ドラゴンアース anotherstory ‐死の魔女‐

悲しみの対峙

7.

アストとパラガスには、今ある現状を受け止める事が出来なかった。

ミレアが国王の身体に致命の一撃を加えた事を…。

ミレアが右腕を引くと、国王が地面に崩れ落ちた。

「何故…、ミレアが国王を？」

アストが身を奮わせ、否定的につぶやいた。

「鍵か…」

ミレアは冷たい視線をし、アストを見つめた。

アストはミレアの表情に愕然とした。

今までに見た事のない表情だった為に…。

「ミレアなのか？」

「はい…」

アストの問いに、ミレアは静かに頷いた。

「生きていたのか…」

その問いにミレアは答えなく、別の答えをした。

「アスト、貴方は私を開放した鍵です…、今回だけは見逃しましょう…」

「鍵…？」

答えたのはパラガスだった。

パラガスは横たわる国王の身体を開放していた。

胸に開けられた傷は、誰が見ても、助からないと解っていた。

「関係ない事です…」

ミレアは冷たくパラガスに答える。

「ミレア、キミがキーカンバーを使って、王国や街を破壊し、人々を殺したのか…？」

アストが質問した。

ミレアは間髪入れずに、答えた。

「そうです…」

その一言にアストは衝撃した。

「三流魔術師、鍵に免じ、貴方の命は取らないでおく…」

横たわる王を抱えるパラガスに、上からミレアは言った。

ミレアは浮遊し始めた。

アストとパラガスは、呆然とミレアがキーカンバーの頭に戻るのを見ていた。

何も出来なかった。

遅れて来たタンクも、その光景を呆然と見るしかなかった。

そして、キーカンバーの巨大な脚が動き始めた。

歩き始めたのは、キーカンバーだけでなく、王国でゾンビとなった国民達もゆっくりと動きはじめた。

数えられない程のゾンビ達は、キーカンバーの後へと続くように、行進しだした。

すでに国王は事切れていた。即死だった…。

ミレアを乗せたキーカンバーは、夜明けと共に王国から姿を東へとさって行った。












そして朝がきた…。



王国は一夜にして、亡国となり、国民の半分は死に、さらに何百の遺体はゾンビとなり、ミレアと共に消えた。

何故、ミレアは生き返ったのだろう…。

ミレアは死の軍隊を使い、何をしようとしているのか…。

アストとパラガスには、解らなかった。


そして、その日のうちに生き残った人々は、また闇龍に襲われないように……、



                                                         国を捨てた……。