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ノエル
(おまけ)初詣に行こう♪
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「フランシス」は、正月三が日はお休みだ。年末の31日に通常通り出勤した後は、のんびりできるわけだ。
12月31日、俺らは今、夕食にのんびりと鍋をつついている。
「正月ってさー、俺、まともに迎えたこと無いから、おせちとかってよくわかんないんだけど……」
少しは努力してみるべきか? と思いながら灰咲さんを見ると、「別にいいだろ」と言う返事が返って来た。
「それに、お前が前に挑戦して美味かった、筑前煮ってその一つだぞ?」
「え? そうなの?」
「――多分な」
「多分って、なにそれ」
「俺だって、そんなこといちいち知らねーよ。だけどほとんどの重箱に入っていた記憶があるからさ」
「ふうん……」
灰咲さんの所にお世話になったおかげで、みんなが楽しむイベント事を自分も味わう事が出来るってことが嬉しかった俺は、正月もそんな気分を味わいたいって密かに思っていたんだ。
だからさ、形だけでもしっかりと雰囲気を味わいたかったんだけど……。
「俺の中では、年末年始と言ったら年越しそばや雑煮に初詣ってのが定番だけどな」
「でも、おせち食べてたんでしょ?」
「……まあ、そうだけど。でも俺は、熱々の雑煮をフーフー言いながら食べるのも好きだったけどな」
「じゃあ、おせちは作らなくてもいいの?」
「ああ、いいよ。……そうだな、もし来年おせちが食べたかったら、事前に良さそうなものを予約しておくか?」
「いや、俺が作る」
「え?」
「あと一年あるわけだろ? それまでにちゃんと調べて、俺が作る!」
「そう……か」
「うん!」
そりゃ、プロの人のが美味しいって決まってるんだろうけどさ。やっぱり俺は、自分が作った物を食べてもらって、そして美味しいって言ってもらう事が何よりも嬉しいんだ。
ご飯を食べ終わり片付けて、のんびりとソファでくつろぐ。
別に見たいテレビがあるわけでもないけれど、シンとしてるのも何なのでBGM代わりに点けている。
俺と灰咲さんの距離は、人ひとり座れるくらいのスペースを空けての距離だ。
「…………」
知らないふりをしながら、さりげなく灰咲さんに近寄る。
ちょっとずつ、ちょっとずつ近づいて、しまいには灰咲さんにぴったりくっつき凭れかかった。
「…………」
灰咲さんは一瞬、チラッとこちらを見たけれど、何も言わずにまた前を向いた。そして腕を俺の肩に回して、ポンポンと優しくたたいてくれた。
これは……!
俺が甘えてもOKな気分って事だよな!
どうしよう、そわそわそして来た。
ソワソワしながら、俺はエイッ! と、灰咲さんに抱き着く。
そして愛犬がご主人様に甘えるように、グリグリと体を擦り付けてみた。
「……なんだ、どうした?」
「……別に」
普段こんな甘えた行動をあまりしない俺だから、灰咲さんはちょっと驚いたようだった。
多分、俺の中では灰咲さんは、ダントツで甘えたい人ナンバーワンになっているみたいなんだ。
あの、クリスマスの一件から……。
「変な奴」
そう言いながらも灰咲さんは、俺を特に邪魔に思っている様子は無かった。それどころか、俺の頭を撫でる灰咲さんの掌は温かい。
「なあ」
「うん?」
「……もう少ししたら、年越しそば作ってやろうか?」
「え? 灰崎さんが? 作れるの?」
「一人の時は、それなりに自炊もしてたんだぞ」
「あ、そっか。……うん、じゃあお願いします」
「了解」
ニッコリと笑いながら返事をした灰咲さんが、まるで慈しむように俺の額を撫でる。
……うわ、どうしよう。モゾモゾ? ふわふわ?
