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第十三章

百年ぶり

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「老師、ウィル様がそろそろ戻ってくる頃合かと」

「おぉ、もうそのような時間か。あそこにはルイスがおるから、コテンパンにやられて帰ってくるかのお」

 瞑想をして昼を過ごしているリムに、巫女は近付いて話しかけた。

「ルイスというのは、老師の旦那様でしたよね? どうしてそこにウィル様を?」

「なーに、簡単なことよ。ああいう若いガキは一度敗北を味わっておくべきなのじゃ。それに、ルイスなら絶対殺すようなことはせんしな」

 リムは、ルイスを思い出すように語りだす。
 ルイスの強さを信頼し、優しさを知っているからこその選択だ。

 百年経ったとしても、それを忘れることはない。

「そう言えば、どうしてルイス様と別居していらっしゃるのですか?」

「アイツが儂の言うことを聞いてくれんからな。昼の時間はずっと寝とるし、夜になったら騒がしいし。折角起きとっても本ばかり読んで相手をしてくれんし――ようは喧嘩じゃ、喧嘩」

 巫女が、ずっと謎だった別居の理由を聞くと、ルイスに対しての愚痴がボロボロと零れてきた。
 百年経った今、不満も忘れていないようで、このままだと永遠に喋ることになるだろう。

「ですが、逆にウィル様がルイス様を倒してしまうという可能性もあったのでは? 鬼退治と言ってしまっている以上、ウィル様は止められませんから」

「いやいや、ワシはルイス以上に強い奴を知らんよ。流石に冒険者の若造には負けんわい。そうじゃな、あのアルフレッドという男ならいい勝負をするかもしれんが」

 いらない心配をしている巫女を、リムは丁寧に言って聞かせる。
 巫女はルイスを見たことがないため、強さを教えるのは難しい。

 しかし、その鮮明に覚えているルイスの強さを、どうしても巫女に伝えたかった。

「アルフレッド様ですか。確かあの方は姫様の執事兼護衛として活躍されているようですね。大きな大会でも優勝したと聞きます。完璧なエリートです」

「まぁ、アルフレッドも生意気じゃったが、実際に才能があったからの。人間であそこまで強くなれるのは奇跡じゃ」

 しかし――と、リムは付け足す。

「人間の超エリートでさえ、比べられるのがやっとだということじゃ。ウィルという奴もなかなかやるらしいが、少なくともルイスを超えることはないな」

 少し無理矢理に結論を出すリム。
 巫女にもルイスの強さが伝わったようで、満足そうな顔をしていた。

「あ、老師。ウィル様が戻って来られたようですよ」

「おぉ、怪我は無いらしいな。見た目以上にタフな――ルイス!? 何でここに!?」

 戻ってきたウィルたちの隣には、百年ぶりに見る吸血鬼がいた。


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