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15 宴の後 - Après le bal ; à minuit -
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アルヴィーゼは舞踏会で話した貿易商や有力者たちの顔と名前を思い出しながら、腕を組んでいる。来月の夜会に招待する人物が何人か増えそうだと考えていると、不自然なほど静かな向かいから、微かな寝息が聞こえてきた。
あれほど言って聞かせたばかりなのに、男の前で無防備に寝息を立てるとは――
「俺の忍耐を試しているのか?教授」
呆れて呟きながら、アルヴィーゼはイオネの隣に移動し、剥き出しの肩に自分の着ていた上衣を掛けてやった。胡桃色の髪が馬車の窓から漏れる月明かりに照らされ、黄金に光っている。
誘われるように手を伸ばして、髪に触れた。見た目通りするするとして柔らかい絹糸のような髪が指を先をくすぐり、アルヴィーゼの中に暗い情念を生んだ。
「ん…」
一向に眠りから覚めないイオネが身をよじると、まぶたの動きに合わせて長い睫毛が震える。
頭の中は学問ばかりで自分の価値を考えず、その気儘な振る舞いが男をどれほど駆り立てるのかを頭から理解していない。全くおかしな女だと思いながら、この女が奇妙なほど欲しくなった。だが、まだ時期尚早だ。これを余すことなく完全に自分のものにするためには、まだ機を成熟させる必要がある。
そのためなら、今すぐこのドレスを暴いてその肌に触れたい欲望を抑えることもやぶさかではない。
馬車が屋敷に着くと、戸を開けたドミニクが眠りこけているイオネを見て目を丸くした。
「随分とお疲れだったようですね」
「それに葡萄酒を呷っていたからな」
ドミニクがイオネを運ぼうと手を伸ばすと、アルヴィーゼが制した。
「いい、俺が運ぶ」
ドミニクは意外そうにちらりとアルヴィーゼを見た後、何か言いたげに含み笑いをしていたが、アルヴィーゼは黙殺してイオネを横向きに抱えた。ドレスの下で、寝息に合わせて肌が柔らかく上下している。
アルヴィーゼはイオネを寝台に横たえて靴だけ脱がせ、その愛らしい爪先を親指で撫でた後、後ろに控えていたソニアを振り返った。
「後を頼む」
「かしこまりました」
ソニアは恭しく頭を下げると、にこにこしながらアルヴィーゼに小さな声で言った。
「真珠の首飾りがよくお似合いでいらっしゃいます」
アルヴィーゼは無表情のまま、にこにこと満面の笑みを浮かべたソニアを一瞥し、ドミニクと共にそのまま寝室を後にした。
「アルヴィーゼさまからの贈り物だとお伝えしなくてよろしいのですか」
ドミニクが訊ねた。ちょっと面白がっているふうでもある。
「あの女が素直に受け取ると思うか?」
アルヴィーゼは無愛想にそう答えたので、ドミニクは内心でひどく驚いた。
(珍しいこともあったものだ)
真珠の首飾りは、ソニアがイオネのドレスを仕立てていることを知ったアルヴィーゼが職人に作らせたものだ。ところが、贈り物として渡せば、イオネは受け取る理由がないなどと言って突き返すに違いない。そこで、ドレスの予算で賄ったことにするようソニアに言い含めておいたのだった。
ドミニクは物心ついた頃から一つ歳上のアルヴィーゼの側近として育ってきた。主従ではあるものの、それよりも互いに兄弟や気心の知れた幼馴染のような関係に近い。
少年の頃からアルヴィーゼは、家柄も然ることながら、秀麗な容姿に加えて女性の扱いが上手く、引く手数多といった感じだった。当然、贈り物を女性に受け取らせるための小細工などしたこともない。
(そのアルヴィーゼさまが、女性への贈り物にここまで気を遣うとは)
なかなか面白いことになっている。
