【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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国内無双編

文化祭(後編)

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 「Cry~!!!」

 素晴らしい高音のロングトーンがおなごたちの黄色い声援と、男たちのおぉという静かな吐息を引き出す。

 絶賛一から聞いている。
 まだ開演前だったようなので、椅子に座って前座のお笑い芸人達のコントを眺めていた。

 まぁなかなか面白かった。
 こんなの向こうではなかったからな。

 そんで今は順番的には終盤と言うべきか。

 伊東駿介という一個上の先輩らしいのだが、これがどうやら一番イケメンで人気だそうだ。

 財閥程でもないらしいが、家系的にも遺伝的にも強いらしい。

 ただ興味がなかったのだが、隣で聞いているおなご達の会話を聞いていたら必然的に情報が入ってしまった。

 俺は肩書きに興味がない人間だ。

 上手い下手。
 だけど何か人に届くような歌。

 別に人並みの感性は持ってる。
 ただ、肩書きで上手い下手を判断する訳ではないということが言いたかった。

 それを抜きにしてもプロと評価をするまでもないが、素人という枠なのであれば相当レベルが高いと思う。

 アマの上というべきか。
 少なくともこの自慢大会ならば十分。

 批評家みたいなのは嫌いだが、要は良かった⋯⋯だ。

 「ありがとー!」

 アンコールで歌ったのでこれで終わりだ。
 一応点数という競争があるので、確認する。

 審査員は28点という合計点だ。
 理由を聞いていると俺と同じようなものだ。
 
 嵐の拍手の中、手を上げて笑って舞台から降りていく。

 「最後になります!」

 アナウンスがある。
 発表されたのはまさかの奴だった。

 「神村真彩さんです!」

 どよめきと共に舞台に上がったのは、白と黒のドレスを着飾った神村だ。

 「誰?」
 「今神村だって言ってただろ」

 どよめきは収まらない。

 静かになるのを待つこと一分。
 両手でマイクを持つ神村は、喋りだす。

 「初めまして。神村です。
 きっと私の事は悪い意味で知られていると思います」

 あははと乾いたように笑う神村。

 周囲もノーコメントだ。
 ここで何か言うのも違うだろうしな。

 「私はとある事で容姿が綺麗になりました。
 嬉しかった同時に、どこか悲しくもあります」

 少し言い淀んで続ける。

 「容姿一つでこんなに人が変わったり言葉の重みが変わるんだと」

 儚げで、悲しそうな表情。
 その言葉に誰もが神村を見つめていた。

 今この瞬間、神村に最も視線は集中している。

 「すみません。ちょっと最初に言いたかったので。

 話は変わりますが、私の家は祈祷師です。
 毎日、毎日祈りを捧げる家系です。

 人から見たら変かもしれません。
 しかし私は、祈っている事に何かお返しがあるのかとかこれに意味があるのか、そんな事はあまり考えていません。

 この行為に意味があるから祈っているわけではありません。

 ただ、真心を込めて、天に祈りを捧げる。
 私は母親を見てそう思いました。

 容姿はただの一つですが、私達の価値観と作り出した者の価値観が必ずしも合うとは思いません。

 ただ、私はこの魂を祈ることに捧げることが生きる意味なのだと。

 勝手ですが、ある意味私に合っている家なのかもしれません。

 今はそう思います。
 呪いが解けた今でも、何かが変わったわけではありません。

 これからも、毎日真心を込めて、祈ります。

 すみません!
 今回、私はこの場をお借りして祈り⋯⋯それでは雰囲気が壊れてしまうのは承知しています。

 なので、趣味で作詞をしているので、自作の歌を今回は歌わせていただこうと思います」

 更にどよめいた。
 神村はどよめきの中続ける。

 「自慢大会⋯⋯ですが、生きていることの素晴らしさを自慢しにきました。

 既に曲はプロの人にお渡しているので、このまま歌います」

 バックにいる演者の準備運動が始まる。

 「最近。
 私の長い呪いが解けたので、今日、この場にいる誰かの心に届けばいいなと──この歌を歌います。

 聴いてください」


 "Believe my life"

