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ミレアの謎
3.
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左の肘より下の腕を自らの意思で失ったアストは、その傷の為に高熱を出し、十日間は寝返りをうつのも辛い程だった。
ラッドビード王国の薬剤師が作った様々な薬草により、アストは十日を過ぎた頃から順調に回復し、数日後には、右手で剣を素振れる程、体力を回復させた。
アストが寝たきり状態の日々、パラガスはラッドビードの上役会議に出席し、打倒ミレアの作戦に進んで意見を述べたり、戦法を提案したりしていた。
ペテンは、隠していたアストの愛馬シャムと二頭の馬車馬を王国に引き入れ、毎日を馬の世話で追われていた。
タンクは毎日、爬虫類系亜人達の武具を手入れしていた。
来たるべきミレアの死の軍隊との戦いに備え…。
ラッドビードに潜入して半月がたち、アストは今、双頭の蜥蜴亜人ロッツロット国王の王室にいた。
王座にロッツロットは座している。
「アスト、身体の調子はどうだ?」
左頭の蜥蜴が質問した。
両頭とも床に片膝をつくアストへと向けていた。
アストの左腕は包帯を頑丈に巻かれている状態だった。
「大分、良くなりました…」
「そうか、しかし貴様の根性というか、信念には正直、参った」
アストの短い返事に、蜥蜴王は苦笑いした。
百年前、アールド建国王と共に、吸血城の怪物と戦った時の建国王の根性や信念にも劣らないと、ロッツロットは場違いな思いに浸った。
「すまないが、この王国には治療魔法を使える者はいないのだ」
ロッツロットがアストに謝罪した。
切り落とした左腕は、治療魔法を使わないかぎり、元通りに治る事はないのだ。
この龍地球で存在する魔法は、別世界の魔神、精霊などを呼ぶ、召喚魔法、攻撃、補助を中心としたパラガスの得意とする魔法、病や解毒、怪我などを治す魔法、禁断の魔法、その他にも死者蘇生魔法など沢山の分類に別れる魔法が存在する。
自分の腕が元通りにならない事に、アストは後悔していない。
アストは、国王に無言で力強く頷いた。
「話しは変わるが、貴様達がこの王国に来て、半月がたった」
「パラガスは頭もキレ、タンクとやらの腕も見込める、しかし…」
それぞれの蜥蜴顔が口を開き、途中で間が開いた。
その時、名前を呼ばれなかったペテンが役に立たないから処刑したいと、蜥蜴王が言うのではと、場違いな事をアストは思った。
「…本当に怪しくなってきた」
「と、言いますと…?」
アストは思わず口にし、生唾を飲んだ。
「本当に闇龍を連れた女が来るのかと…」
国王の思いは正論で、アストは返事に困った。
確かにそうだった。半月も経つと本当にミレアがこのラッドビード王国を通るのかと、不安が過ぎる。
ミレアが来るというのは、確実な情報ではなく、アストやパラガスの推論でしかないのだ。
もしかしたら、ラッドビード付近を通らないで、別のルートを通ったか、別の十龍の場所へと移動したのか、不安な時期に入ったのかもしれない。
別のルートを使ったのなら、死人を出さなくてすんだと思い、ラッドビードにとっては喜ばしい事だ。
しかし、アールド王国の国王や国民の仇を誓ったアストやパラガスにとれば、これ以上の無駄はない。
特にアストの場合、左腕を失っているのだから…。
アストは重い口を開き、
「来ないなら来ないにこしたことはありません。しかし、不意打ちに会わないように、いつでも戦闘できるように準備しておきましょう…」
と、無表情で答えた。
そして、ロッツロットと少し会話をし、アストは王室をあとにした。
「アストさ~んっ!」
アストが王城の裏庭を歩いていると、さほど遠くない場所で、呼ぶ声がした。
アストを呼び止めたのはエルフのペテンだった。
ペテンの横にはドワーフのタンクの姿もあった。
二人の亜人がいる場所は、塀に囲まれたわりと広い草原で、そこにはトリケラトプス、イグアノドンといった草食恐竜が多数、放し飼いにされていた。
その中には、国王専用の移動生物、蜥蜴馬と呼ばれる魔獣もいた。
その草原の中で、黒毛の馬シャムや、馬車を引いた馬二頭が、自由気ままに駆け回っていた。
爬虫類系亜人は人間やエルフらと違い、馬を使わない。
