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危険な恋
30話
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熱いコーヒーを一口飲むと、
「奈々川首相と矢多部の目的って、一体何だろうか?」
「私にも解りません……。父は自分の目的だとか政治のこととかは一切話さないのです」
確かに、奈々川さんが政治の知識をあまり持っていないのはそのためなのであろう。
「?」
二杯目のコーヒーを頼もうと、店の奥に視線を向けると、喫茶店のマスターがいない。二人の客がこちらに近づいていた。
「奈々川首相の娘さんですね?それと、夜鶴 公さん。首相がお待ちかねです」
私たちははたと気が付いた。
首相の情報網に引っ掛かった。
私は銃を取り出そうかと思案した。相手はたかが二人だ。私なら1秒もしないだろう。
しかし、確かにこれから首相に会いに行くのだから、今撃っても仕方がない。
「解りました。父に会います」
よく見ると、だいぶ前に島田とガンショップで会った。あの銃を見ると恍惚になる男がいた。嵐が吹き去った頭をしている。もう一人はごく至って普通の男だ。
「夜鶴さんとやら……抵抗するなよ。死ぬぞ」
銃を見て恍惚になる男ではないもう一人がニコリと言った。
腰には銃を携帯しているようだ。
「それでは、行きましょうか?あ、その前に」
銃を見て恍惚になる男が私に手を出した。
「危ないもの持ちましょう」
「解った」
私は上着のホルスターからS&W500を取り出した。
その銃を見て男は恍惚な表情になった。
「夜鶴さん! 銃は持って来ちゃダメです!」
「……すまない」
「さあ、では行きましょう」
銃を見て恍惚になる男が先導し、私たちは愛車ではなく彼らの地味な車に乗った。
「あの……。父は怒っていますよね。でも、夜鶴さんは関係ないはずですよ」
車の後部座席に座った私と奈々川さん。
「うーん。そうだねー」
銃を見て恍惚になる男は気楽に言ったが、その言葉はこれから何が起きても可笑しくないといったところである。
「まあ、大丈夫。死んだりしないよ」
私と奈々川さんはもう離れることはないはず……。けれど、これからどうなるのだろうか?
「俺の車に……あのガンショップでの出来事だけれど、犬の絵に傷を付けたのはなんのためだ?」
私は疑問を口にした。
「その時は単純に殺された奈賀の容疑者だと思ったのさ」
「それで、マークをわざわざ付けてその後は?」
「ズドンさ。当たり前だろ」
銃を見て恍惚になる男と話を続けた。
「どうして、犬の絵に傷を付けると解った」
「……若いあんちゃんに、10万払って他人の車に傷をつけろと頼むとどうなるか? 傷を付けるときには必ず目立つところに……そう犬の絵にね。」
銃を見て恍惚になる男はのらりくらりと話した。
「そうか……」
当然、今は藤元のせいで捕まったのだが……。
「その後は、奈賀が何故か生き返ってきて……奈々川お嬢様の捜索に急展開をしたのさ。そして、どうやら奈賀を撃った男と同棲でもしているのだろうと大胆な発想をしたんだけど……どんぴしゃだったね。家が空っぽだったからとっくに逃げたんじゃないかとも思ったけれども……なあ。同棲している男を早くに撃ってもいいのだけど、それだとA区とB区の戦争になる可能性もあるし……。なるだけ戦争を回避してほしいと奈々川首相のお言葉があったものでね」
銃を見て恍惚になる男は安っぽい推理を話した。
重苦しい緊張が漂った車は、一定のスピードで首相官邸に着いた。
正門は豪華な造りで、何年代から続いている日本家屋だ。広さは普通の家の20倍くらいか。昔はサムライの偉い人の家だったようだ。それが今の首相官邸だ。
地味な車は広い玉石の駐車場に停まると、二人の男は私たちを家の中へと案内した。他には地味な高級車が何十台も停まっている。けれど、目立つ車もある。派手な黄色のスポーツカーだ。
