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第八章
テントの中で
しおりを挟む「じゃあ、マイマスターを挟んで寝るようにしましょうか」
「やめて……それは外で寝るより辛いかもしれない」
レフィーは、ウィルをリリとエルネで挟むように誘導したが、流石に断固として断られる。
もしそうなってしまったら、ウィルは寝ることなく朝を迎えてしまいそうだ。
「ウィルお兄ちゃん、リリの隣空いてるよ」
「ごめん、俺は端っこの方で寝てるから」
「なんかかわいそうになってきたのじゃ」
リリは残念そうな目をしながら、端っこの方に移動するウィルを見つめていた。
「ざんねーん、じゃあおやすみー」
「おやすみなさい、リリ」
「すぴー」
「もう寝ちゃいましたね」
「羨ましいよ……」
リリは、ウィルを諦めるとすぐさま眠りについた。
なかなか眠れないウィルからしたら、これほど簡単に眠れるのは、羨ましさすら覚えてしまう。
「こういうの久しぶりだな……レフィーはこの前みたいに星を――」
「マイマスター、それ以上口を開いたら殺しますよ」
「え!? なんで!? この前なんてあんなに楽しそ――」
「あなたは! 言葉がっ! 分かんないんですか!」
「いててててて!!」
レフィーは、喋りすぎたウィルの腕を集中的に攻撃する。
関節に地味な痛みが響き、ウィルと関節が悲鳴をあげた。
「ご、ごめんなさい! まじでごめんって! だからそろそろ……!」
「おいおい天使。何があったか知らんが、もう許してやったらどうじゃ?」
「アナタは静かにしててください。マイマスターの記憶を消したらやめますから」
「どうやって記憶を消すんじゃ?」
「こうやって攻撃してたら、いつかは消えるでしょ」
「消えねぇよ! やめてやめて!」
どうやら、ウィルと一緒に星を見たという記憶は、レフィーにとって消したい記憶らしい。
ウィルにとっては、普段は見れないようなレフィーの一面が見えた時間だったが、悲しい結果に終わる。
「……分かりました。ただ、あのことは忘れてくださいね」
「この天使は何をやらかしたんじゃ……」
「あの時の私は寝ぼけていたんです。本当に悪い夢でした」
「そんなに恥ずかしいことなのか……? ロマンチックで良かったじゃないか」
「もうやめてって言ってるでしょ!」
レフィーは、顔を真っ赤にしてウィルの背後に回った。
そして、これ以上ウィルが喋れないようにチョークスリーパーの要領で首を絞める。
「うーん――あれ!? レフィーお姉ちゃん何やってるの?」
「よく分からんが、小娘も見ておったらどうじゃ?」
「いや、助けてくれ……よ……」
ウィルは、想定とは大きく違ったが、早めに眠ることができた。
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