爬虫類系亜人が移動などで利用するのは、トリケラトプスやイグアノドンだった。
またラッドビードの民は、空飛ぶ翼竜プテラノドンも調教し、空を翔ける技術をも持っていた。
「もう大丈夫なんですか?」
ペテンがアストに近付き、質問した。
アストは黙って頷き、駆け回るシャムの方へと目をやった。
「ペテンがお主の寝とる間、馬の世話をしたダ」
タンクもアストのいる方へと近付きながら口を開いた。
「そうか、ありがとな」
アストはペテンに素直に礼を言った。
ペテンは少し照れながら「いえいえ」と、遠慮がちに答えた。
その時、主人の来訪に気付いたシャムも、アストの場へと近付いてきた。
「お主、その手ではろくに乗馬も出来ないダろう…」
「……まあな」
タンクの質問に、アストは寂しそうな表情で答えた。
アスト自身で失った左腕、後悔はないが、シャムと共に疾走することが難しくなった現実は、ある意味、死ぬ事より辛い。
それ程、アストにとってシャムとの絆は強い。
「そうダろう、そう思ってな」
タンクはそう答えると、腰の辺りから妙な物を取り出した。
「何だそれは?」
「左手代わりに使ってみるダ」
タンクが手にしているのは、海賊船長が使ってそうな、フック型の鉄製の義手だった。
「それなら馬の手綱も引けるダ」
「こ、これをボクに…」
アストは義手を受け取り、答えた。
「フックは取り外し可能ダ、状況に応じて剣にも付け替えれるダ」
「すまない…」
アストはタンクの突然のプレゼントに感激した。
「作ったのはワシダが、義手を作れと提案したのはペテンダ」
タンクが言うと、アストはペテンの方へと顔を向けた。
ペテンは照れ笑いし、アストから視線を避けた。
「あ、ありがとうタンク…、それにペテンも…」
アストは目に涙を浮かべ、初めてドワーフとエルフの名前を呼んだ。
またアストは初めて、彼らを仲間だと意識した。
アストは早速、左腕に義手を装着し、シャムに跨がり日が暮れるまで大地を駆け走った。
三日後、アランミューア大陸に、同時間、二つの異変が起きた。
一つはミレアが死体を増やす為に、別行動をとっていた三百のゾンビやスケルトンどもが、盗賊都市バルキルを襲撃する手前の周辺で、何者かにより、一瞬で消滅した事。
もう一つは、ドラゴンスケルトンと化したキーカンバーを筆頭に、ミレアの死の軍隊が、ラッドビード王国周辺へと迫ってきた事。
死臭を放つ死の軍隊が……。
ラッドビード王国の薬剤師が作った様々な薬草により、アストは十日を過ぎた頃から順調に回復し、数日後には、右手で剣を素振れる程、体力を回復させた。
アストが寝たきり状態の日々、パラガスはラッドビードの上役会議に出席し、打倒ミレアの作戦に進んで意見を述べたり、戦法を提案したりしていた。
ペテンは、隠していたアストの愛馬シャムと二頭の馬車馬を王国に引き入れ、毎日を馬の世話で追われていた。
タンクは毎日、爬虫類系亜人達の武具を手入れしていた。
来たるべきミレアの死の軍隊との戦いに備え…。
ラッドビードに潜入して半月がたち、アストは今、双頭の蜥蜴亜人ロッツロット国王の王室にいた。
王座にロッツロットは座している。
「アスト、身体の調子はどうだ?」
左頭の蜥蜴が質問した。
両頭とも床に片膝をつくアストへと向けていた。
アストの左腕は包帯を頑丈に巻かれている状態だった。
「大分、良くなりました…」
「そうか、しかし貴様の根性というか、信念には正直、参った」
アストの短い返事に、蜥蜴王は苦笑いした。
百年前、アールド建国王と共に、吸血城の怪物と戦った時の建国王の根性や信念にも劣らないと、ロッツロットは場違いな思いに浸った。
「すまないが、この王国には治療魔法を使える者はいないのだ」
ロッツロットがアストに謝罪した。
切り落とした左腕は、治療魔法を使わないかぎり、元通りに治る事はないのだ。
この龍地球で存在する魔法は、別世界の魔神、精霊などを呼ぶ、召喚魔法、攻撃、補助を中心としたパラガスの得意とする魔法、病や解毒、怪我などを治す魔法、禁断の魔法、その他にも死者蘇生魔法など沢山の分類に別れる魔法が存在する。
自分の腕が元通りにならない事に、アストは後悔していない。
アストは、国王に無言で力強く頷いた。
「話しは変わるが、貴様達がこの王国に来て、半月がたった」
「パラガスは頭もキレ、タンクとやらの腕も見込める、しかし…」
