうとしていたよね?」

「気づいてたんですのっ!?」

「当たり前だよ・・・神の瞳の前には筒抜けだからね。」


 マリアは、そう言えばそうだったと思い出した。

 覗かずに、途中で引き返していたので、気づかれてないと思っていたらしい。


「まあ、安心して?覗きはしなかったんだし、お仕置きはしないよ。」

「・・・万が一覗いていたら、どうなっていましたの?」

「人前でお姫様抱っこの刑だね。」

「鬼畜ですわっ!」


 マリアは思わずそう叫んだ。


 そして、クロトは最後にこう告げて、その場を締めた。








「ま、年増がダメなら、マリアはどうなんだ、って話になってしまうよね。」

「なぁっ!?」


 マリアとは、最近忘れていた事実を言われて、そんな声を上げた。


 年の事なんて気にするなというフォローだったのだが・・・。

 欠片もフォローにはなっていなかったのであった。

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