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稽古やめます。放棄します!
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ーーカイト視点ーー
俺はバモンに連れ戻され、エリリカの別邸の客間で寝た。
朝になり、耳元で「起きろ!」と唸るエリリカの声が頭に響く。
「もうちょっと寝させて~」
ベッドで丸まり抵抗する。
「ライアスに勝ちたいというのは嘘か!」
「それはほんと……だけどあと少しだけ」
「もうよい!」
エリリカは怒って部屋を出た。
「バモン。この男の何処に惚れて連れてきたか分かるか?」
(やっぱりエリリカ様はカイト殿を好いておられるのか!しかし惚れる要素など分かりませぬ。朝から稽古すると約束しても違える。風呂に侵入する変態のどこに魅力が……)
バモンは深く考えた。
「私は昨日の闘技場の戦いを観客席から見ていた。カイトは最初の内は目立たぬ存在であったが、戦うにつれて強さが急激に上がるのを感じた。戦いながら強くなる逸材なのだ」
「彼が……」
昼になり目覚めた俺は中庭で稽古するエリリカに全力の土下座で許してもらい。稽古が始まった。
俺は木剣を「えい、やー!」と適当に振っていた。
「バモン。稽古を見学していてくれ」
「はい。エリリカ様、ご無理はなさらぬよう」
「ああ。カイト!稽古を始める」
エリリカに呼ばれ中庭の芝の上で稽古が始まった。
「構えて……よし。いきなりだが実戦をしよう。技量をみたい」
エリリカは木剣を構えた。
技量?剣のスキルは限られている。
エリリカは容赦なく打ち込んできた。
速い!ハイオークより速い!
ゴキッ!
鈍い音と共に肩に木剣が当たると肩の骨が外れた。
「いでぇぇえぇ!」
激痛に顔が歪む。
《
俊足レベル3が進化。俊足レベル5を習得
突進が進化。突進レベル3を習得
身体強化レベル1が進化。身体強化レベル6を習得
剣技光速を習得
攻撃耐性が進化。攻撃耐性レベル10を習得
》
一気にスキルが上がって喜んでいる場合ではなかった。
激痛に悶え苦しみ。バモンが脱臼を直し、治癒魔法を唱えた。
《初級治癒魔法を習得》
完全に復活した。
「これぐらいの攻撃を受け止められないなら、ライアスに勝つ見込みはない!」
「わかった!なら、エリリカの技を素振りで全部見せてくれ」
もう打たれるのは御免だ。見て覚えよう。
「技?スキルを見せればいいのか?」
エリリカは素直に沢山の技を見せてくれた。
《
斬撃波を習得。
斬撃爆を習得。
雷刃斬を習得。
火炎斬を習得。
鳳凰斬を習得。
》
「もう大丈夫。さぁエリリカさん、かかってくるがいい!」
「ほお……先程と違って余裕だな」
エリリカは斬撃を踏み込んで放つ。踏み込んだ勢いで芝生が剥がれ、地肌が剥き出しになる。
俺はエリリカの斬撃を見切り避けた。
初手を避けられたエリリカは火炎斬で斬り込む。木剣に炎の魔法を纏わせた火炎斬。俺も火炎斬を打ち、木剣と木剣が交わった。
鍔迫り合いの形になり、お互い押し合う。
「くっ!」
一見すると華奢な体のエリリカだが、馬鹿力だ。押しても全く動かない。
俺は後ろに下がり距離をとった。
「鳳凰斬!」
火の鳥が俺の木剣から放たれエリリカの木剣に当たった。真っ黒焦げになったエリリカは呆然と立ち尽くし、動かない。
「あの……エリリカさん?」
「か、カイト……今、鳳凰斬を使ったのか?」
「はい」
「鳳凰斬が出来るのか?」
エリリカの目頭が赤くなる。
「ええ、まぁ。今覚えました」
「嘘よ」
エリリカは泣くのを堪え唇がぷるぷると震え始めた。次第に大粒の涙を目に溜めて、遂に涙が頬を伝った。
「わたひが……どりょくひて……十数年かけて…ヒッく……わたしの……スキルを……なんで1日の稽古で……できてしまうのよ……もう稽古は……おしまい」
エリリカは泣いて部屋に入って行った。
やばいことをした。
バモンは怖い顔で俺を睨む。
「あー、やってしまった。これって人が努力して生み出した成果を一瞬で出来てしまったら嫌われるやつね……」
誰か俺を褒めてよ。出来ちゃうんだから!