変な気持ちになっちゃう。
……うう~、こっばずかしいような嬉しいようなわけわかんない気持ちだぁ~。
時々陥る灰崎さんへの感情。
俺はモゾモゾふわふわとした気持ちのまま、灰咲さんが年越しそばを作りに行ってくれるまで、それでもしっかりと灰咲さんにくっ付いていた。
12月31日、俺らは今、夕食にのんびりと鍋をつついている。
「正月ってさー、俺、まともに迎えたこと無いから、おせちとかってよくわかんないんだけど……」
少しは努力してみるべきか? と思いながら灰咲さんを見ると、「別にいいだろ」と言う返事が返って来た。
「それに、お前が前に挑戦して美味かった、筑前煮ってその一つだぞ?」
「え? そうなの?」
「――多分な」
「多分って、なにそれ」
「俺だって、そんなこといちいち知らねーよ。だけどほとんどの重箱に入っていた記憶があるからさ」
「ふうん……」
灰咲さんの所にお世話になったおかげで、みんなが楽しむイベント事を自分も味わう事が出来るってことが嬉しかった俺は、正月もそんな気分を味わいたいって密かに思っていたんだ。
だからさ、形だけでもしっかりと雰囲気を味わいたかったんだけど……。
「俺の中では、年末年始と言ったら年越しそばや雑煮に初詣ってのが定番だけどな」
「でも、おせち食べてたんでしょ?」
「……まあ、そうだけど。でも俺は、熱々の雑煮をフーフー言いながら食べるのも好きだったけどな」
「じゃあ、おせちは作らなくてもいいの?」
「ああ、いいよ。……そうだな、もし来年おせちが食べたかったら、事前に良さそうなものを予約しておくか?」
「いや、俺が作る」
「え?」
「あと一年あるわけだろ? それまでにちゃんと調べて、俺が作る!」
「そう……か」
「うん!」
そりゃ、プロの人のが美味しいって決まってるんだろうけどさ。やっぱり俺は、自分が作った物を食べてもらって、そして美味しいって言ってもらう事が何よりも嬉しいんだ。
ご飯を食べ終わり片付けて、のんびりとソファでくつろぐ。
別に見たいテレビがあるわけでもないけれど、シンとしてるのも何なのでBGM代わりに点けている。
俺と灰咲さんの距離は、人ひとり座れるくらいのスペースを空けての距離だ。
「…………」
知らないふりをしながら、さりげなく灰咲さんに近寄る。
ちょっとずつ、ちょっとずつ近づいて、しまいには灰咲さんにぴったりくっつき凭れかかった。
「…………」
灰咲さんは一瞬、チラッとこちらを見たけれど、何も言わずにまた前を向いた。そして腕を俺の肩に回して、ポンポンと優しくたたいてくれた。
これは……!
俺が甘えてもOKな気分って事だよな!
どうしよう、そわそわそして来た。
ソワソワしながら、俺はエイッ! と、灰咲さんに抱き着く。
そして愛犬がご主人様に甘えるように、グリグリと体を擦り付けてみた。
「……なんだ、どうした?」
「……別に」
普段こんな甘えた行動をあまりしない俺だから、灰咲さんはちょっと驚いたようだった。
多分、俺の中では灰咲さんは、ダントツで甘えたい人ナンバーワンになっているみたいなんだ。
あの、クリスマスの一件から……。
「変な奴」
そう言いながらも灰咲さんは、俺を特に邪魔に思っている様子は無かった。それどころか、俺の頭を撫でる灰咲さんの掌は温かい。
「なあ」
「うん?」
「……もう少ししたら、年越しそば作ってやろうか?」
「え? 灰崎さんが? 作れるの?」
「一人の時は、それなりに自炊もしてたんだぞ」
「あ、そっか。……うん、じゃあお願いします」
「了解」
ニッコリと笑いながら返事をした灰咲さんが、まるで慈しむように俺の額を撫でる。
……うわ、どうしよう。モゾモゾ? ふわふわ?
変な気持ちになっちゃう。
……うう~、こっばずかしいような嬉しいようなわけわかんない気持ちだぁ~。
時々陥る灰崎さんへの感情。
俺はモゾモゾふわふわとした気持ちのまま、灰咲さんが年越しそばを作りに行ってくれるまで、それでもしっかりと灰咲さんにくっ付いていた。
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