神の沈黙、闇の豊穣、偽りの祈り

ルサルカ

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第十話

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 神父さまは、ミストレスの差し出した手に向かってゆらりと歩もうとした。

「やめておけ」

 血塗れで壮絶な姿となったエイレシアが、立ち上がる。

 驚くべきことに、その胸に刻まれた傷は癒えていた。

「あなたは、一体」

 神父さまの言葉に、エイレシアは侮蔑の笑みを投げる。

 そして、ミストレスに向き合う。

「お姉さま、夜の獣、邪悪な怪物。わたしは、あなたを救いに来た」

 ミストレスは笑った。

「何を言ってるの? 妹よ。あなたとわたしは共に始祖の手によって、不死の呪いを授けられた。おまえとわたしは、おなじ存在。始祖の魂の受け皿」

 エイレシアは、頷く。

「お姉さま、わたしは世紀を越え、あなたを殺す術を探しついに見出した」

 ミストレスが、眉間に皺をよせる。

「何を言っているの?」

 エイレシアは緩く笑いながら、手をあげる。

 巨人の銃身を束ねた腕が持ち上がった。

 その銃身の束が回転しなかまら、火を噴く。

 ミストレスの顔面が粉砕され赤い大輪の花が闇に咲いた。

 頭部を粉砕されたミストレスが、地に崩れ堕ちる。

 ごとりと巨人の腕が地に落ち、中から杭が姿を現す。

 エイレシアはその腕を取り外し、手に持つ。

 エイレシアは、呟くように言った。

「我らに始祖がかけた不死の呪い、それは聖なる書に刻まれた呪によって解体できる」

 エイレシアは杭を中に収めた巨人の手を持って、地に倒れたミストレスに向かって歩む。

「わたしは、聖なる書の呪を凝縮し杭に込めた。それを第七聖典と、名付けた」

 エイレシアは、第七聖典を構え地に倒れたミストレスに向ける。

「さあ、お姉さま。あなたを不死の呪いから解放しよう。それこそが我らの悲願」

 ミストレスの粉砕された顔が、急速に再生されつつある。

 血の中から白いかんばせが、姿を現しつつあった。

 そのミストレスの心臓に、エイレシアは第七聖典を向ける。

「さようなら、お姉さま」

 その瞬間、何か黒い影がエイレシアの前に現れる。

 神父さまだった。

 火を噴き発射された杭は、神父さまの胸を貫いた。

「何を馬鹿な」

 エイレシアは呻きながら、後ずさる。

 神父さまは胸を杭に貫かれつつも、穏やかな笑みを浮かべておられた。

「思い出した。思い出したのだよ、エイレシア殿」

 神父さまは、血を吐きながら歩む。

 エイレシアは困惑したように首を振りながら、下がる。

 神父さまは銃身を束ねた巨人の腕を拾い上げると手にされた。

「霊操術は、死の呪いを解毒する因子を活性化する。それが霊操術の、秘密」

「馬鹿な」

 エイレシアは呻く。

「あなたを救おう、エイレシア殿」

 神父さまの手の中で、巨人の腕が火を噴く。

 エイレシアの胸で赤い血飛沫があがり、エイレシアは膝をついた。

 神父さまは、そのエイレシアに口づけをなさる。

「これで、あなたに解毒の因子が渡った。あなたは神の御下へとゆく」

 エイレシアは、苦しげに呟く。

「お姉さまを、お姉さまに救済を」

 神父さまは、頷く。

「ミストレスは霊操術を、行った。心配ない、彼女の中でも解毒の因子が目覚めている」

 ふっと、エイレシアは笑う。

「よ、かっ、た」
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