エリリカの稽古は1日で終わり、残りの2日は不貞腐れたエリリカの機嫌をどうにか直すのに費やした。
ライアスとの試合当日。
聖騎士団は闘技場を使用し観客を入れて俺とライアスの試合を行うことになった。
ただの試合だと思っていた俺からすれば盛大過ぎて負けた時の処遇とか気になって不安になってきた。
闘技場の観客席にいたエリリカが立ち上がり開会宣言を行う。
「聖騎士団副団長のエリリカだ!これは聖騎士団の一員になることを掛けた試合である。私から向かって右に見えるのは聖騎士団員、ライアス!左に見えるのは村人のカイト!勝負は木剣で行う!ここに聖騎士団の正式な試合の開会を宣言する」
泣きすぎて瞼が腫れたエリリカを見て聖騎士団員達は口々に噂した。
「カイトがエリリカ様を泣かしたらしいぜ」
「なんでもカイトがエリリカ様の下着を盗んだり、風呂を覗いたりして嫌がらせをしたらしい」
「最低だな」
「もしライアスが負けて、あいつが入団しても俺は奴を同志だとは思わないことにした」
「そうだな。最低な変態野郎め!」
試合が始まる前から俺に対する野次が多い。
ライアスは木剣を構えた。俺も構える。
「始め!」
エリリカの合図で試合が始まった。
俺はバモンに連れ戻され、エリリカの別邸の客間で寝た。
朝になり、耳元で「起きろ!」と唸るエリリカの声が頭に響く。
「もうちょっと寝させて~」
ベッドで丸まり抵抗する。
「ライアスに勝ちたいというのは嘘か!」
「それはほんと……だけどあと少しだけ」
「もうよい!」
エリリカは怒って部屋を出た。
「バモン。この男の何処に惚れて連れてきたか分かるか?」
(やっぱりエリリカ様はカイト殿を好いておられるのか!しかし惚れる要素など分かりませぬ。朝から稽古すると約束しても違える。風呂に侵入する変態のどこに魅力が……)
バモンは深く考えた。
「私は昨日の闘技場の戦いを観客席から見ていた。カイトは最初の内は目立たぬ存在であったが、戦うにつれて強さが急激に上がるのを感じた。戦いながら強くなる逸材なのだ」
「彼が……」
昼になり目覚めた俺は中庭で稽古するエリリカに全力の土下座で許してもらい。稽古が始まった。
俺は木剣を「えい、やー!」と適当に振っていた。
「バモン。稽古を見学していてくれ」
「はい。エリリカ様、ご無理はなさらぬよう」
「ああ。カイト!稽古を始める」
エリリカに呼ばれ中庭の芝の上で稽古が始まった。
「構えて……よし。いきなりだが実戦をしよう。技量をみたい」
エリリカは木剣を構えた。
技量?剣のスキルは限られている。
エリリカは容赦なく打ち込んできた。
速い!ハイオークより速い!
ゴキッ!
鈍い音と共に肩に木剣が当たると肩の骨が外れた。
「いでぇぇえぇ!」
激痛に顔が歪む。
《
俊足レベル3が進化。俊足レベル5を習得
突進が進化。突進レベル3を習得
身体強化レベル1が進化。身体強化レベル6を習得
剣技光速を習得
攻撃耐性が進化。攻撃耐性レベル10を習得
》
一気にスキルが上がって喜んでいる場合ではなかった。
激痛に悶え苦しみ。バモンが脱臼を直し、治癒魔法を唱えた。
《初級治癒魔法を習得》
完全に復活した。
「これぐらいの攻撃を受け止められないなら、ライアスに勝つ見込みはない!」
「わかった!なら、エリリカの技を素振りで全部見せてくれ」
もう打たれるのは御免だ。見て覚えよう。
「技?スキルを見せればいいのか?」
エリリカは素直に沢山の技を見せてくれた。
《
斬撃波を習得。
斬撃爆を習得。
雷刃斬を習得。
火炎斬を習得。
鳳凰斬を習得。
》
「もう大丈夫。さぁエリリカさん、かかってくるがいい!」
「ほお……先程と違って余裕だな」
エリリカは斬撃を踏み込んで放つ。踏み込んだ勢いで芝生が剥がれ、地肌が剥き出しになる。
俺はエリリカの斬撃を見切り避けた。
初手を避けられたエリリカは火炎斬で斬り込む。木剣に炎の魔法を纏わせた火炎斬。俺も火炎斬を打ち、木剣と木剣が交わった。
鍔迫り合いの形になり、お互い押し合う。
「くっ!」
一見すると華奢な体のエリリカだが、馬鹿力だ。押しても全く動かない。
俺は後ろに下がり距離をとった。
「鳳凰斬!」
火の鳥が俺の木剣から放たれエリリカの木剣に当たった。真っ黒焦げになったエリリカは呆然と立ち尽くし、動かない。
「あの……エリリカさん?」
「か、カイト……今、鳳凰斬を使ったのか?」
「はい」
「鳳凰斬が出来るのか?」
エリリカの目頭が赤くなる。
「ええ、まぁ。今覚えました」
「嘘よ」
エリリカは泣くのを堪え唇がぷるぷると震え始めた。次第に大粒の涙を目に溜めて、遂に涙が頬を伝った。
「わたひが……どりょくひて……十数年かけて…ヒッく……わたしの……スキルを……なんで1日の稽古で……できてしまうのよ……もう稽古は……おしまい」
エリリカは泣いて部屋に入って行った。
やばいことをした。
バモンは怖い顔で俺を睨む。
「あー、やってしまった。これって人が努力して生み出した成果を一瞬で出来てしまったら嫌われるやつね……」
誰か俺を褒めてよ。出来ちゃうんだから!
エリリカの稽古は1日で終わり、残りの2日は不貞腐れたエリリカの機嫌をどうにか直すのに費やした。
ライアスとの試合当日。
聖騎士団は闘技場を使用し観客を入れて俺とライアスの試合を行うことになった。
ただの試合だと思っていた俺からすれば盛大過ぎて負けた時の処遇とか気になって不安になってきた。
闘技場の観客席にいたエリリカが立ち上がり開会宣言を行う。
「聖騎士団副団長のエリリカだ!これは聖騎士団の一員になることを掛けた試合である。私から向かって右に見えるのは聖騎士団員、ライアス!左に見えるのは村人のカイト!勝負は木剣で行う!ここに聖騎士団の正式な試合の開会を宣言する」
泣きすぎて瞼が腫れたエリリカを見て聖騎士団員達は口々に噂した。
「カイトがエリリカ様を泣かしたらしいぜ」
「なんでもカイトがエリリカ様の下着を盗んだり、風呂を覗いたりして嫌がらせをしたらしい」
「最低だな」
「もしライアスが負けて、あいつが入団しても俺は奴を同志だとは思わないことにした」
「そうだな。最低な変態野郎め!」
試合が始まる前から俺に対する野次が多い。
ライアスは木剣を構えた。俺も構える。
「始め!」
エリリカの合図で試合が始まった。
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