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番の植物
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サラとわかれた後、とんでもないことを思い出した。
「お兄様と王子を迎えに行かないと!」
「あっ!」
流れでついてきたクリスとアーネストが顔を見合わせた。
ルークは首をひねっている。
「ハロルドと王子? なんで?」
「あー、ジョンズ様に会いに行くって言ったら、王子も会いたいっておっしゃったもので」
「へー、そうなんだ」
「とにかくぼく、迎えに行ってくるから。ちょっと待ってて」
ぼくはアーネストたちを置いて、お兄様の教室、二年の特進Aクラスへと走った。
お兄様のいる教室とは言え、二年の特進クラスはやっぱり緊張する。ドキドキしながら教室の中を窺うと、王子と目があった。王子がお兄様を呼んで、すぐにぼくのもとに来てくれた。
「遅かったね」
「すみません、ちょっとゴタゴタしちゃったもので」
「ゴタゴタ?」
「はい、ちょっと……」
言葉を濁すと大体のことを察してくれたのだろう。まあいいかと言って職員室へ向かった。
ルークたちは職員室に入らず、その手前で待ってくれていた。グレアム王子とお兄様は、ルークを見た途端、一瞬目を細めたが、すぐに表情を戻した。
「失礼します。カーギル先生いらっしゃいますか?」
声をかけると、すぐにカーギル先生が立ち上がった。
「おお、来たか。許可はもらってあるから、ジョーンズ様の準備室に行くぞ。と、随分と大人数になっているな。王子までいらっしゃるとは……」
「まずかったですか?」
にこりと微笑みながら王子が言う。
「いや、大丈夫ですよ。勉強熱心なのはいいことです」
カーギル先生の案内の元、ジョーンズ様の準備室に向かった。部屋は奥の方に設けられていて入ってみると職員室と同じぐらいのスペースだった。だけど内装は職員室のそれとは違い、かなり豪華だ。本棚もソファーセットもとても学校の備品には見えない。豪奢な作りは、城にあってもおかしくないようなものだ。
「失礼します」
「やあ、待っていたよ。キリンスを持っている人は誰だい?」
ジョーンズ様はぼくらの顔を見た途端、席を立って気さくに話しかけてくれた。
黒い瞳に黒い髪。長いその髪は後ろにくるくると巻くように束ねられている。ここには一教師として来ていると言うだけあって。服装もほかの教師と変わらない、白シャツだった。
だけどオーラというべきか、存在感がすごい。さすがこの国きっての魔力量の持ち主だ。
「はい、ぼくです」
「僕もです」
「カーギル先生から聞いたときは耳を疑ったが、 2人が所有しているというのは本当だったんだね」
「はい」
「キリンスが魔草だということは知っているね?」
「はい。カーギル先生からお聞きしました」
「ではキリンスが番を持つ特殊な植物だということは知っているか?」
「えっ?」
植物に番?
聞き間違いかとも思ったが、そうでもないらしい。ジョーンズ様はにこにこと笑っている。
「キリンスは原産国でも希少だから販売される数も少なく高価だ。だけど、それでも必ずセットで販売されているんだよ。キリンスは必ず番を持つから。だから君たちも苗をもらったとき、二つ一緒にもらったんじゃないのかい?」
あ……。
何と返事をしたらいいんだろう? そうですと言っても現在屋敷にあるキリンスが一つしかないのはお兄様もわかっている。だから、なぜ一つなのかと聞かれてしまう。
「僕の部屋には一つしかありません」
「一つ? もらうにしても、買うにしてもひとつということはありえない。キリンスは誰からもらったんだい?」
「わかりません。気がついたら既に僕の部屋にあったんです」
ルークの言葉にジョーンズ様は首を傾げた。そして、ルークの指に光る指輪を見て、眉をしかめた。
「お兄様と王子を迎えに行かないと!」
「あっ!」
流れでついてきたクリスとアーネストが顔を見合わせた。
ルークは首をひねっている。
「ハロルドと王子? なんで?」
「あー、ジョンズ様に会いに行くって言ったら、王子も会いたいっておっしゃったもので」
「へー、そうなんだ」
「とにかくぼく、迎えに行ってくるから。ちょっと待ってて」
ぼくはアーネストたちを置いて、お兄様の教室、二年の特進Aクラスへと走った。
お兄様のいる教室とは言え、二年の特進クラスはやっぱり緊張する。ドキドキしながら教室の中を窺うと、王子と目があった。王子がお兄様を呼んで、すぐにぼくのもとに来てくれた。
「遅かったね」
「すみません、ちょっとゴタゴタしちゃったもので」
「ゴタゴタ?」
「はい、ちょっと……」
言葉を濁すと大体のことを察してくれたのだろう。まあいいかと言って職員室へ向かった。
ルークたちは職員室に入らず、その手前で待ってくれていた。グレアム王子とお兄様は、ルークを見た途端、一瞬目を細めたが、すぐに表情を戻した。
「失礼します。カーギル先生いらっしゃいますか?」
声をかけると、すぐにカーギル先生が立ち上がった。
「おお、来たか。許可はもらってあるから、ジョーンズ様の準備室に行くぞ。と、随分と大人数になっているな。王子までいらっしゃるとは……」
「まずかったですか?」
にこりと微笑みながら王子が言う。
「いや、大丈夫ですよ。勉強熱心なのはいいことです」
カーギル先生の案内の元、ジョーンズ様の準備室に向かった。部屋は奥の方に設けられていて入ってみると職員室と同じぐらいのスペースだった。だけど内装は職員室のそれとは違い、かなり豪華だ。本棚もソファーセットもとても学校の備品には見えない。豪奢な作りは、城にあってもおかしくないようなものだ。
「失礼します」
「やあ、待っていたよ。キリンスを持っている人は誰だい?」
ジョーンズ様はぼくらの顔を見た途端、席を立って気さくに話しかけてくれた。
黒い瞳に黒い髪。長いその髪は後ろにくるくると巻くように束ねられている。ここには一教師として来ていると言うだけあって。服装もほかの教師と変わらない、白シャツだった。
だけどオーラというべきか、存在感がすごい。さすがこの国きっての魔力量の持ち主だ。
「はい、ぼくです」
「僕もです」
「カーギル先生から聞いたときは耳を疑ったが、 2人が所有しているというのは本当だったんだね」
「はい」
「キリンスが魔草だということは知っているね?」
「はい。カーギル先生からお聞きしました」
「ではキリンスが番を持つ特殊な植物だということは知っているか?」
「えっ?」
植物に番?
聞き間違いかとも思ったが、そうでもないらしい。ジョーンズ様はにこにこと笑っている。
「キリンスは原産国でも希少だから販売される数も少なく高価だ。だけど、それでも必ずセットで販売されているんだよ。キリンスは必ず番を持つから。だから君たちも苗をもらったとき、二つ一緒にもらったんじゃないのかい?」
あ……。
何と返事をしたらいいんだろう? そうですと言っても現在屋敷にあるキリンスが一つしかないのはお兄様もわかっている。だから、なぜ一つなのかと聞かれてしまう。
「僕の部屋には一つしかありません」
「一つ? もらうにしても、買うにしてもひとつということはありえない。キリンスは誰からもらったんだい?」
「わかりません。気がついたら既に僕の部屋にあったんです」
ルークの言葉にジョーンズ様は首を傾げた。そして、ルークの指に光る指輪を見て、眉をしかめた。
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