イオネは夜更けに目を覚ました。サイドテーブルの時計に目をやると、午前一時を回っている。ワインを一気に流し込んだせいか、頭が重い。
酔っ払ったせいで、いろいろと鬱屈していたものを公爵にぶちまけてしまった。
(あの人が元凶のことは確かに多いけど、ほとんど八つ当たりだったわね)
そう自省する程度には、ちょっとした罪悪感がある。
ドレスは既に脱がされ、寝衣に着替えさせられているが、肌に糸杉に似た匂いが残っていることに気付くと、何だかひどく落ち着かなくなった。
「…お風呂に入ろう」
そうすれば頭もすっきりするし残り香も落ちるだろう。誰もいなければ、自分で湯を沸かせばいい。炭と火を借りるくらいならば咎められないはずだ。
イオネがふらふら寝室を出て行くと、ちょうどマレーナと鉢合わせた。火の番をして見回っていたらしい。
「まあアリアーヌ教授。お目覚めでいらっしゃいますか」
目尻に皺を寄せてマレーナが言った。
「うん、お風呂に入りたいの」
イオネがぼんやりして子供のような口調で答えると、マレーナもつられて子供に言うような口調になった。
「あらあら。ではすぐに湯殿のご用意を致しましょうね。教授のお湯殿ももうお使い頂けますけれど、そちらになさいますか」
どうやら無事に移築工事が終わったらしい。想定より随分早いようだが、もう驚くことも面倒だ。イオネはうん、と頷くと、あとの一切をマレーナに任せた。
マレーナはさすがにソニアの教育係をしていただけあって、することに抜かりがなかった。いつの間に覚えたのか、一般的なものとは勝手の違うイオネ設計の浴室の用意を滞りなく終え、仕上げにイオネの好きなハーブを浴槽に浮かべた。
浴室の用意を待つ間、イオネは自室でマレーナが酔い覚ましに用意してくれたタンポポとペパーミントの茶を飲みながら、話好きなマレーナが片手間に話しかけてくる内容に、いちいち上の空で相槌を打っている。
「それにしてもずいぶんお過ごしになられましたこと」
「えっ」
出し抜けに話を変えられて、イオネは頓狂な声をあげた。
「お疲れの時にお酒を呷るものではございませんよ」
誰に聞いたのか、たしなめるようにマレーナが言った。なんだか気まずい。そしてこの時、ようやく馬車に乗った後の記憶がないことに気付いた。
(どうやって寝台で寝たんだっけ)
無言で思案していると、訊くまでもなくマレーナが答えた。
「旦那さまがアリアーヌ教授を担いでお帰りになった時は、どうなさったのかと心配いたしました」
(あの男にまた借りをつくってしまった)
イオネはバツが悪くなってまぶたを伏せた。どういうわけか、一番弱みを見せたくない相手にみっともないところばかりを見られている気がする。
久々に入った自慢の浴室は最高だった。本当に内部がそのまま移築されたらしく、構造は以前と全く同じだ。ただし、粗い石壁は大理石に変わっており、この屋敷に似つかわしい外観になっている。
(なかなかやる)
以前使っていた石よりも大理石の壁の方が熱が伝わりやすく、床も室内も温まりやすい。イオネも本当は大理石を使いたかったが、さすがに高価な大理石を惜しげも無く使えるほどの予算はなかったのだ。
湯船に身を沈めると、浴槽に浮かべたマジョラムとラヴェンダーが香ってイオネの鼻腔を爽やかに満たした。
イオネは湯の中で、アルヴィーゼに言われた言葉を反芻している。
――お前は自分の考えでしか物事を捉えない。
(だって他人の考えなんて分からないじゃない)
だから自分が正しいと思うことをしてきたのだ。誤解が生じた時はそれを解く努力をするべきだし、少なくとも自分はそうしてきた。そのために言葉があるのではないか。
しかし、それでは不十分なのだろうか。もやもやした気分は次第に蒸気と一緒に発散していったが、相変わらず頭の中はまとまらないままだ。
(一理あるかもしれない。でも、真理ってなに?)
――俺の言動の理由を考えたことは?