それぞれの蜥蜴顔が口を開き、途中で間が開いた。
その時、名前を呼ばれなかったペテンが役に立たないから処刑したいと、蜥蜴王が言うのではと、場違いな事をアストは思った。
「…本当に怪しくなってきた」
「と、言いますと…?」
アストは思わず口にし、生唾を飲んだ。
「本当に闇龍を連れた女が来るのかと…」
国王の思いは正論で、アストは返事に困った。
確かにそうだった。半月も経つと本当にミレアがこのラッドビード王国を通るのかと、不安が過ぎる。
ミレアが来るというのは、確実な情報ではなく、アストやパラガスの推論でしかないのだ。
もしかしたら、ラッドビード付近を通らないで、別のルートを通ったか、別の十龍の場所へと移動したのか、不安な時期に入ったのかもしれない。
別のルートを使ったのなら、死人を出さなくてすんだと思い、ラッドビードにとっては喜ばしい事だ。
しかし、アールド王国の国王や国民の仇を誓ったアストやパラガスにとれば、これ以上の無駄はない。
特にアストの場合、左腕を失っているのだから…。
アストは重い口を開き、
「来ないなら来ないにこしたことはありません。しかし、不意打ちに会わないように、いつでも戦闘できるように準備しておきましょう…」
と、無表情で答えた。
そして、ロッツロットと少し会話をし、アストは王室をあとにした。
「アストさ~んっ!」
アストが王城の裏庭を歩いていると、さほど遠くない場所で、呼ぶ声がした。
アストを呼び止めたのはエルフのペテンだった。
ペテンの横にはドワーフのタンクの姿もあった。
二人の亜人がいる場所は、塀に囲まれたわりと広い草原で、そこにはトリケラトプス、イグアノドンといった草食恐竜が多数、放し飼いにされていた。
その中には、国王専用の移動生物、蜥蜴馬と呼ばれる魔獣もいた。
その草原の中で、黒毛の馬シャムや、馬車を引いた馬二頭が、自由気ままに駆け回っていた。
爬虫類系亜人は人間やエルフらと違い、馬を使わない。
爬虫類系亜人が移動などで利用するのは、トリケラトプスやイグアノドンだった。
またラッドビードの民は、空飛ぶ翼竜プテラノドンも調教し、空を翔ける技術をも持っていた。
「もう大丈夫なんですか?」
ペテンがアストに近付き、質問した。
アストは黙って頷き、駆け回るシャムの方へと目をやった。
「ペテンがお主の寝とる間、馬の世話をしたダ」
タンクもアストのいる方へと近付きながら口を開いた。
「そうか、ありがとな」
アストはペテンに素直に礼を言った。
ペテンは少し照れながら「いえいえ」と、遠慮がちに答えた。
その時、主人の来訪に気付いたシャムも、アストの場へと近付いてきた。
「お主、その手ではろくに乗馬も出来ないダろう…」
「……まあな」
タンクの質問に、アストは寂しそうな表情で答えた。
アスト自身で失った左腕、後悔はないが、シャムと共に疾走することが難しくなった現実は、ある意味、死ぬ事より辛い。
それ程、アストにとってシャムとの絆は強い。
「そうダろう、そう思ってな」
タンクはそう答えると、腰の辺りから妙な物を取り出した。
「何だそれは?」
「左手代わりに使ってみるダ」
タンクが手にしているのは、海賊船長が使ってそうな、フック型の鉄製の義手だった。
「それなら馬の手綱も引けるダ」
「こ、これをボクに…」
アストは義手を受け取り、答えた。
「フックは取り外し可能ダ、状況に応じて剣にも付け替えれるダ」
「すまない…」
アストはタンクの突然のプレゼントに感激した。
「作ったのはワシダが、義手を作れと提案したのはペテンダ」
タンクが言うと、アストはペテンの方へと顔を向けた。
ペテンは照れ笑いし、アストから視線を避けた。
「あ、ありがとうタンク…、それにペテンも…」
アストは目に涙を浮かべ、初めてドワーフとエルフの名前を呼んだ。
またアストは初めて、彼らを仲間だと意識した。
アストは早速、左腕に義手を装着し、シャムに跨がり日が暮れるまで大地を駆け走った。
三日後、アランミューア大陸に、同時間、二つの異変が起きた。
一つはミレアが死体を増やす為に、別行動をとっていた三百のゾンビやスケルトンどもが、盗賊都市バルキルを襲撃する手前の周辺で、何者かにより、一瞬で消滅した事。
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