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無自覚美少年の男子校ライフ♪

蓮先輩のお家♪

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首の後ろをするりと撫でられて、力が抜けそうになる。
いくらなんでも往来でこの状況はヤバいので、先輩の腕を掴んで必死で止めた。
きっと先輩も僕の顔を見て、どうにか悟ってくれたんだろう。僕から手を離して、歩き始めた。

先輩の後をついて行きながらきょろきょろする。
少し先にちょっと大きめのお屋敷が目に入った。
見上げるような大きな門に、広い庭。

結構な豪邸だなあ。どんな人が住んでるんだろう。
横目で見ながら通り過ぎようとしたら、先輩に腕を引かれる。

「ここだよ」
「え?」

唖然としながら手を引かれ、広い庭を進んで玄関に入る。するとお手伝いさんらしき人が顔を出した。

「蓮さん、お帰りなさい」
「ただいま、美代さん…。て、あれ? まだいたの? もう帰ったかと思ってた」
「ちょうど今帰るところです。…でも、明日は本当に昼前からで良いんですか?」
「ああ。今日友達泊めるから、どうせ朝は遅いし。ゆっくり来てよ」
「分かりました。それじゃあ」

家政婦さんは僕にも軽く会釈をして、玄関を出て行った。


リビングに通されて、目が点になる。

なんだこれ。
スッゲ、広い! 子供が鬼ごっこくらい出来そうな広さだ。

「荷物、適当に置いてて良いから。何か、飲む?」
「あ、はい。緊張して咽喉かわいちゃった」

「緊張?」
先輩が笑いながら振り向く。

「俺相手に、なに緊張するんだ?」
「え、だっだって、初めてお家に行くんだし、それに…」

お、お泊りだなんて…っ!
一人で勝手に恥ずかしがって悶絶していると、不意を突かれて抱きしめられた。

「それに…?」

分かってるだろうに、意地悪く先輩が僕にその先を促す。僕はそれに抵抗するべく、グリグリと額を先輩の胸にこすり付けた。

「ふふっ…」

…?
今、先輩、笑った?
チラッと視線を上げて先輩を盗み見ると、凄く楽しげだ。

「伸之助とは何をしてても楽しいな」
「え?」
「…人に好かれて嬉しいっていう気持ちより、ずっとずっと楽しい。色んな知りたくもない感情もあるけど、でもそういう気持ちがあるからこそよけいに、幸せな気持ちが倍増するのかもしれないけどな」

…先輩。

「僕も…。僕もそうです。嫉妬したり羨んだり、ぐちゃぐちゃな感情に自己嫌悪に陥ったりしても、やっぱり先輩に会いたいって思います」
「…そうか」

一瞬、目を細めて僕を見た後、先輩は「よしっ」と掛け声をかける。
「なにが良い? コーヒーよりはアイスティーの方が良いかな? ○○ジュースもあるぞ」

○○ジュースって、あのまじめなジュース?
あれ、僕めっちゃ好き!

「ジュースが良いです!」
つい意気込んで返事をしてしまい、先輩に笑われる。

…今きっと子供!って思われた~w

確かに先輩に比べると子供かもしれないけどさぁ。
ちょっぴり拗ねて、ぶーたれてると、先輩が良く冷えたジュースを持ってきてくれた。
ストローに口を付けて一口啜る。
あのナントモ言えない甘酸っぱいまじめな味が、口の中に広がった。

美味しい…、幸せだぁ。
ふにゃん、と身も心も幸せに浸っていると、そんな僕の顔を、先輩が幸せそうに微笑ながら見ていた。
ちょっぴり、ドキン。
…先輩はどんな時でも王子様だよな…。


「さて、と」
突然先輩が立ち上がる。

「もうそろそろ時間だな。着替えてくるからちょっと待ってろ」
「はい」

先輩は軽く手を上げて、広いリビングを出て行った。
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