「うるさいわね、知らないわよそんなの…」
イオネは頭の中で不遜に笑う公爵に小さく毒づいた。
あの男は、イオネには複雑すぎる。人を食ったような態度に傲慢な振る舞い、挙げ句の果てにとんでもない狼藉を平気でする男だ。
それでも、今日はあの強引さに助けられてしまった。
(それに、なんだか――)
びりりと身体の中を不可思議な熱が走った。理由はよく分からないが、なぜか激しく動揺した。他の男に身体を触られることにはひどい嫌悪感があるのに、公爵だけは違う。ただ、落ち着かなくて腹が立つだけだ。
イオネは浅い浴槽に顔を沈め、ぶくぶくとあぶくを吹いた。今までに直面したどんな問題よりも、難解だ。
あれほど言って聞かせたばかりなのに、男の前で無防備に寝息を立てるとは――
「俺の忍耐を試しているのか?教授」
呆れて呟きながら、アルヴィーゼはイオネの隣に移動し、剥き出しの肩に自分の着ていた上衣を掛けてやった。胡桃色の髪が馬車の窓から漏れる月明かりに照らされ、黄金に光っている。
誘われるように手を伸ばして、髪に触れた。見た目通りするするとして柔らかい絹糸のような髪が指を先をくすぐり、アルヴィーゼの中に暗い情念を生んだ。
「ん…」
一向に眠りから覚めないイオネが身をよじると、まぶたの動きに合わせて長い睫毛が震える。
頭の中は学問ばかりで自分の価値を考えず、その気儘な振る舞いが男をどれほど駆り立てるのかを頭から理解していない。全くおかしな女だと思いながら、この女が奇妙なほど欲しくなった。だが、まだ時期尚早だ。これを余すことなく完全に自分のものにするためには、まだ機を成熟させる必要がある。
そのためなら、今すぐこのドレスを暴いてその肌に触れたい欲望を抑えることもやぶさかではない。
馬車が屋敷に着くと、戸を開けたドミニクが眠りこけているイオネを見て目を丸くした。
「随分とお疲れだったようですね」
「それに葡萄酒を呷っていたからな」
ドミニクがイオネを運ぼうと手を伸ばすと、アルヴィーゼが制した。
「いい、俺が運ぶ」
ドミニクは意外そうにちらりとアルヴィーゼを見た後、何か言いたげに含み笑いをしていたが、アルヴィーゼは黙殺してイオネを横向きに抱えた。ドレスの下で、寝息に合わせて肌が柔らかく上下している。
アルヴィーゼはイオネを寝台に横たえて靴だけ脱がせ、その愛らしい爪先を親指で撫でた後、後ろに控えていたソニアを振り返った。
「後を頼む」
「かしこまりました」
ソニアは恭しく頭を下げると、にこにこしながらアルヴィーゼに小さな声で言った。
「真珠の首飾りがよくお似合いでいらっしゃいます」
アルヴィーゼは無表情のまま、にこにこと満面の笑みを浮かべたソニアを一瞥し、ドミニクと共にそのまま寝室を後にした。
「アルヴィーゼさまからの贈り物だとお伝えしなくてよろしいのですか」
ドミニクが訊ねた。ちょっと面白がっているふうでもある。
「あの女が素直に受け取ると思うか?」
アルヴィーゼは無愛想にそう答えたので、ドミニクは内心でひどく驚いた。
(珍しいこともあったものだ)
真珠の首飾りは、ソニアがイオネのドレスを仕立てていることを知ったアルヴィーゼが職人に作らせたものだ。ところが、贈り物として渡せば、イオネは受け取る理由がないなどと言って突き返すに違いない。そこで、ドレスの予算で賄ったことにするようソニアに言い含めておいたのだった。
ドミニクは物心ついた頃から一つ歳上のアルヴィーゼの側近として育ってきた。主従ではあるものの、それよりも互いに兄弟や気心の知れた幼馴染のような関係に近い。
少年の頃からアルヴィーゼは、家柄も然ることながら、秀麗な容姿に加えて女性の扱いが上手く、引く手数多といった感じだった。当然、贈り物を女性に受け取らせるための小細工などしたこともない。
(そのアルヴィーゼさまが、女性への贈り物にここまで気を遣うとは)
なかなか面白いことになっている。
イオネは夜更けに目を覚ました。サイドテーブルの時計に目をやると、午前一時を回っている。ワインを一気に流し込んだせいか、頭が重い。
酔っ払ったせいで、いろいろと鬱屈していたものを公爵にぶちまけてしまった。
(あの人が元凶のことは確かに多いけど、ほとんど八つ当たりだったわね)
そう自省する程度には、ちょっとした罪悪感がある。