道を挟んでいる庭には、小さい盆栽と池が無数とある。
青い服装の警備員が立ち並ぶ幾つもの和室のあるせせこましい通路を歩き。重厚な西洋風の書斎に通される。扉の傍の両脇には背広姿が一人ずつ立っていた。
書斎には赤ら顔で太り過ぎている小男がいた。顔にも脂肪もついていて、笑うと、脂肪が振動するくらいだ。
奈々川首相だ。
「晴美。部屋へ行きなさい。この男と話したい」
首相は脂肪を振動させて、まるでこれからミサイルでも発射するかのようだ。
「いやです。私は夜鶴さんと一緒にお父さんと話したいことがあるんです」
奈々川さんが強い口調をした。
「……晴美。では仕方がない。言って御覧なさい。私は忙しいんだ。手短にな」
「あの……。お父さん。私、夜鶴さんと結婚します」
首相は二三度首を振って、
「駄目だ。晴美……。お前はこの町を発展させなければならない。それが私たちの使命なのだよ」
首相はレースのカーテンの大きい窓から外の景色を……町の巨大な建物が林立している様を見せる。まるで都会のテーマパークである。
「この町は私が作った……。母さんに約束したんだ」
奈々川さんは怯むことはなく。
「いいえ。お母さんはこんな世界を望んでいません。ハイブラウシティ・Bはいわば失業者を急増させるためだけの都市です。私は労働自体を機械がしてはいけないとは言いません。けれど、もっと全体的に見ないと……お父さんはきっと矢多部さんの口車に惑わさ利益だけを見ているだけです。その理想はごく一部の……B区だけの人たちの理想だと思います」
「晴美……。解ってくれ、ハイブラウシティ・Bのことは私たちに任せて、お前は谷多部くんと付き合いなさい」
首相はそういうと、電話を取った。
「待って、お父さん! 私はもう子供ではありません!」
私の両脇には二人の男が付いている。二人は終始無言だ。数人の男が奈々川さんの袂に行った。
「奈々川首相と矢多部の目的って、一体何だろうか?」
「私にも解りません……。父は自分の目的だとか政治のこととかは一切話さないのです」
確かに、奈々川さんが政治の知識をあまり持っていないのはそのためなのであろう。
「?」
二杯目のコーヒーを頼もうと、店の奥に視線を向けると、喫茶店のマスターがいない。二人の客がこちらに近づいていた。
「奈々川首相の娘さんですね?それと、夜鶴 公さん。首相がお待ちかねです」
私たちははたと気が付いた。
首相の情報網に引っ掛かった。
私は銃を取り出そうかと思案した。相手はたかが二人だ。私なら1秒もしないだろう。
しかし、確かにこれから首相に会いに行くのだから、今撃っても仕方がない。
「解りました。父に会います」
よく見ると、だいぶ前に島田とガンショップで会った。あの銃を見ると恍惚になる男がいた。嵐が吹き去った頭をしている。もう一人はごく至って普通の男だ。
「夜鶴さんとやら……抵抗するなよ。死ぬぞ」
銃を見て恍惚になる男ではないもう一人がニコリと言った。
腰には銃を携帯しているようだ。
「それでは、行きましょうか?あ、その前に」
銃を見て恍惚になる男が私に手を出した。
「危ないもの持ちましょう」
「解った」
私は上着のホルスターからS&W500を取り出した。
その銃を見て男は恍惚な表情になった。
「夜鶴さん! 銃は持って来ちゃダメです!」
「……すまない」
「さあ、では行きましょう」
銃を見て恍惚になる男が先導し、私たちは愛車ではなく彼らの地味な車に乗った。
「あの……。父は怒っていますよね。でも、夜鶴さんは関係ないはずですよ」
車の後部座席に座った私と奈々川さん。
「うーん。そうだねー」
銃を見て恍惚になる男は気楽に言ったが、その言葉はこれから何が起きても可笑しくないといったところである。
「まあ、大丈夫。死んだりしないよ」
私と奈々川さんはもう離れることはないはず……。けれど、これからどうなるのだろうか?
