性癖粉砕骨折BL短編集

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お人好し魔王と人間嫌いの従者

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陳情の数々を見て、俺は大袈裟な程溜息をつく。
いや、俺の反応は正しい。この阿呆が間違っているのだ。
「お前、このグロ文書の山を見てどう思う?」
「由々しき事態だ。対処せねばならぬな」
「で? やる事は?」
「軍隊を派遣して各個処理」
「対症療法じゃ根治しねーんだよなぁー! 害虫は片っ端から根絶しようぜー!?」
「それでは必死に生きている虫けら達が可哀想では無いか」
「病気を運んで来て致死量の血を吸う巨大で厄介なモスキートじゃ無ければなぁ!」
俺が机を叩いて抗議するが、上司は何のその。
ニコニコずっと笑顔を浮かべているのだから、俺も苦い顔しか出来ないわけである。
「お前が二千年間魔王の座についている間、人間によって何人の死者が出たか知っているか?」
「表面化しているだけで二億五千万人。仮に私が二千年前人間を滅ぼしていれば、死者は九千で済んだだろう」
「そう! お前が事態を悪化させたんだ!」
「酷い部下だ。全面戦争などすれば、辛うじてこちらが勝利するだろうが、残る民は一万の内一千。もはや再興するに足りぬ」
「滅ぶ種族もあるだろう、だが、それが民の総意だとは覚えておいてくれ」
「知っているともさ」
「この人で無しがぁーっ!」
「我々は魔人、人では無い生き物から人に擬態するよう進化しただけの生き物だからなぁ?」
全くもって性格の良い魔王様である。
やれやれとこの口論を部下達が呆れ果てて見ている。
全員俺に好意的だ。忌々しい。
二人きり、同じ部屋に戻ってから、俺はもう一度奴に説教を始める。
「あのさぁー! 敵からだけじゃなく、部下や守るべき民衆からお前を守らなきゃいけない俺の気持ち、分かるぅ!?」
何たって俺は、この男の恋人なのである。
何が楽しくて好きな奴を四六時中罵倒しなければならないのか。
「健気で愛らしいぞ」
「ド糞歪んでんなぁこのサイコパスサディスト野郎!」
「思想の正反対な相手を罵りながら愛する愚か者には丁度良い蓋だろう?」
「こんなぐちゃぐちゃの蓋にフィットしてる鍋とかぶっ壊れてんじゃねーか畜生! 俺の馬鹿、アホ、ゲテモノ食い!」
「ははは、面白い奴だなぁ、お前は」
ポンポンと頭を叩かれて、俺はぐぬぬと歯軋りをする。
「いつかぜってーお前を王座から引き摺り降ろして人間を滅ぼして、お前とゆっくりランデブーしてやるからな!」
「物騒な告白だ。二千年聞いているが、そろそろ他のアプローチを考えたらどうだ、可愛いお馬鹿さん」
ほんと俺何でこんな性格百年間煮込んだ糞尿みたいにゲロヤバイ奴と付き合ってんだろう?
考えたが答えは出なくて、仕方ないので布団に慰めて貰った。
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