ドレスは既に脱がされ、寝衣に着替えさせられているが、肌に糸杉に似た匂いが残っていることに気付くと、何だかひどく落ち着かなくなった。
「…お風呂に入ろう」
そうすれば頭もすっきりするし残り香も落ちるだろう。誰もいなければ、自分で湯を沸かせばいい。炭と火を借りるくらいならば咎められないはずだ。
イオネがふらふら寝室を出て行くと、ちょうどマレーナと鉢合わせた。火の番をして見回っていたらしい。
「まあアリアーヌ教授。お目覚めでいらっしゃいますか」
目尻に皺を寄せてマレーナが言った。
「うん、お風呂に入りたいの」
イオネがぼんやりして子供のような口調で答えると、マレーナもつられて子供に言うような口調になった。
「あらあら。ではすぐに湯殿のご用意を致しましょうね。教授のお湯殿ももうお使い頂けますけれど、そちらになさいますか」
どうやら無事に移築工事が終わったらしい。想定より随分早いようだが、もう驚くことも面倒だ。イオネはうん、と頷くと、あとの一切をマレーナに任せた。
マレーナはさすがにソニアの教育係をしていただけあって、することに抜かりがなかった。いつの間に覚えたのか、一般的なものとは勝手の違うイオネ設計の浴室の用意を滞りなく終え、仕上げにイオネの好きなハーブを浴槽に浮かべた。
浴室の用意を待つ間、イオネは自室でマレーナが酔い覚ましに用意してくれたタンポポとペパーミントの茶を飲みながら、話好きなマレーナが片手間に話しかけてくる内容に、いちいち上の空で相槌を打っている。
「それにしてもずいぶんお過ごしになられましたこと」
「えっ」
出し抜けに話を変えられて、イオネは頓狂な声をあげた。
「お疲れの時にお酒を呷るものではございませんよ」
誰に聞いたのか、たしなめるようにマレーナが言った。なんだか気まずい。そしてこの時、ようやく馬車に乗った後の記憶がないことに気付いた。
(どうやって寝台で寝たんだっけ)
無言で思案していると、訊くまでもなくマレーナが答えた。
「旦那さまがアリアーヌ教授を担いでお帰りになった時は、どうなさったのかと心配いたしました」
(あの男にまた借りをつくってしまった)
イオネはバツが悪くなってまぶたを伏せた。どういうわけか、一番弱みを見せたくない相手にみっともないところばかりを見られている気がする。
久々に入った自慢の浴室は最高だった。本当に内部がそのまま移築されたらしく、構造は以前と全く同じだ。ただし、粗い石壁は大理石に変わっており、この屋敷に似つかわしい外観になっている。
(なかなかやる)
以前使っていた石よりも大理石の壁の方が熱が伝わりやすく、床も室内も温まりやすい。イオネも本当は大理石を使いたかったが、さすがに高価な大理石を惜しげも無く使えるほどの予算はなかったのだ。
湯船に身を沈めると、浴槽に浮かべたマジョラムとラヴェンダーが香ってイオネの鼻腔を爽やかに満たした。
イオネは湯の中で、アルヴィーゼに言われた言葉を反芻している。
――お前は自分の考えでしか物事を捉えない。
(だって他人の考えなんて分からないじゃない)
だから自分が正しいと思うことをしてきたのだ。誤解が生じた時はそれを解く努力をするべきだし、少なくとも自分はそうしてきた。そのために言葉があるのではないか。
しかし、それでは不十分なのだろうか。もやもやした気分は次第に蒸気と一緒に発散していったが、相変わらず頭の中はまとまらないままだ。
(一理あるかもしれない。でも、真理ってなに?)
――俺の言動の理由を考えたことは?
「うるさいわね、知らないわよそんなの…」
イオネは頭の中で不遜に笑う公爵に小さく毒づいた。
あの男は、イオネには複雑すぎる。人を食ったような態度に傲慢な振る舞い、挙げ句の果てにとんでもない狼藉を平気でする男だ。
それでも、今日はあの強引さに助けられてしまった。
(それに、なんだか――)
びりりと身体の中を不可思議な熱が走った。理由はよく分からないが、なぜか激しく動揺した。他の男に身体を触られることにはひどい嫌悪感があるのに、公爵だけは違う。ただ、落ち着かなくて腹が立つだけだ。
イオネは浅い浴槽に顔を沈め、ぶくぶくとあぶくを吹いた。今までに直面したどんな問題よりも、難解だ。
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