これは兄さんじゃありません

くるむ

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第二章

揺れる想い

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「えっと、どういうこと? 僕にも分かるように説明して?」
「ああ。訓練しなきゃいけないだろってこと。加熱した肉を食べることに慣れてもらえれば、ここで生活することだって出来るだろ」
「……ああ! うん、そうだね。そうだよね! ありがとう! ありがとう大翔さん!!」

嬉しくって、やっと安心できた僕は何度も何度もお礼を言った。大翔さんも新さんも笑って頷いて、そして晴斗さんに別荘を使ってもいいか、家族の許可を取ってもらった。

「いいってさ。しかも運がいいことに、先週まで従弟たちが借りてたらしいから掃除しなくてもすぐ使えるようだぞ」
「ありがとう、晴斗さん。お世話になります!」

……というわけで、僕らは各々の家に連絡をして、兄さんの訓練のためさらに一週間晴斗さんの別荘で過ごすことになった。
食べられてしまった人には悪いけど、僕らはそのままチェックアウトを済ませてホテルから出た。



朝の10時にホテルを出発して電車に長々と揺られ、レンタカーを借りて晴斗さんの別荘に到着した時には、既に夕方になっていた。
見た目に反してセレブな晴斗さんは、別荘で過ごすことに慣れていて、手慣れた具合に諸々の手続きを済ませていた。
そして山の麓にある取次所で、食料をどっさり詰めこんだ荷物を受け取った。

「悪いな、晴斗。後でちゃんと清算するから人数分に分けて教えてくれ」
「うん」
「ごめんね、晴斗さん。みんなも……。無理言っちゃって」

いろいろ迷惑かけてる自覚はあるんだ。
ただどうしても、この兄さんそっくりの異世界人を放っておくことが、僕にはどうしても出来ない。
だけどこの異世界人は、自分が悪いことをしているという感覚が無いからだろう。長い時間窮屈な状態に置かれていることに不満そうだ。
時々独り言のように、ぶちぶちと文句らしいことを言っている。

ただ、どうやら自分が助けてもらっている意識はあるようで、僕らにはっきり文句をいうことは無かった。

それぞれの荷物を片付けて、みんなやっと寛いでリビングのソファに座る。
チラッと、向かい側に座っている兄さんそっくりの異世界人を見ると、彼もこちらを見ていたようでパチリと目が合った。

黙って静かにこちらを見ているその顔は、本当に兄さんそっくりだった。
本物だと言ったとしても誰も否定出来ないくらいのレベルのその容姿に、僕は甘えて抱き着いてわんわん泣きたいくらいの衝動に駆られている。
もちろんそんなことは出来ないから、必死で堪えてはいるんだけど。

ジッと目と目を合わせていると、兄さん……違った、異世界人は、ほんの少し表情を和らげて僕に微笑みかけたように見えた。

……トクン。

トクン、トクン。

どうしよう、抱き着きたい!
兄さんって叫んで、何で帰ってこないんだって問い詰めて、わんわん泣いてぎゅうぎゅうと抱き着きたいよ!


恨めしいほどに激似しているこの人に、どうしても兄さんの面影を感じてしまって、僕の心は騒めき始めていた。

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