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第五章

ゾンビ?

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「ゾ、ゾンビ!?」

「あぁ、こんなに不快な気配はゾンビじゃと思うがなぁ」

 ウィルが想定していた魔物とは、大きく違った結果が飛び出す。

「ゾンビがダークウルフを使役って、そんなこと出来るのか……?」

「ゾンビでも多少の知能はあるのじゃ。ダークウルフなどよりかは何倍もな。別におかしいことでもないわい」


「で、でも、ゾンビがユキちゃんのお母さん――人間を群れの中で放置するとは思えないぞ!」

「じゃから、それがずっと引っかかっておるのじゃ」

 エルネはイラついているように考える。
 ゾンビが人間を殺さずに放置している理由を、エルネなりの解釈で合理的に理解しようとしているのだろう。

「駄目じゃ、いくら考えても理解できん! おい、天使。お主は何か分からんか?」

「無理ですね。本当に殺さずに放置しているなら、理由も目的も分かりません。まぁ、ゾンビの思考なんて理解したくないのでいいですが」

 エルネもレフィーもお手上げの状態だった。
 リリ――も期待できない。

 勿論ウィルやユキが理解できるはずもないので、全滅ということだ。

「あ、あの! お母さんはまだ無事……なんですよね?」

「そうじゃ」


「やっぱり俺たちにできるのは先を急ぐことだけか」

「先を急ぐといっても、もうすぐ近くじゃぞ?」

「え!? それを早く言ってよ!」

 ウィルは反射的に辺りを見渡す。
 ここはもう縄張りの中なのだ。
 今までのようにフラフラしていては、命に関わるミスになる。

「マイマスター。敵が襲ってくる気配はありませんので、落ち着いてください」

「そ、そうか」

「ほっ……」

 かなりスカされた空気だった。
 短剣を握りしめてリリの後ろに隠れていたユキも、持ち手にかけていた力をフッと抜く。


「ゾンビは足が遅いですから、急襲には警戒しなくて良いと思います」

「ダークウルフも儂の強さを見ておるから、襲いかかってくることは無いじゃろうな」

「つまり最強ってことだな?」

「油断しすぎじゃ、ご主人様」

 ウィルは頭をペシっと叩かれる。
 調子に乗りすぎた結果。
 レフィーにも言われたばかりであった。


********


「お、おい……ここか?」

 ウィルが調子に乗っていると、古びた洋館が目に入る。
 エルネの母親レーダー的にも、この洋館にユキの母親はいるはずだ。

「かなり汚れておるのぉ。まぁゾンビが住んどるから当然か」

「正直入りたくないです」

「リリもー」

「こう考えるんだ、サッサと倒してサッサと帰る――と」

「……まぁ倒すのは儂らじゃがの」

 そう言って、若干嫌がりつつも、五人は洋館の扉に手をかけた。


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