「俺の車に……あのガンショップでの出来事だけれど、犬の絵に傷を付けたのはなんのためだ?」
私は疑問を口にした。
「その時は単純に殺された奈賀の容疑者だと思ったのさ」
「それで、マークをわざわざ付けてその後は?」
「ズドンさ。当たり前だろ」
銃を見て恍惚になる男と話を続けた。
「どうして、犬の絵に傷を付けると解った」
「……若いあんちゃんに、10万払って他人の車に傷をつけろと頼むとどうなるか? 傷を付けるときには必ず目立つところに……そう犬の絵にね。」
銃を見て恍惚になる男はのらりくらりと話した。
「そうか……」
当然、今は藤元のせいで捕まったのだが……。
「その後は、奈賀が何故か生き返ってきて……奈々川お嬢様の捜索に急展開をしたのさ。そして、どうやら奈賀を撃った男と同棲でもしているのだろうと大胆な発想をしたんだけど……どんぴしゃだったね。家が空っぽだったからとっくに逃げたんじゃないかとも思ったけれども……なあ。同棲している男を早くに撃ってもいいのだけど、それだとA区とB区の戦争になる可能性もあるし……。なるだけ戦争を回避してほしいと奈々川首相のお言葉があったものでね」
銃を見て恍惚になる男は安っぽい推理を話した。
重苦しい緊張が漂った車は、一定のスピードで首相官邸に着いた。
正門は豪華な造りで、何年代から続いている日本家屋だ。広さは普通の家の20倍くらいか。昔はサムライの偉い人の家だったようだ。それが今の首相官邸だ。
地味な車は広い玉石の駐車場に停まると、二人の男は私たちを家の中へと案内した。他には地味な高級車が何十台も停まっている。けれど、目立つ車もある。派手な黄色のスポーツカーだ。
道を挟んでいる庭には、小さい盆栽と池が無数とある。
青い服装の警備員が立ち並ぶ幾つもの和室のあるせせこましい通路を歩き。重厚な西洋風の書斎に通される。扉の傍の両脇には背広姿が一人ずつ立っていた。
書斎には赤ら顔で太り過ぎている小男がいた。顔にも脂肪もついていて、笑うと、脂肪が振動するくらいだ。
奈々川首相だ。
「晴美。部屋へ行きなさい。この男と話したい」
首相は脂肪を振動させて、まるでこれからミサイルでも発射するかのようだ。
「いやです。私は夜鶴さんと一緒にお父さんと話したいことがあるんです」
奈々川さんが強い口調をした。
「……晴美。では仕方がない。言って御覧なさい。私は忙しいんだ。手短にな」
「あの……。お父さん。私、夜鶴さんと結婚します」
首相は二三度首を振って、
「駄目だ。晴美……。お前はこの町を発展させなければならない。それが私たちの使命なのだよ」
首相はレースのカーテンの大きい窓から外の景色を……町の巨大な建物が林立している様を見せる。まるで都会のテーマパークである。
「この町は私が作った……。母さんに約束したんだ」
奈々川さんは怯むことはなく。
「いいえ。お母さんはこんな世界を望んでいません。ハイブラウシティ・Bはいわば失業者を急増させるためだけの都市です。私は労働自体を機械がしてはいけないとは言いません。けれど、もっと全体的に見ないと……お父さんはきっと矢多部さんの口車に惑わさ利益だけを見ているだけです。その理想はごく一部の……B区だけの人たちの理想だと思います」
「晴美……。解ってくれ、ハイブラウシティ・Bのことは私たちに任せて、お前は谷多部くんと付き合いなさい」
首相はそういうと、電話を取った。
「待って、お父さん! 私はもう子供ではありません!」
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