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第一話
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おれは、いつも夢想している。
足元にある、「あの方」の似姿を踏みつけにするとき。
きっと、空は地上へと堕ち。
大地は引き裂かれ、全てが崩れてゆき。
海が泡立って押し寄せ、何もかもを飲み込むだろうと。
天の御使いが、鉢から災厄を大地へ零すことで、ひとも獣もひとしく罰せられ滅せられる。
そうなるはずだという期待が、おれのこころを鷲掴みにするんだ。
そしていつもおれは、こころがはり裂けんばかりに震えながら膨らむのを感じながら。
「あの方」の似姿を踏みつけるんだ。
でも、いつもいつも同じように。
何もおこることはなく、そしておれは赦され放たれる。
そのことで、おれは失望することはない。
むしろ、おれは満たされる。
なぜなら、おれはある確信にたどりつくからだ。
全ては、にせものなのだと。
この世にある悪は本当の悪などではなく、どこかに善もまざりこんだ偽りの悪に過ぎない。
だから、天の御使いはにせものの悪でおれたちを罰しにきたりはしないのだ。
逆に言えば、この世に本当の善などなく、どのように信仰を深め徳をつんだところで、どこかに私利私欲の悪はまざりこんで。
それは本当の善ではなく、「あの方」へはとどいたりしないのだ。
この世のどこにも「あの方」の影は、ない。
だからおれはにせものを踏みつけ、偽りの悪をなして信仰から「あの方」の影を取り除く。
いつわりの善や信仰から、「あの方」を解放してみせる。
そうして、おれは「あの方」は真に汚れなく絶対の彼方にだけいらっしゃるのだと。
より深い憧れで、こころを満たすのだ。
「あの方」は、この世にいらっしゃらない。
だからこそ。
「あの方」は、かならずいらっしゃる。
偽りでは届かない、真実の世界に。
かならず、いらっしゃる。
足元にある、「あの方」の似姿を踏みつけにするとき。
きっと、空は地上へと堕ち。
大地は引き裂かれ、全てが崩れてゆき。
海が泡立って押し寄せ、何もかもを飲み込むだろうと。
天の御使いが、鉢から災厄を大地へ零すことで、ひとも獣もひとしく罰せられ滅せられる。
そうなるはずだという期待が、おれのこころを鷲掴みにするんだ。
そしていつもおれは、こころがはり裂けんばかりに震えながら膨らむのを感じながら。
「あの方」の似姿を踏みつけるんだ。
でも、いつもいつも同じように。
何もおこることはなく、そしておれは赦され放たれる。
そのことで、おれは失望することはない。
むしろ、おれは満たされる。
なぜなら、おれはある確信にたどりつくからだ。
全ては、にせものなのだと。
この世にある悪は本当の悪などではなく、どこかに善もまざりこんだ偽りの悪に過ぎない。
だから、天の御使いはにせものの悪でおれたちを罰しにきたりはしないのだ。
逆に言えば、この世に本当の善などなく、どのように信仰を深め徳をつんだところで、どこかに私利私欲の悪はまざりこんで。
それは本当の善ではなく、「あの方」へはとどいたりしないのだ。
この世のどこにも「あの方」の影は、ない。
だからおれはにせものを踏みつけ、偽りの悪をなして信仰から「あの方」の影を取り除く。
いつわりの善や信仰から、「あの方」を解放してみせる。
そうして、おれは「あの方」は真に汚れなく絶対の彼方にだけいらっしゃるのだと。
より深い憧れで、こころを満たすのだ。
「あの方」は、この世にいらっしゃらない。
だからこそ。
「あの方」は、かならずいらっしゃる。
偽りでは届かない、真実の世界に。
かならず、いらっしゃる。
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