スキルシーフで異世界無双

三毛猫

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唯一晴れた日

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 ーーエリリカ視点ーー

麓の宿屋でカイトの知らせを待つ私は、宿屋の窓から外を眺めていた。ひさしから雨が落ちる景色をずっと眺めることしか出来ません。彼が無事なのかすら分からないもどかしい日々を過ごしています。

「カイトから知らせがないにゃ」

リーニャさんも椅子に座り足をバタバタと動かして落ち着かない様子。

「そうですね。カイトがこの宿屋を出て9日目……」

「暇だにゃ。リーニャ達も登るにゃ」

宿屋の女店主さんが私達に軽食を出してくれました。
「そう焦らないの。きっと良い知らせが来るわよ」と宿屋の女店主さんが励ましてくれました。


翌日……


「起きて!大変よ!」
宿屋の女店主さんが私を起こし、隣で寝ていたリーニャさんも叩き起こす。

「早く起きて!逃げるのよ」

「何事ですか?」

「ドラゴンが山から降りてきたのよ!早く逃げないと焼かれるわよ」


女店主さんと外に出たら、青空を旋回するドラゴンの群れが、ゆっくりと私達のいる場所に降りてきます。人家から次々に人が出て逃げ惑い大混乱。
晴れ渡る空に巨大なドラゴンが円を描き、まるで空はドラゴンのものと言わんばかりに雄壮な姿で少し見惚れてしまいました。

「言い伝えがある。ラウスティルの山が晴れし日は……ドラゴンが一斉に山から降り、ラウスティルの山々が綺麗に見える唯一の日じゃと。しかし麓の村々は焼かれ、灰になると言い伝えが……」

人家から出てきたお爺さんが震えながら教えてくれました。


ドラゴンの集団は、ゆっくり地上に降りました。女店主さんを含め皆が建物の陰に隠れます。

「エリリカ、リーニャ!」

「カイト!」
「カイトにゃ!」
私とリーニャさんは驚きました。地上に降り立ったドラゴンの背に乗っていたのはカイトでした。

「ドラゴン族のドラゴさんと仲間のドラゴンを連れてきた。仲良くなって、ラウスティル山の頂上まで乗せて行ってもらってから迎えに来たんだ」

「迎えって?」

「ドラゴさん達が乗せてくれるから、背中に乗ってラウスティル山を越えよう」

カイトは私の想像と予想のいつも上をいく存在です。
今までドラゴンの背中に乗った人族がいたでしょうか?カイトぐらいです。そして1番高い山を軽々と越えるよう手配してくれました。

私とリーニャさんはドラゴンの背中に乗る。
ドラゴンが翼を動かすと、ゆっくり浮かんだ。

「いってらっしゃ~い」
地上で手を振る宿屋の女店主さんが徐々に小さくなっていきます。

「ドラゴンさん行くにゃ!」
リーニャさんは大はしゃぎです。

私は高い所が少し苦手で必死にドラゴンの鱗を掴んで落とされないようにしました。


「ドラゴさんゆっくり旋回しながら上がって」

「分かったぜ兄ちゃん」

ドラゴンが喋った……。

凄い速さで、あっという間に私が生まれた街や守ってきたジフォスティス王国の領地が小さく見えるぐらい天高く飛んでいます。
見たことがない景色に心が打たれます。

リーニャさんの目も大きくキラキラと輝かせて喜んでいます。

「カイト、凄いにゃ!爺ちゃんの家がこんな小さいにゃ!」

「まだまだだ。今からもっと高く昇る」

ドラゴンは更に上昇して遂にラウスティル山よりも高い場所まできました。

ラウスティル山脈の向こうは、私達がいたジフォスティス王国の領地より更に大きな大地が広がっていました。

「あれが未開の地……」

「今からひとっ飛びだ!」


ドラゴンの背に乗り、あっという間に未開の地に降り立ちました。

「ありがとうドラゴさん」

「兄ちゃん、ここでいいのか?」

「街の近くまで行くと街の皆が怖がるだろう。だからここまでだ」

「またラウスティルを越えたい時は呼んでくれよ。楽しかったぜ」

ドラゴン達はラウスティル山脈の方に飛んで帰っていきました。

「未開の地ですね。空の上から街が見えました」

「今からそこに行く」

「リーニャ、お腹すいたにゃ」

「街に着いたらご飯にしよう」

「やったにゃ」
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