5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません

くるむ

文字の大きさ
41 / 57

番の植物

しおりを挟む
 サラとわかれた後、とんでもないことを思い出した。
「お兄様と王子を迎えに行かないと!」
「あっ!」
 流れでついてきたクリスとアーネストが顔を見合わせた。
 ルークは首をひねっている。
「ハロルドと王子? なんで?」

「あー、ジョンズ様に会いに行くって言ったら、王子も会いたいっておっしゃったもので」
「へー、そうなんだ」
 
「とにかくぼく、迎えに行ってくるから。ちょっと待ってて」
 ぼくはアーネストたちを置いて、お兄様の教室、二年の特進Aクラスへと走った。

 お兄様のいる教室とは言え、二年の特進クラスはやっぱり緊張する。ドキドキしながら教室の中を窺うと、王子と目があった。王子がお兄様を呼んで、すぐにぼくのもとに来てくれた。
「遅かったね」
「すみません、ちょっとゴタゴタしちゃったもので」
「ゴタゴタ?」
「はい、ちょっと……」
 言葉を濁すと大体のことを察してくれたのだろう。まあいいかと言って職員室へ向かった。

 ルークたちは職員室に入らず、その手前で待ってくれていた。グレアム王子とお兄様は、ルークを見た途端、一瞬目を細めたが、すぐに表情を戻した。

「失礼します。カーギル先生いらっしゃいますか?」
 声をかけると、すぐにカーギル先生が立ち上がった。
「おお、来たか。許可はもらってあるから、ジョーンズ様の準備室に行くぞ。と、随分と大人数になっているな。王子までいらっしゃるとは……」
「まずかったですか?」
 にこりと微笑みながら王子が言う。
「いや、大丈夫ですよ。勉強熱心なのはいいことです」

 カーギル先生の案内の元、ジョーンズ様の準備室に向かった。部屋は奥の方に設けられていて入ってみると職員室と同じぐらいのスペースだった。だけど内装は職員室のそれとは違い、かなり豪華だ。本棚もソファーセットもとても学校の備品には見えない。豪奢な作りは、城にあってもおかしくないようなものだ。

「失礼します」
「やあ、待っていたよ。キリンスを持っている人は誰だい?」
 ジョーンズ様はぼくらの顔を見た途端、席を立って気さくに話しかけてくれた。
 黒い瞳に黒い髪。長いその髪は後ろにくるくると巻くように束ねられている。ここには一教師として来ていると言うだけあって。服装もほかの教師と変わらない、白シャツだった。
 だけどオーラというべきか、存在感がすごい。さすがこの国きっての魔力量の持ち主だ。

「はい、ぼくです」
「僕もです」
「カーギル先生から聞いたときは耳を疑ったが、 2人が所有しているというのは本当だったんだね」
「はい」
「キリンスが魔草だということは知っているね?」
「はい。カーギル先生からお聞きしました」
「ではキリンスが番を持つ特殊な植物だということは知っているか?」
「えっ?」

 植物に番?
 聞き間違いかとも思ったが、そうでもないらしい。ジョーンズ様はにこにこと笑っている。

「キリンスは原産国でも希少だから販売される数も少なく高価だ。だけど、それでも必ずセットで販売されているんだよ。キリンスは必ず番を持つから。だから君たちも苗をもらったとき、二つ一緒にもらったんじゃないのかい?」

 あ……。
 何と返事をしたらいいんだろう? そうですと言っても現在屋敷にあるキリンスが一つしかないのはお兄様もわかっている。だから、なぜ一つなのかと聞かれてしまう。

「僕の部屋には一つしかありません」
「一つ? もらうにしても、買うにしてもひとつということはありえない。キリンスは誰からもらったんだい?」
「わかりません。気がついたら既に僕の部屋にあったんです」

 ルークの言葉にジョーンズ様は首を傾げた。そして、ルークの指に光る指輪を見て、眉をしかめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい

雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。 延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

【完結】望まれなかった代役婚ですが、投資で村を救っていたら旦那様に溺愛されました。

ivy
BL
⭐︎毎朝更新⭐︎ 兄の身代わりで望まれぬ結婚を押しつけられたライネル。 冷たく「帰れ」と言われても、帰る家なんてない! 仕方なく寂れた村をもらい受け、前世の記憶を活かして“投資”で村おこしに挑戦することに。 宝石をぽりぽり食べるマスコット少年や、クセの強い職人たちに囲まれて、にぎやかな日々が始まる。 一方、彼を追い出したはずの旦那様は、いつの間にかライネルのがんばりに心を奪われていき──? 「村おこしと恋愛、どっちも想定外!?」 コミカルだけど甘い、投資×BLラブコメディ。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...