 祈りっぽいのかと思ったら、少しポップな前奏だ。


 『暗闇に包まれた自分の瞳
 救いはなく、ただ走り続けるしかなかった

 時偶訪れる"自分はなぜ生きているんだろう"と浮かぶ帰りの車内

 でも私は祈り続ける。たった一人でも。
 何処でも。天がそれを望むなら

 魂よ叫べ。この空の下で
 憎しみが支配するこの星で
 
 生きている事に喜びを覚えて ただ進み続ける』

 
 神村にこんな才能があるなんてな。
 今日一ダントツで歌が上手い。

 周囲も無言でただその歌を噛み締めていた。
 その後も歌が淡々と続く。

 あっとう間に大サビの前。

 
 『夢が目覚め ただ不器用でも』

 ーーケルビーン!!

 『心を熱く、魂を抱いて』
 
 ーーそーくん、大好き!

 『愛を抱いて この星の元で
 希望を魂で燃え上がらせよう』

 ーーケルビンの夢って何?

 『過去を抱いて 今君の為に行きたいあの場所へ』

 ーーまたね!!

 『魂の音を鳴らして 私は祈り続ける』

 ーーケルビン。
 私はね、この国を大陸一のモノにしたいんだ。

 どうだ?私の生涯を側で見ておく必要があるだろう?

 長いのだから100年くらい見ていきたまえ。
 この王である──私の生を
 
 『今進化するこの魂が 君を喚ぶ』

 ーー来世では また一緒になれるといいね!

 『今行くよ 祈り、今度は叶うから
 もう振り返らない だって道は遥か先まで続いてるから』

























 気付けば今日一番の拍手がこの場所一帯を地鳴りのように鳴り響いていた。

 俺も遅れてだが拍手をする。

 「なんでそんなに泣いてるんだ?大将?
 俺も感動したが」

 泣いている銀が聞いてくる。

 「いや、きっと神が泣いていたんだろう」

 ふっ。良い歌歌うじゃねぇか。
 少し昔を思い出したな。
 
 と、神村と目が合う。
 俺の顔を見たのか少し揶揄うようにニヤッとされたが、全く気にならない。

 そんな姿はまるで平成の歌姫だ。

 だが。きっと歌姫としては世に出ないかもしれないだろうが、今後⋯⋯彼女に幸ありますように。

 散々進んだのだから。
 後は、人生に華が添えられるだけだ。

 「⋯⋯頑張れよ」

 「あ? 大将?」

 「行くぞ、もう用はない」

 背を向け俺も俺で衣装に着替えに行く。
 全く似合ってなどいないが、今日の主役の彼女と社交ダンスを踊る。
 
 「お待たせ」

 「全然っ!」

 昔のように暗い顔ではなく、今は華々しく輝く神村の瞳。

 上目遣いで嬉しそうにニマニマ笑っている。

 「さて、スターなレディ。
 私と踊ってくださいますか?」

 「勿論!」

 クラシック音楽で泳ぐように会場を移動する俺と神村。

 彼女に合わせて動いているが、かなりシンクロしているのか、周囲の目もかなり集まる。

 「ここまで踊れるとはな」

 「練習したから」

 だとしてもだ。
 完璧だな。

 滴る一滴の水のように。
 流水の如く流れ。

 音楽は──静かに鳴り止む。

 「レディ、ありがとう」

 今。
 目の前にいる彼女は生涯で初めて輝きを手にした。

 両手で花束を抱える姿は世界で一番キレイに見える。

 鮮明で、輝き、幸せそうに口角を上げ、夜空を背景に笑い、天を味方する可憐な女の子。

 「レディ神村、今後──あなたの人生に祝福を」

 「あなたの為に、毎日祈ります」

 数秒見つめ合い。
 
 「「ははははは」」

 おかしくなって思わず噴く。
 
 「じゃあまた、学校で」

 そう言うと少し悲しそうに俯くが。
 でも嬉しそうに笑って。

 「うん!また学校で!」

 上を向いて、神村は幸せそうに笑った。

 今日の事が少しでも彼女の人生に嬉しい思い出が残れば、上々だろう。

 そしてまた。
 俺も今日という日を忘れることはないだろう。



 "なんたって一人の女が、初めて輝きを知った日なんだから"
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