白いスープと死者の街

主道 学

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小さな事件

11話

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 子供では無理だからではなくて、大人の方が都合がいい。
 何故なら裏の畑で遊ぶ子供たちは、僕と藤堂君と篠原君だけなんだ。そして、その近辺の子供たちは学校帰りに遊ぶとしたら、裏の畑ではなくて家でゲームをしているかアニメを観ている普通の子供たちばかりだ。でも、大人なら毎日裏の畑で作物の手入れをしているし、食料の調達だとするとどんな時間帯でもいられる。
 逆に子供だとすると、目立ちすぎてしまうからだ。


 しばらくすると、大原先生たちが放送室から戻ってきた。
 どうやら、誰もいなかったようだ。
 でも、みんな真っ青な顔をして、顔を見合わせている。校長先生に話すときには、なんとか落ち着く努力を精一杯してるみたいだった。
「ちょっと、冗談にしてほしいですけど、誰もいなかったんです……。本当に……。それに、こんな物が置いてあったんですよ。校長先生」
 瀧田先生が一つの人形の手のようなものを校長先生に渡していた。

 僕の心にまたざわざわした靄が発生した。
「血のりもついているし、こんな不気味なことをする子供がいるなんて」
 校長先生は人形のなにかを手でつまんで、しげしげと見つめながら訝しんだ。
 よく見ると、それは人形の手のような一部だった。恐らく赤黒い血のりがついているのだろう。
 僕は一部始終を確認して、胸の奥へとざわざわした靄を押し込めると、自分のクラスの5年2組へと戻った。
 校長先生はステージの教壇へと急いで向かう。
 教壇に設置してあるマイクを何度かつついた後、みんなに話し出した。
「みんな。隣の人たちをよく確認してほしい。もし、いなかった子やいない子がいた場合。近くの先生に言うように」

 急いで大原先生が僕の脇へと歩いてきた。
 みんなどよめいていたようだけれど、僕は真っ青になった。きっと、悪戯をした子を見つけるために、校長先生が考えた作戦だ。
 青い顔で藤堂君と篠原君は話の途中だった。
 隣の女子が大原先生が近づくと、手を挙げた。
「先生。石井君がいませんでした。途中、どこかに行ったんです」
 大原先生は一瞬、奇妙な顔をした。
「石井君……? 話をよく聞かせてください」
 大原先生はそう言うと、僕の腕を掴んで無理矢理立たせて、体育館の奥の方へと引っ張って行った。
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