ドラゴンアース anotherstory ‐死の魔女‐

ミレアの謎

4.

ラッドビード王国とシーフー山脈の間にある野原に、緊張が走る。

一時前、翼竜プテラノドンに乗った蜥蜴亜人リザードマンの偵察部隊から、王国の方に向け、巨大な象のような動く骨格と、数百のゾンビやスケルトンが行進しているとの報告があった。

慌てて、ロッツロット国王は一千の爬虫類系亜人の部隊を召集し、王国周辺で一番広い野原を戦場に選んだ。

夕方、ミレアの死の軍隊が、シーフー山脈の林の中から姿をあらわした。

さすがのミレアも、林を抜けたと同時に待っていたのが、一千の爬虫類系亜人達を目にした時は驚きの表情を見せた。

今、広大な野原には、後ろにそびえるラッドビード王国の側に、ロッツロット国王率いる一千の軍が横に隊列をひき、かたやシーフー山脈側にミレアの五百の死の軍隊が、無造に位置していた。

「アスト、あの象のような骸骨の頭に立つ女が、貴様の妻なのだな」

蜥蜴馬ムシュフシュに跨がった双頭の蜥蜴王が、左隣のシャムに跨がったアストに尋ねた。

「はい、間違いありません…」

アストは左手のフック型の義手に手綱を持ち、遠くのミレアを寂しそうに見つめながら答えた。

ロッツロットの右隣に、パラガスが馬車馬の一頭に跨がり、右手に持つ杖を手にしていた。

以前、前宮廷魔術師レティスから頂いた杖だ。

この杖には不思議な能力があり、パラガスはこの杖を使うつもりでいた。

「何故あの龍は白骨しているのダ？」

パラガスの横に、同じように馬車馬に跨がったタンクが質問した。

ペテンはこの野原にいるようだが、何処にいるかわからない。

おそらく、隊列の後ろで、ぶるぶると奮えながら隠れているのだろう。

「推測だが、ブディスの森の十龍にやられたのだろう…、そして見る限り、その十龍にまんまと逃げられたようだな」

パラガスは遠目をしながら答えた。

「ワシには十龍が何匹いようが関係ない」

「ワシのこのブラッドクロスソードの餌食にしてやろう」

双頭の蜥蜴王が、それぞれ口にし、腰に刺した剣を二対を抜いた。

剣身が血のように赤い豪剣。

同じように、両腰にまだ二つの剣が残っていた。

どうやら四つ腕の王は、四本剣の使い手のようだ。

「貴様ら、戦闘準備にかかれっ！！」

国王が放った大声が、一千の部下達へと反響した。

一千の爬虫類亜人は、高らかに叫び、一瞬にして戦場に熱気が沸き上がった。

この活気にアストとパラガスは、偉大なる双頭の蜥蜴王を、今は亡きルイ･アールド国王と酷似した。




「数的には爬虫類亜人達の方が勝っているようね……」

ミレアは微笑みながら、呟いた。

「…しかし、勝つのは私だ」

キーカンバーの頭の上で、ミレアは宣言した。

「どうやら鍵もいるようね…」

ミレアは遠くで先陣するアストを発見した。

「それで、爬虫類達が軍を率いて待ち構えていたのね…、まあいい、鍵だろうが二度も命を救う事はない…」

その発言でミレアの死の軍隊は、ゆっくりと動き始めた。

それに習い、ラッドビードの軍勢も攻撃を開始した。




広大な野原は、一時も過ぎると、死臭と血臭の臭いが充満した、戦場と化した。