これは兄さんじゃありません

くるむ

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第一章

とてつもない問題 2

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「警察に……、通報した方がいいんじゃないのか?」

慎重に、新さんが口を開いた。

「……警察?」
「ああ。……あの人を……、食べたっていうし……」

……食べた。
食べたって、食べたって……!!

「その方がいいかもしれないな。……だけど、警察になんて言うんだ? この男が異世界人で、女性を食べてしまったと……?」
「…………」
「…………」


しばらく続く重い沈黙。

異世界人は僕らが何を話しているのか理解できているのかいないのか、顔色一つ変えずにベッドでくつろいでいた。


「……こいつが本当に異世界人だってわかったら、きっと研究所かなんかに入れられるんだろうな」
「解剖とか」

……!?
解剖!?

「ちょっと待って!! ダメだよ、そんなこと!!」

「志音……」
「だって! だって、そうでしょ!? 兄さんは……、この人は、この世界の常識を分からなかっただけなんだよ? それなのに、研究所とか解剖とかかわいそうじゃないか!」

「志音、壱琉にそっくりだからって……、気持ちは分かるけど人1人が亡くなっているんだぞ?」

分かってる!
そんなことわかってるよ、僕だって!

「だけど……、だけど絶対にイヤだ!! 兄さんを解剖だなんて、絶対に……絶対にイヤだよ!!」
「志音……。こいつは壱琉にそっくりだけど壱琉じゃ……」
「分かってるってば! 僕だってそのくらいは分かってるよ!!」

僕の主張が正しくないことは分かってるんだよ。
人が1人いなくなってしまった重大性だって、あの女性の家族や友人がどんな悲しみを背負うことになってしまうのかってことも……。

だけど。

「……僕が彼の面倒を見るから」
「はあっ!?」
「志音? お前自分が何言ってるのか分かってんのか?」

「父さんや母さんにもちゃんと事情を話して、そしてかくまってもらう。人や犬や猫を、勝手に食べちゃいけないことも分かってもらうようにするから……。だから……」

「志音……」

みんな絶句していた。
だけど、ボロボロと涙をこぼしながら訴える僕に、それ以上誰も警察に通報しろと言い出す人はいなかった。


「――分かった。……だけど、いきなり家に連れ帰ったりしてもご両親の心労をより大きくするだけじゃないのか?」
「……え?」
「ちょうど夏休みも真っ最中だし、……晴斗、お前んち確か山奥に別荘所有してたよな?」
「ん? ああ」

大翔さんの問いかけに、キョトンと晴斗さんが返事を返した。

「なるほど、そういうことか。じゃあ、俺も協力しよう」

ヤレヤレと言った感じで、新さんは腰に手を当てて頷いた。


……?
協力って何?
そういうことって??

大翔さんの言葉を瞬時に理解したのは新さんだけで、僕と晴斗さんは目をぱちくりとさせていた。
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